国王様は新米騎士を溺愛する

ジュリアン

とろける思い

シェンが俺を後ろから抱きすくめた。

騎士団長アンドレアが目を丸くする。そしてわなわなと震える手でシェンを指差した。

「お…まえ、まさか他国の王子様までその毒牙に…！」

ど、毒牙？思い当たることがありすぎて俺は一気に真っ赤になる。昨夜は素敵すぎたし！

魔術師レアルも驚きすぎて赤面していた。リアンも口を押さえて俺を見ている。

「アンドレア、人聞きの悪い。ジュリアン様は俺の主人だ。自分の主人に、この身の全てを預けるのは当然…遊びではない。。」

耳もとでシェンの低い声でこんな事を言われたら、俺はもう腰から砕け散ってしまいそうになった。

「遊びじゃないの？」
「ああ、今回は本気だ。今までの俺はきれいさっぱり忘れてくれ。」

アンドレアとシェンの会話がなんだか…どんだけ遊んでたんだよシェン…。

「シェン、お前の親友としてはそれは喜ぶべきことなんだろうな。」
「ああ、ジュリアン様に会ってから俺は一切他のやつに興味がなくてな…。」

親友としては…ってアンドレアが言ったのにすかさず俺のセンサーが反応した。

シェンは親友の恋人のことをずーっと好きだったんだよね。

それって、騎士団長アンドレアの恋人。

もしかして…。

俺は目の前で嬉しそうに笑っている魔術師レアルを見た。

金髪に天使とみまごう美しさ。俺のリアンも美しいけれど、レアルはまた違う格別の美しさだ。

さっきギールの船から魔術師レアルを見たシェンの少しつらそうな表情も頷ける。

シェンはレアルが好きだったのだ、きっと。

以前、似てると言われたような気もするけれど、俺は黒髪だしこんなに綺麗な人には似ても似つかない。

さっきまで浮き足立っていた自分の気持ちがどんよりと曇ってくるような気がした。この人を好きだったシェンは、俺のことを好きだと言っても比べられるのでは…といじけた気持ちが顔を出してきた。

「ジュリアン様？」

俺がもやもや考えてたのは周囲には一瞬の間だったみたい。シェンが反応のない俺に気づいて声をかけてきた。

「俺の胸にいるのに考え事ですか？ならば」

シェンが誰にも聞こえないくらいの声でこそっといたずらっぽく囁いて、俺の耳の後ろに軽くキスを落とす。背中がぞくっとして微かに肩が震えてしまう。

「大丈夫です…。俺はもう、貴方だけなんですから。」

ああ、シェンの低い声にもう溶けてしまいそうだ。

俺はなんとか正気を保とうと踏ん張った。