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【二】
しおりを挟むその夜、お玉はなかなか寝付けなかった。
あの俊乗様が来る・・・・説法を聞きに行ったときに見た、彼の涼し気な目元や、よく通る美しい声を思い出すと自然に体が火照ってくる。
寝苦しいのは夏の暑さのせいだけではなかった・・・お玉は、あの小僧が取り上げた「俊乗の魔羅」そっくりだという胡瓜を手に取る。
そして、ゆっくりと胡瓜と戯れ始めた。
お玉が寝室にあてている奥の二間からは、真夜中まで小さな吐息が聞こえ続けた。
翌朝、お玉は念入りに化粧を施し俊乗を待った。
四つ時頃、本尊の絵箱、護摩の壇、仏具の箱や礼盤などを背負った寺男を従えて、俊乗がお玉の家に到着した。
「これは俊乗様、こんなむさ苦しい所においで頂き、恐縮でございます・・・どうぞ中へ」
お玉は座敷に俊乗を迎え入れ、寺男が奥の板敷きの四間に祭壇の準備をしている間、茶を出して歓待した。
「亭主が流行り病で無くなりましてから、はや二年になります、去年も夫が死んだのと同じ病が流行し、沢山の人が亡くなったと聞き及びまして憂いております・・・今年もこれから冬にかけて、あの夫の命を奪った病が流行りはしないかと心配しておりまして・・・それで俊乗様には夫の三回忌の法要とは別にしまして、疫病退散の御祈祷をして頂きたいのでございます」
俊乗は、お玉の殊勝な心掛けに感心して、大きく頷いて言った。
「・・・自分自身のことではなく、世の為人の為に祈祷をなさるとは、奇特な心掛けでございます、拙僧が微力ながら神仏に祈願いたしましょう・・・」
優しい声で俊乗が言った。
自分を見つめる、吸い込まれるように澄んだ目。
お玉は、その目を見ただけでぽうっ・・・と体の奥に火が付いたような感覚に酔いしれる。
・・・ああ、俊乗様っ、なんて素敵なお声なのっ・・・この声を聞くだけで私・・・
俊乗が壇に向かい祈祷の準備をしている間に、お玉は柄鏡で髪を直し、紅を塗り直した。
祈祷の読経が始まると、お玉は俊乗の後ろで正座し手を合わせた。
美しい音楽のように流れる俊乗の低い読経の声・・・・有難い御仏の言葉も、今のお玉には心を掻き乱し、煩悩を誘発させるものであった。
裏の山で毎日飽きもせずに鳴いている蝉の声をかき消すように、俊乗の透き通った低い声が流れる。
・・・この素敵なお声・・・ジンジンと躰に響く殿方の低い声・・・ああ、たまらない・・・
読経が進むうち、お玉はモジモジと腰を揺らし始める。
彼女の頭の中には、小僧が手に取った胡瓜がぐるぐると駆け巡った。
・・・・あの胡瓜っ・・・あんな大きくて太くて反り返ったものが・・・俊乗様に!私の目の前に・・・
・・・・いつの間にか祈祷は終わっていた。
俊乗が、お玉に向き直って一礼をする。
つられて手を合わせ、頭を下げたお玉の透き通ったうなじや胸元には汗が玉のように流れていた。
・・・それは夏の暑さのせいだけではなかった。
心なしか熱を帯びたように上気した色っぽいお玉の表情には全く気付かないように、俊乗は出された茶を頂いて喉を潤した。
「・・・・俊乗様、大変に有難い御祈祷、有り難うございました・・・」
「・・・いえ、また明日、同じ刻限に参ります・・・・それでは」
「はい、お願いいたします・・・・」
俊乗は帰りがけに、ふと思い出したように振り返り、お玉に向かって言った。
「・・・・お玉殿、どこか顔が赤いようでございますが・・・お体は大丈夫でございますか」
お玉はハッとして、笑ってごまかした。
「・・・えっ、ええっ・・・このところ暑くて寝苦しいものですから・・・・」
「そうでございますか・・・まだしばらくこの暑さは続きそうでございます、どうかご自愛なさい」
俊乗が帰ると、お玉は堪らないように奥の畳の部屋に駆けこんで、着物の裾から真っ白な太腿に手を差し入れた。
「・・・ああっ、俊乗様っ・・・・」
そして、俊乗の魔羅そっくりだという、かの胡瓜を嘗め回しながら、ゆっくりと指を動かし始める。
白い餅のような太腿の間には、汗とは異なるヌルヌルとしたものが流れていた。
次の日、俊乗が二日目の護摩祈祷にやってきた。
お玉は、嬉しそうに出迎えた。
いつもより襟足を開けた着物から、白いうなじが見え隠れする。
薄化粧、よそ行きの帯・・・いつもより色香漂う未亡人の姿。
俊乗は、そんなお玉の変化を知ってか知らずか、顔色一つ変えずに祈祷の勤めに入る。
昨日同様、奥の板間にしつらえた壇の前で、俊乗の澄んだ声で読経が流れる。
その後ろで、数珠を手繰っているお玉は、ウットリとその美しい声に聞き惚れる。
俊乗の広い肩幅、袈裟衣の襟から見える首筋には汗が一筋流れ落ちる。
お玉は、静かに経を読む俊乗の後ろで、大胆な行動に出る。
正座している両膝をゆっくりと小さく開き、はだけた上前からこっそりと左手を忍ばせる。
襦袢の中に忍んでいく左手の指先がぬかるんだ部分に到達する・・・。
お玉は俊乗の後ろで、彼の読経を聞きながら秘かに指を使い始めた。
・・・・ああっ、俊乗様に気付かれてしまうっ・・・今、後ろを振り向かれたら、全てが終わってしまうのにっ・・・。
その冒涜的な行為に、お玉の女芯は熱く燃え盛る・・・声を漏らさないよう、ギュッと唇をかみしめながら、お玉は激しく指を動かし、トロトロと湧き出す甘露を掻き出すように出し入れする。
お玉の尻が切なそうにくねり始め、熱く火照った陰戸に染み入るような俊乗の低い声を聞きながら、彼女はとうとう気を遣ってしまう。
美僧のすぐ後ろで、彼の美しい声を聞きながらの背徳的な快楽・・・それは夫を失って二年間、空閨に泣いていたお玉には刺激的過ぎた。
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