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ジュリアン

山が動く

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俺はくすぶる山火事のあった森の麓に立っていた。来る。山が押し寄せてくる。何秒後?何分後?

俺はありったけの力を体に集中させていく。

このままこれを放置したら、麓の街が埋まってしまう。なんとか食い止めるか、方向を変えてやる。

俺は正面に見えた谷間に目をやった。地面に手を当てると大きな亀裂が入り大穴を開けた。燃えた木々の残骸が次々と飲み込まれていく。

この穴くらいじゃ、あの量の土砂はすぐ埋まってあふれてしまう。

俺の頭にひらめいたものは。

再生の魔法。

俺は来た道を戻って森から走り出ると、手のひらを合わせた。
神様頼むから。俺の魔力全部をかけて、俺に力をください。

手のひらが鈍く光りだし、目映いほどの白い閃光に包まれる。それが地面に移って一直線の横線が引かれたように森の麓全体に一気に広がった。そんな間にも荒れ狂う土砂が迫ってくる。

突如、地面から大量の芽が吹き出し、蔓となって広がっていく。それは枝へと変化をして、木が至るところに出現して森が再生していく。緑の洪水のように俺から光がどんどん吹き出して、森が鬱蒼とした盾となっていく。

ああもう、魔力が切れる…だめだ、これ以上は…!俺の手のひらが耐えきれずに血を吹き出し始めた。

土砂と生えた木々がぶつかり合って、至るところで爆発するかのように土砂が吹き上げられている。かなりの土砂が押し寄せてきてるだけに、こっちが力負けしてしまったら流れる木々を増やすだけになっちゃう!負けられない!

俺の背中にふわっ、と誰かが抱きついた。

「ジュリアン…一人にはさせません、俺も…。」

シェンがいつの間にか俺の隣にいた。

「シェン…みんなは?」
「オリバーに指揮を任せました。心配せずとも彼が何とかします。」

そっか。オリバーは完全な敵じゃなかったんだ。よかった。

シェンの手のひらが光って俺の手に重ねられる。あったかくて優しい。俺の中に少し明かりが灯ったようなきもちになる。

「俺の魔力じゃ知れてますけど、少しでも貴方の力になりたい。」
「うん…シェンにいてほしかった。ありがと。」

俺はもう少し頑張れそうだ。ベキベキと生える木々と、すぐに土砂に負けて倒れていく木々。

「ごめんねみんな!痛いよね…!ごめん…。」

俺は聖霊と倒れていく木々のみんなに謝った。涙がボロボロ落ちてきて前が見辛い。
でもこの手を降ろすわけにはいかないの。絶対再生する。また芽吹きを見せて。

「ジュリアン、これでは魔力を使い果たしてしまいます!」
「駄目。もうちょっと!」

突如、俺の脳裏に白い優しい影がさあっと映った。

誰これ?天使?白い翼の音がした。

空から降り注ぐ柔らかい光がスッと俺に射し込んだそのとたん、俺の中からものすごい魔力が溢れてきた。


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