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ジュリアン

濃厚なキス

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「んっ、ふ、…っ」

シェンのキス。俺の頭の中にじんじんと熱く迫ってくるような激しいキスをいきなりされたのに、俺は何故かそれを受け入れてしまっていた。今日初めて会ったのに、理性的にはおかしいことなのに。くらくらする。

柔らかい唇が俺の唇を食むように何度も噛まれ、吸われて舌が入り込んだ。
歯をなぞって裏を舐め上げられた時に俺の腰が抜けそうになり、シェンがぐっと俺を支える。シェンの上着を力なく掴んでいる俺はされるがままだった。

唇を散々弄んだ後、シェンが俺の唇を離した。脱力感でいっぱいな俺は無意識に涙を流していた。

「…な、んで…?」

自分の涙に驚いて頬に触れようとすると、その前にシェンの指が俺の涙を拭った。

「…ずっと、ずっと前からお慕いしていました。貴方が…俺を知ったのは今日初めてですが、俺はずっと貴方を…」

そういい終わらないのにシェンが俺を抱き締める。

「あは、じゃあ、友達にはなれそうもないね…」
「そうですね…ご迷惑なら護衛騎士の任を解いてもらいますが」

一瞬の間を置いて小さな声でシェンが囁くように言ったけれど、俺はそれを許さなかった。

「駄目、やめないで」

シェンの目が見開かれる。

「俺ね、シェンを手放したくないの。ずっと俺の騎士でいて?嫌?」

俺のこの胸の高鳴りはきっとそうなんだろう。だったら尚更、シェンを失いたくない。どこか体の奥でそう言ってる自分がいる。シェンを、手放してはいけないって。

自分で動かなきゃ。今まで流されるように生きてきて、人の後ろにばかりいてあまり自身の意思がなかったように思う。だけどそれじゃいけないと教えてくれた人がいたような気がする。倒れて眠ってる間になんか夢でも見てたのかな?

シェンの目尻から一筋、一つだけだけれども涙が落ちた。彼は俺に見えないようにすぐに隠したけれど。
嬉し涙?それとも違う?よくわからない、複雑な表情だった。

「一生、お仕え致します。…俺の、ジュリアン」

シェンが俺に敬礼をした。

俺のジュリアン…なんか、いいねそれ。

「もっかい言って?それ」
「もう、言いませんよ…」
「えっ!何で?いつも言ってよ!ねえっ!」

必死ですがる俺をシェンが笑いながら逃げ、俺が追いかける。しばらく部屋でおいかけっこになって、窓辺でやっとシェンを捕まえた。楽しい。

「…俺、みんなから大国のジジイの愛人って思われてるんだ、知ってるでしょ?」
「…はい。でも、ジュリアンは汚れてない。俺は知ってます。」

今度は俺の目が見開かれた。シェンが俺を抱き締めて額にキスをする。

「なんで…?」
「企業秘密です。俺は王子の護衛騎士に任命されるほどの大物ですので。貴方は次期国王ですからね。譲位はまだ遠いですが、貴方は国民からの支持が莫大に上がっています。大人気ですよ。」
「えっ嘘!嘘だあ!」

俺なんて、大国へ人質に出されてる間に愛人だなんだのと嫌われてるって噂で聞いたのに。

それをオリバーにどう誤解を解こうかと真剣に考えていたのに、シェンに否定されて嬉しくなってしまった。

「本当です。もう様々な公務の予定も詰まっています。貴方を一目見たい国民からのラブコールがひっきりなしです。この人気は陛下に匹敵します。」

俺はシェンの言うこと全てが信じられなかったくらい驚いていた。

「でも…王宮のみんなはきっとそう思ってるよ、オリバーだってきっと…。」

オリバーという名前に反応したのか、突然シェンが我にかえったように俺から離れた。









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