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青夏(せいか)
修学旅行 三日目 午後
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「え?」
え?今健太、愛花って…。
「あ、ごめん。いやだった?」
「あ、いや。ぜんぜっん。むしろ、嬉しい」
「そ?てか、佐藤と蒼天どこいった?」
健太が周りを満遍なく探索する。ハンターのようだ。
「あ、いた」
「え、いた?愛花ナイス!」
う、破壊力高い。そして健太無邪気すぎて可愛い。
「ゆ、由衣!どこ行ってたのー?」
「うっわ!愛花がへにゃってる!…えー?内緒」
「なんかいい感じの絶景見に行ってた」
「ちょ、野沢!みんなには内緒にしよーぜって言ったじゃん!」
「すまんな佐藤。裏切らせてもらったぜ」
「野沢味方だったのか…」
「この流れで違うのは酷くない?」
「いや、同盟組んだだけだと思ってた」
「あー…ね?」
「分かってる?」
「分かってない!」
「デスヨネー」
健太が後ろから蒼天の肩を掴む。
「で?お二人さん。なーんで勝手に行動したのかな?」
「え、だって野沢いたし…」
「おかげで愛花転んだんだから、反省しろ?」
「ごめんね愛花…ってえ!?ちょっと待てちょっと待て」
「俺も理解追いつかないんだけど」
「愛花!?」
「まー別に説明するほどでもない…よね?愛花」
「え、うん…」
うー、まだ下の名前呼びは心臓に悪かったかも。
「まあ、バスで全部吐いてもらうからね?」
「フッ、答えないけどね」
「バスでの滞在時間は約二時間だぜ?愛花ちゃん」
「ま、まさか貴様二時間全部を尋問に使う気…?」
「よく分かったな」
「おーい、お前ら何漫才してんの。時間もったいない」
「愛花も俺も景色見に行ってた奴には言われたくないけどな」
「ほんとすいません…」
「よーしじゃあどこ行く!?」
由衣が明らかにいつもより天真爛漫なヒロインみたいにみんなを引っ張る。…尋問、されないといいけど。
みんなでもう一度地図を囲む。一斉に行きたい場所に指をさした結果見事に一人も被らなかった。ので、見つけた店から順に入っていこう。ということになった。
「相変わらず、寒いなー」
「山の近くだし余計にね」
「あいか博識ジャーン」
「…知らなかったの?」
「いや?知ってた」
由衣って、昔から頭がいいのか悪いのかわからないところがある。由衣の肌は、乾燥して煮干しのようになっている私の肌とは裏腹にゼリーのような肌を保っていた。
流石にもう一度転ぶと恥ずかしいので、下をみながら慎重に歩いていく。顔を上げる頃には楽しい時間は終わりを迎えていた。
綺麗なオレンジ色に染まった車内は、生き残ろとは比べ物にならないほど鎮まりかえっている。もはやこのバスは私と運転手さんの二人しかいないのではないかと疑う。景色は瞬きする間に見慣れた景色へと早がわりしていた。見慣れた景色という情報が私の脳に流れ込むと同時に修学旅行が終わったことへの喪失感と満足感が混濁していた自分の気持ちに驚いた。喪失感と満足感は対比しているようにも感じるが、逆なのかもしれない。言わずもがな、今の私は修学旅行が終わることが嫌で仕方がないのだから。この年でなければ、赤子のように泣き喚きでもして意地でも修学旅行を続行させていただろう。
楽しかった
え?今健太、愛花って…。
「あ、ごめん。いやだった?」
「あ、いや。ぜんぜっん。むしろ、嬉しい」
「そ?てか、佐藤と蒼天どこいった?」
健太が周りを満遍なく探索する。ハンターのようだ。
「あ、いた」
「え、いた?愛花ナイス!」
う、破壊力高い。そして健太無邪気すぎて可愛い。
「ゆ、由衣!どこ行ってたのー?」
「うっわ!愛花がへにゃってる!…えー?内緒」
「なんかいい感じの絶景見に行ってた」
「ちょ、野沢!みんなには内緒にしよーぜって言ったじゃん!」
「すまんな佐藤。裏切らせてもらったぜ」
「野沢味方だったのか…」
「この流れで違うのは酷くない?」
「いや、同盟組んだだけだと思ってた」
「あー…ね?」
「分かってる?」
「分かってない!」
「デスヨネー」
健太が後ろから蒼天の肩を掴む。
「で?お二人さん。なーんで勝手に行動したのかな?」
「え、だって野沢いたし…」
「おかげで愛花転んだんだから、反省しろ?」
「ごめんね愛花…ってえ!?ちょっと待てちょっと待て」
「俺も理解追いつかないんだけど」
「愛花!?」
「まー別に説明するほどでもない…よね?愛花」
「え、うん…」
うー、まだ下の名前呼びは心臓に悪かったかも。
「まあ、バスで全部吐いてもらうからね?」
「フッ、答えないけどね」
「バスでの滞在時間は約二時間だぜ?愛花ちゃん」
「ま、まさか貴様二時間全部を尋問に使う気…?」
「よく分かったな」
「おーい、お前ら何漫才してんの。時間もったいない」
「愛花も俺も景色見に行ってた奴には言われたくないけどな」
「ほんとすいません…」
「よーしじゃあどこ行く!?」
由衣が明らかにいつもより天真爛漫なヒロインみたいにみんなを引っ張る。…尋問、されないといいけど。
みんなでもう一度地図を囲む。一斉に行きたい場所に指をさした結果見事に一人も被らなかった。ので、見つけた店から順に入っていこう。ということになった。
「相変わらず、寒いなー」
「山の近くだし余計にね」
「あいか博識ジャーン」
「…知らなかったの?」
「いや?知ってた」
由衣って、昔から頭がいいのか悪いのかわからないところがある。由衣の肌は、乾燥して煮干しのようになっている私の肌とは裏腹にゼリーのような肌を保っていた。
流石にもう一度転ぶと恥ずかしいので、下をみながら慎重に歩いていく。顔を上げる頃には楽しい時間は終わりを迎えていた。
綺麗なオレンジ色に染まった車内は、生き残ろとは比べ物にならないほど鎮まりかえっている。もはやこのバスは私と運転手さんの二人しかいないのではないかと疑う。景色は瞬きする間に見慣れた景色へと早がわりしていた。見慣れた景色という情報が私の脳に流れ込むと同時に修学旅行が終わったことへの喪失感と満足感が混濁していた自分の気持ちに驚いた。喪失感と満足感は対比しているようにも感じるが、逆なのかもしれない。言わずもがな、今の私は修学旅行が終わることが嫌で仕方がないのだから。この年でなければ、赤子のように泣き喚きでもして意地でも修学旅行を続行させていただろう。
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