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第二話 「姫と王子の婚約の儀、祝福の宴」
しおりを挟む・・・・石造りの豪華な宮殿の大広間。
柱という柱には美しい彫刻と金細工が施され、無数のランプがまるで昼のように広い室内を照らしている。
大皿に盛られた肉料理、良い香りを振りまく大きな黒パン、異国の果物に葡萄酒・・・。
広間一杯に埋まった着飾った参列者の男女が、にこやかにお喋りに興じ、あちこちから明るい笑い声が響く。
広間は人々の熱気でムンムンとしていた・・・・。
今宵はランデール王国の姫君であるアレッタ姫と、隣国で、この大陸一の強国であるロシュノールの王子、バリエルの婚約披露の祝宴なのだ・・・。
アレッタ姫、〇6歳
パリエル王子、〇4歳
二人は幼少のころからの許嫁で、幼い頃はよく二人で遊んでいた幼馴染同士だった。
決して大国とは言えないランデール王国にとって、大陸一の軍事力を誇る強国ロシュノールの王族と姻戚関係となることは、願ってもない幸いである。
・・・そう言うと「政略結婚」という言葉が思い浮かぶが、アレッタ姫とパリエル王子は互いに惹かれ合う相思相愛の仲だ・・・この婚約は本人達が一番喜んでいるに違いない。
両国の国民も、この美しい姫と可愛らしい王子の婚約発表をこぞって歓迎した。
宴の席は、パン屋の主人から貴族の長老まで、国を挙げての祝福で華やかで明るいものとなった。
国中の貴族や有力商人たちが、次々に広間の一番奥・・・緋毛氈の上にひときわ輝く、純金製の玉座に座っている女王リュディアに祝いの言葉を述べる。
「アレッタ姫様のこたびの婚約の儀、謹んでお慶び申し上げます・・・お二人の結婚はランデール王国の増々の発展の礎となりましょう!」
「美しい姫様と、凛々しい王子様・・・ほんとうにお似合いの御夫婦となりますわ」
女王リュディアの左に位置する碧玉の椅子にはパリエル王子、右側の銀製の椅子にはアレッタ姫が控えて、祝辞を述べる客達に答礼している。
女王リュディアもアレッタ姫も、嬉しそうな笑顔を浮かべている。
パリエル王子は、〇〇歳という年齢もあって、どこか照れ臭いような表情で二人を眺めていた。
「・・・・お母様、私、とっても嬉しい・・・」
腰まである長い金髪を編んで、美しい髪飾りをつけているアレッタ姫は、花も恥じらう〇6歳、その容姿は女王リュディアに似てランデール王国一といって良い素晴らしい美少女である。
整った卵型の輪郭、パッチリと大きな目に長いまつ毛、プックリと赤い唇・・・・にこやかな笑顔、そのすべてが見るものを魅了して止まない。
「お嫁に行ったら、早くロシュノールの仕来りを覚えて、皆に可愛がられるようにね・・・パリエル王子、娘をどうかよろしくお願いしますね!」
女王リュディアが、隣に座っているパリエル王子の方を向いて微笑む。
女王リュディア、36歳・・・ランデール王国一とも噂される、美しいアレッタ姫を生んだだけあって、リュディアもまた絶世の美女である。
アレッタ姫を産んでからやや豊満になった肢体、特に華麗なドレスの大きく開いた胸元から覗く、熟れた果実のように大きく張り詰めた乳房は、見る者の視線を釘付けにする。
ムッチリと大きく張った腰回りと、子供を産んでも全く垂れていない大きな尻、陶器のような白い肌は、「熟女」の魅力をムンムンとたたえている。
娘と同じ金髪を後ろ手大きく束ねてエメラルドで飾られたカチューシャで留めているその美しさは今夜の祝宴に出席している誰もがウットリと眺めるほどだ。
髪飾りだけではない、首飾りから腕輪に至るまで、この国の王族や貴族は身に着ける装飾に貴重なエメラルドを好んで使用する。
・・・・この大陸ではエメラルドは産出しない。
この希少な宝石は、遠く蛮族が支配する辺境の地から細々と供給される超貴重品なのだ。
その価値はエメラルドの原石に対して、10倍の重さの金との交換で取引されるほど高価なものだという。
・・・そんな高価で貴重な物にも関わらず、彼らがエメラルドを身につけるのには、虚栄心や贅沢の象徴という以外に「理由」がある。
エメラルドは「魔法」に抗力があるのだ。
・・・この世界の人間には魔法が使える者もいる。
それは、親指大の小石を飛ばすほどの児戯に等しい魔法から、大石を動かし、気象をコントロールし、人の身体や心を支配するような恐ろしい力を持つものまで様々だ。
魔力は生まれつき備わっている者とそうでないものがおり、魔力が使える者は千人に一人程度の割合であるという。
また、その中でも稀に出現する、魔力のパワーが飛びぬけて強い者は「魔力者」と呼ばれ、人々から畏怖されている。
そんな「魔力者」のうち、優秀な者は王立軍や王宮で雇われたり、貴族の重臣として迎えられたりしているが、当然魔力者の中にも、その神から与えられた力を悪事に利用する者はいる。
そういう魔力者は、代々王家に伝わる秘術で魔力を封印され、エメラルドで作られた結界の中で永遠の時間を過ごすことになる・・・。
建国以来、その恐ろしい力で国家の転覆を図ったり、王に反旗を翻し自ら僭主となろうとした者などが後を絶たない。
そんな伝説の魔力者が、王家の神殿の最奥の封印の間に永久に封じられているのである。
道化師の滑稽な芸であちこちから大きな笑いが起こり、宴も最高潮に達した時、広間の巨大な扉を開けて一人の近衛兵が飛び込んできた。
「女王様っ・・・大変でございます!」
恐怖に顔を引きつらせたその兵に、宴に興じていた者達の視線が一斉に集中する。
「一体どうしたのだ?」
扉のすぐ側で警護に当たっていた近衛隊長が兵に駆け寄ろうとするが、兵は衆人環視の中、足元からみるみるうちに石に変わっていった。
そして、あっという間に頭まで石と化して、床に転がり砕け散る・・・。
「きゃあああっ!」
王宮の広間にひしめいている出席者の女達から悲鳴が上がり、楽しい宴の席は阿鼻叫喚の巷に変わる。
「・・・こ、これは・・・」
「・・・・魔力者の仕業だ」
人々が恐怖に顔を引きつらせる。
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