青夏(せいか)

こじゅろう

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青夏(せいか)

ライバル?!

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 緊急事態かも知れない。今日はテニスの習い事があったから、夕方に疲れた足を引きずっていた。たまたま健太の家の近くを通ったから、ふと健太の家の近くに視線をやると、健太より少し小さい女の子が健太の家に入っていったのだ!でも、健太は振られてすぐに彼女なんて作らないはずだし…じゃあなんだろう?友達の妹?よく聞こえ無かったけど、下の名前で呼び合ってたし…でも、少し考えたらなんとなくわかってきたかも。妹だ。きっと、いや絶対。
 自分の中である程度の結論はつけられたのだが、やっぱり、本人から聞きたい。…別に話したいからって気持ちが全く無いわけないけど。けれど、自分から話しかけれない!健太があんなに神々しいオーラ放ってなければ声かけれたのに!でも、好きな人が神々しくない事ないか…
耐えら無くなって、優香に相談した。
「ほーう?つまり、愛花は、昨日一緒にいた人との関係性が知りたいと。で、あわよくば話していたい…と言う事?」
「…概ね合ってる。でも、そもそも話しかけれないんだよ」
「な~んだ。そんな事?そんくらいなら任せなさいって!」
優香はドヤ顔でそう言うと、私を強引に健太の近くまで引っ張っていった。
「ねえ、山野~愛花がさ、昨日山野と知らない女が歩いてるの見たんだけど?!って言ってたんだけど真相は?」
「え?昨日?…あー石田もしかして見てたのか。妹だよ。俺が女子と手繋いで家入れるわけないだろ?」
「…あ、そうだったんだ。ごめんなんか。あ、別に誰よその女~!とはなってないからね?」
「わかってるって」
そう言いながら笑った健太の顔は神々しいと言うよりも、太陽のように見えた。時に私達を癒し…困らせる太陽みたいな笑顔だった。
「ちなみに、石田はなんであそこ歩いてたの?」
まさか会話が続くとは思っていなくて、優香に助けを求めようとしたが、周りを見た時には優香は居なくなっていた。嬉しいけど…自分が恋愛してるとこ見られるのって、なんか複雑。見てるのかはわからないんだけど。私は間が開かないうちに口を開けた。
「あ、昨日はテニスの帰りで、帰り道だったから」 
「え?石田テニス習ってんの?すげー!俺、最近テニス見始めたんだよね。ほら、この前オリンピックとパラリンピックあったじゃん?試合とかあったら呼んでよ!みんなで行くからさ~」
「え?!ありがとう!…じゃあまたね」 
「おー」
私は耐えられなくなってその場を後にした。席に戻ると、優香や恋ちゃんがニヤニヤしてこっちを見ていた。
「楽しそうだったね~愛花!」
「三人とも、私が山野と話すたびにその顔してない?」
「いや~?愛花が幸せそうで私は何よりだよ」
恋ちゃんは満足げな表情でそう言った。
 その一週間後、テニスから帰っていると、目の前から山野兄妹が歩いてきた。こういうのってどうしたら良いんだろう。無視はしたくない。なるべくだけど話したいし、妹さんに挨拶…って結婚じゃないのに何思ってんだろ私。とにかく、頑張って話しかけるか…せめて、挨拶だけでも。そう思い、意気込みながら歩いていると、すれ違う直前、
「あっ!もしかして愛花さん!?」
健太よりも少し高い声で話しかけられた。私は戸惑ってしまい、
「えっ、あ、はい」
と言う返事しかできなかった。私、話しかけられるとこういう返事しかできないのかな。
「やっぱり!この前、うちの兄がもらってきた集合写真見て、この人かわいい!って思って兄に聞いたら、『石田愛花っていうひとだよ』教えてもらって!」
「やっほー石田、学校ぶり。ごめん、俺の妹かわいい人好きでさ、石田が好みどストライクだったらしくて」
「全然いいよ!むしろありがとう。ちなみに、名前聞いても良い?」
「勿論です!五年三組山野萌歌って言います!萌える歌と書いて萌歌です!この名前気に入ってるんです」
「萌歌ちゃん!可愛い名前~!敬語じゃなくていいよ!私のことも愛花って呼んでいいし、なんなら萌歌ちゃんって呼んでも良い?」
「本当?!嬉しい!よろしくお願いします!愛花!」
「敬語でてるよ~」
「ごめん石田、茶番に付き合わせちゃって。よかったな、萌歌。あ、でもどっかからの帰り?だよな。また明日!萌歌もさよならしろよ~」
「一個しか違わないのに、年下扱いしてくんな!愛花、また今度!」
「また明日~」
私は浮遊感のある足で家へと帰った。ベッドに入ってもなんかフワフワしてる。これって進歩でいいのかな?
そして、私は今日。萌歌に挨拶?ができた。
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