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ジュリアン

聖女の噂

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国中にものすごい速さで聖女の目撃談が広がっていった。

それ、全部俺。

山火事を魔法で消して回って国中を巡回していた。

くすぶっている山火事に、俺見たさに国民が詰めかけるという事まで起きてしまい、さすがに危険なので現れるペースをゆっくりにした。そして、サボワの脅威を感じ始める。

長い金髪の女が襲われる事件が発生したのだ。未遂で終わったけれども、本当に申し訳ない。早く解決しなければ、また犠牲が出てしまう。

俺と間違えているんだよね。俺は、普段、黒髪のまま服だけ変装するようにした。申し訳ない。火事を消すまでもうすぐだ。

未だに鎮火できていない山火事はあと一つ。

明日そこに行くんだけれど、そこはかなりの新聞社や国民の注目を浴びている。近づくのも至難の技だよね。

ホテルで一人でどうしようか悩んでいると、シェンが武具を磨きながら、しらっとした顔で言った。

「多くの人の目があるんだから、堂々と行けばいいのでは?」
「聖女の格好で?」
「そうです。そんな人目があるなかでジュリアンに害をなそうなんてしませんって。」

シェン百戦錬磨の騎士だから、こういう読みは外さないんだろうな。不安な気持ちも何もかも、シェンが吹き飛ばしてくれる。

「この国に魔法がないのが幸いしてる。俺は元通りになったら国で医療魔法を使いたいんだ。今までになかった、新たな夢ができちゃった。シェンのお陰だね。」

俺の言葉に驚いたシェンが、みるみる笑顔になる。

「すっごくうれしいです。それ。ジュリアンの夢を作ったの、俺ですか?」
「え、そんなに嬉しい?」

道具を置いたシェンが俺の側に来て抱き寄せる。

ゆっくりと顔が近づいて唇が触れあう。暫くしてからシェンが少し離れたので、俺はシェンの首に手を廻して囁いた。

「シェンがいないと何もできなかったよ、俺。…ただのワガママな王子だった。今頃敵に殺されてたかも。」
「俺がいます。貴方と出会えて良かった。俺の人生は何でも二番目で…。騎士でも何もかもアンドレアに勝てなかった。あいつは最高の親友ですけど。」

少し遠くを見るシェンの顔を引き寄せて俺はまっすぐ見つめる。

「シェンは俺の一番だから。俺の全部はシェンが一番だからね!…わすれないで。」
「ジュリアン…。」

シェンがまた俺の唇に吸い込まれるように口づけた。
そのまま何度もキスをして、ベッドに転がって、愛を確かめあっていく。

「あっ、シェン…。すき…。」

俺たちは、何度も何度も愛し合った。

明日、最後の鎮火に向かう。向こうも手ぐすね引いて俺を待っていることだろう。

見てろ。俺には最高の騎士がいる。俺の覚悟は踏みつけさせない。












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