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青夏(せいか)
夏祭り後半
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夏祭りは想像している以上に楽しい。しかし、家の近くの祭りということもあって、何回か知っている人とすれ違った。特に、教室でよく騒いでる女子グループとすれ違った時は、「え?あの子らって付き合ってたっけ?」と、聞こえていようがいなかろうがお構い無しの声量で話された。いくら、聞かないように抵抗しても、流石に意識してしまった。私と健太が付き合ってるようになんて見えるはずも無いのに、一人で「もしかして、付き合ってるとか思われてたりするのかな?などとありもしないことを考えた。ただでさえ人が多く、暑いのに体感温度が五度くらい上がってしまった。みんなと来ているのに、好きな人のことしか考えていなかった自分のことが恥ずかしくなってきた。みんなでかったものを食べてる時、いきなり優香が
「はいはーい、かき氷食べたい人いる?食べたい人だけで買いに行かん?」
と言った。自由だな。かき氷に吸収されたのは健太と蒼天と由衣だった。あ、健太行くのか、やっぱり行こうかな、でも、そんな不純な動機で行くのはかき氷に申し訳ないしな。やめとこう。残った私たちは、さっきかった物をベンチで食べながら、かき氷組を待っていた。ラムネを飲みながら天井を眺めていると、
「なーなー石田の好きな人って健太だよな?」
と、泉が聞いてきた。流石にまだ誤魔化せるだろう。一応、理由を聞いておこう。その理由が誤解なら、ごまかすことができる。
「えっ?なんで?」
「なんとなく」
なんとなく、かあー。私、やっぱりわかりやすいんだろうか。自分の攻略難易度の低さを思い知らされて軽くショックを受けていると、恋ちゃんが怪訝そうな顔で口を開いた。
「お前、その話絶対山野の前ですんなよ!したら私が許さん」
「流石にそこまでデリカシー皆無野郎じゃねえから安心しろ」
「怪しい」
「俺ってそんな信用ない?」
「信用がないわけじゃないけど、泉はうっかり口滑らせそうだから怖い」
「そんときはごまかす」
「まず言わない努力をしろタコめ」
「ひっど」
「ふ…ははっ」
「ちょっと愛花ー笑わないでよー!」
「ごめん、二人の言い合いが面白くて、つい」
二人の平和すぎる言い合いを言いていたら、つい、笑ってしまった。最近は、恋愛ばっかりに夢中になって、友達といることの楽しさを忘れそうになっていたから。
「そういえば、かき氷組おそくない?」
「並んでんじゃねーの」
「心配だな、一応私見てくる。たまに人見知りな愛花でも、流石に泉は大丈夫だよね?最悪無視しちゃっていいから。じゃ、いってくるー」
「無視を石田に促すなイカが」
恋ちゃんはさっきまで食べていたポテトのゴミを捨てると、小走りで二階に続く階段に向かっていった。
「で、やっぱ石田、健太のこと好きだよな?いつから?」
「…内緒」
「お願い!俺、さっきはあんな言われようだったけど、実際今まで一度も人の秘密バラしたことない!」
「いや、言わないのが普通だし」
「それはそうだけどー!」
と、私なりに誤魔化していると、結衣と蒼天と優香が帰ってきた。
「あれ?三人だけ?恋ちゃんと山野は?」
「健太と佐々木なら、健太が佐々木呼び出してどっか行ったぜー」
由衣がいつものうるささとは正反対に、ゲームデータが消えた子供のように近寄ってきた。
「愛花、ごめん私、気づけなかった。さっき、山野が恋ちゃんを呼んで出て行ったの。多分、、、」
由衣は少し目に涙をうかばせ、その先は言わなかった。
「なんで由衣が謝ってるの?山野は恋ちゃんが好きだから、告白しようと思った。それだけでしょ?」
正直に言ってしまえば、今この場で泣いてしまいたかった。泣けば、健太が心配しにきてくれるかも、なんて、そんな都合の良い妄想ばかり考えて。元を言えば、健太に好きになってもらおうと努力しなかった私が悪いのに、友達に応援してもらえてたのに。もっと、できることがあったはずなのに。
「ごめんね、何にも力になれずに、こんなことになっちゃって」
「何言ってるの、由衣や優香、恋ちゃんたちが私のくだらない相談に付き合ってくれたから、今こうやって山野とお祭り来れたんだよ?感謝しかないよ」
「…うん。やっぱ、愛花しか勝たんー!恋ちゃんもチョー優良物件だけど、愛花を選ばないなんて目えついてんのかー!」
「ふふっ、ありがと。…ちょっと、お手洗い行ってくるね」
私は由衣以外にも人がいることなんて気にせず、健太と恋ちゃんを無意識に探しに行ってしまった。三分ほど歩き回ると、階段の近い所で二人が話していた。つい、咄嗟に隠れてしまった。流石に顔を出してみることはできないので、聞き耳を立てる。
「ごめん、みんなでお祭り楽しんでる途中に話しかけちゃって。でも、どうしても言いたかったんだ。今言わなかったら、一生言えないかも、って思ちゃったから」
「…うん」
しっかり謝ってるところ、健太らしいなあ。恋ちゃんは、なんと思ってるのかわからないような返事をしていた。
「で、その、言いたいことってなんだよって話なんだけど。うわーやっぱ、恥ずいな。」
この先を聞かなければ無かったことになるかもしれない。って思った。本当は告白なんかじゃなくて、何か、とにかく告白じゃない別の用事で。この先を聞かずに、新学期を迎えて、恋ちゃんに聞いたら、告白なんかじゃないよって。言ってもらえたのかな。
「えっと、俺、佐々木が好きです。付き合ってください」
返事なんて聞く余裕なかった。だって、どちらにせよ健太が恋ちゃんのことが好きだって事実が変わることはないのだから。その後どうやって家に帰ったかなんて、断片的にしか覚えてない。確か、トイレで泣いてて、由衣がトイレにまできてくれて、気づいたら家で泣いてた。
「はいはーい、かき氷食べたい人いる?食べたい人だけで買いに行かん?」
と言った。自由だな。かき氷に吸収されたのは健太と蒼天と由衣だった。あ、健太行くのか、やっぱり行こうかな、でも、そんな不純な動機で行くのはかき氷に申し訳ないしな。やめとこう。残った私たちは、さっきかった物をベンチで食べながら、かき氷組を待っていた。ラムネを飲みながら天井を眺めていると、
「なーなー石田の好きな人って健太だよな?」
と、泉が聞いてきた。流石にまだ誤魔化せるだろう。一応、理由を聞いておこう。その理由が誤解なら、ごまかすことができる。
「えっ?なんで?」
「なんとなく」
なんとなく、かあー。私、やっぱりわかりやすいんだろうか。自分の攻略難易度の低さを思い知らされて軽くショックを受けていると、恋ちゃんが怪訝そうな顔で口を開いた。
「お前、その話絶対山野の前ですんなよ!したら私が許さん」
「流石にそこまでデリカシー皆無野郎じゃねえから安心しろ」
「怪しい」
「俺ってそんな信用ない?」
「信用がないわけじゃないけど、泉はうっかり口滑らせそうだから怖い」
「そんときはごまかす」
「まず言わない努力をしろタコめ」
「ひっど」
「ふ…ははっ」
「ちょっと愛花ー笑わないでよー!」
「ごめん、二人の言い合いが面白くて、つい」
二人の平和すぎる言い合いを言いていたら、つい、笑ってしまった。最近は、恋愛ばっかりに夢中になって、友達といることの楽しさを忘れそうになっていたから。
「そういえば、かき氷組おそくない?」
「並んでんじゃねーの」
「心配だな、一応私見てくる。たまに人見知りな愛花でも、流石に泉は大丈夫だよね?最悪無視しちゃっていいから。じゃ、いってくるー」
「無視を石田に促すなイカが」
恋ちゃんはさっきまで食べていたポテトのゴミを捨てると、小走りで二階に続く階段に向かっていった。
「で、やっぱ石田、健太のこと好きだよな?いつから?」
「…内緒」
「お願い!俺、さっきはあんな言われようだったけど、実際今まで一度も人の秘密バラしたことない!」
「いや、言わないのが普通だし」
「それはそうだけどー!」
と、私なりに誤魔化していると、結衣と蒼天と優香が帰ってきた。
「あれ?三人だけ?恋ちゃんと山野は?」
「健太と佐々木なら、健太が佐々木呼び出してどっか行ったぜー」
由衣がいつものうるささとは正反対に、ゲームデータが消えた子供のように近寄ってきた。
「愛花、ごめん私、気づけなかった。さっき、山野が恋ちゃんを呼んで出て行ったの。多分、、、」
由衣は少し目に涙をうかばせ、その先は言わなかった。
「なんで由衣が謝ってるの?山野は恋ちゃんが好きだから、告白しようと思った。それだけでしょ?」
正直に言ってしまえば、今この場で泣いてしまいたかった。泣けば、健太が心配しにきてくれるかも、なんて、そんな都合の良い妄想ばかり考えて。元を言えば、健太に好きになってもらおうと努力しなかった私が悪いのに、友達に応援してもらえてたのに。もっと、できることがあったはずなのに。
「ごめんね、何にも力になれずに、こんなことになっちゃって」
「何言ってるの、由衣や優香、恋ちゃんたちが私のくだらない相談に付き合ってくれたから、今こうやって山野とお祭り来れたんだよ?感謝しかないよ」
「…うん。やっぱ、愛花しか勝たんー!恋ちゃんもチョー優良物件だけど、愛花を選ばないなんて目えついてんのかー!」
「ふふっ、ありがと。…ちょっと、お手洗い行ってくるね」
私は由衣以外にも人がいることなんて気にせず、健太と恋ちゃんを無意識に探しに行ってしまった。三分ほど歩き回ると、階段の近い所で二人が話していた。つい、咄嗟に隠れてしまった。流石に顔を出してみることはできないので、聞き耳を立てる。
「ごめん、みんなでお祭り楽しんでる途中に話しかけちゃって。でも、どうしても言いたかったんだ。今言わなかったら、一生言えないかも、って思ちゃったから」
「…うん」
しっかり謝ってるところ、健太らしいなあ。恋ちゃんは、なんと思ってるのかわからないような返事をしていた。
「で、その、言いたいことってなんだよって話なんだけど。うわーやっぱ、恥ずいな。」
この先を聞かなければ無かったことになるかもしれない。って思った。本当は告白なんかじゃなくて、何か、とにかく告白じゃない別の用事で。この先を聞かずに、新学期を迎えて、恋ちゃんに聞いたら、告白なんかじゃないよって。言ってもらえたのかな。
「えっと、俺、佐々木が好きです。付き合ってください」
返事なんて聞く余裕なかった。だって、どちらにせよ健太が恋ちゃんのことが好きだって事実が変わることはないのだから。その後どうやって家に帰ったかなんて、断片的にしか覚えてない。確か、トイレで泣いてて、由衣がトイレにまできてくれて、気づいたら家で泣いてた。
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