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ジュリアン
キス
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シェンとキスをしてしまった。
なんかこう、自然で驚いてしまう。だいたいその日に知り合った人とキスするとかありえなくない?俺はそんな男だったのかな?
オリバーのは拒んだのに。
シェンは不思議な人だ。大人の男のせいもあってなのか、ものすごく手慣れていた。誰にでもあんな風に手を出すのかな…。。
キスも…すごく上手くてときめいたのは事実だ。
俺はずっとオリバーが好きだ。幼い頃から向こうもそう疑わずに思っている。告白したり付き合っている訳ではないけれど、キスもしたしお互いずっと両想いの自覚はあった。今だって。
でも、あのときは揺れてしまった。
それから数日して、父王ルークの譲位が正式に発表され、国中が大騒ぎになった。
俺ははっきり言って父ほどの人望も人気もない。七光りだけの王子だ。そんな俺が国王になってもいいのかという疑問が頭にこびりついて離れなくて、最近は不眠気味になっていた。
今日は騎士団の剣術大会だ。俺はゲストとして呼ばれていたので騎士団棟の奥にある、王宮からは離れた競技場へと馬で移動していた。王からは裏道があって、人気がない林を抜けていくので護衛の者が数人ついてくれている。
馬の様子が少しおかしいのは何となく気づいていた。でも、だからといって乗るのを拒むほどでもない。だから黙って乗っていたのだけど。
突然、俺の乗っている馬が前足を高く上げていきなり走り出した。
「うわあっ!」
馬の口からは泡を吹いているのがわかった。俺は何とか振り落とされないように手綱を握りしめる。護衛の声も振り切って馬はルートから離れて猛ダッシュで王宮の敷地を走り抜けた。競技場が見えても全く止まる気配があるはずもなく、馬は競技場を横目に通りすぎていく。
「ジュリアン様っ!」
護衛が馬で追いきれずに俺の名を叫んだ。
俺は必死なので返事もできずただ乗っているだけだ。乗馬はそこそこやる。でもこんな暴れ馬に乗ったことはない。さすがにヤバイと俺の頭の何処かが警鐘を鳴らしている。
後ろから馬の走る音と共に俺を呼ぶ声がした。
「ジュリアン様っ!大丈夫ですか?シェンです!」
大丈夫なわけあるかー!
シェンが馬で追ってきたらしい。俺は彼の馬の音が近くなって心底驚いた。
うええ、これに追い付けんのってスゴくないか?騎士ってそんなにスゴいの?シェンがスゴいの?
しばらくすると、シェンの馬は完全に俺の馬の横についた。全速力で走ってるのに、シェンは余裕で片手で手綱を操っている。
「はい!俺の手につかまってください!」
シェンはあろうことか反対の手を俺に差し出した。
は?出来るかボケぇ!
俺は半べそ状態だ。
「大丈夫ですよ、俺は魔法を使えますから!手につかまるだけでいいですから!ほら早く!」
ま、魔法?魔法使えんのシェン?
俺は勇気を出してシェンの手をとった。
なんかこう、自然で驚いてしまう。だいたいその日に知り合った人とキスするとかありえなくない?俺はそんな男だったのかな?
オリバーのは拒んだのに。
シェンは不思議な人だ。大人の男のせいもあってなのか、ものすごく手慣れていた。誰にでもあんな風に手を出すのかな…。。
キスも…すごく上手くてときめいたのは事実だ。
俺はずっとオリバーが好きだ。幼い頃から向こうもそう疑わずに思っている。告白したり付き合っている訳ではないけれど、キスもしたしお互いずっと両想いの自覚はあった。今だって。
でも、あのときは揺れてしまった。
それから数日して、父王ルークの譲位が正式に発表され、国中が大騒ぎになった。
俺ははっきり言って父ほどの人望も人気もない。七光りだけの王子だ。そんな俺が国王になってもいいのかという疑問が頭にこびりついて離れなくて、最近は不眠気味になっていた。
今日は騎士団の剣術大会だ。俺はゲストとして呼ばれていたので騎士団棟の奥にある、王宮からは離れた競技場へと馬で移動していた。王からは裏道があって、人気がない林を抜けていくので護衛の者が数人ついてくれている。
馬の様子が少しおかしいのは何となく気づいていた。でも、だからといって乗るのを拒むほどでもない。だから黙って乗っていたのだけど。
突然、俺の乗っている馬が前足を高く上げていきなり走り出した。
「うわあっ!」
馬の口からは泡を吹いているのがわかった。俺は何とか振り落とされないように手綱を握りしめる。護衛の声も振り切って馬はルートから離れて猛ダッシュで王宮の敷地を走り抜けた。競技場が見えても全く止まる気配があるはずもなく、馬は競技場を横目に通りすぎていく。
「ジュリアン様っ!」
護衛が馬で追いきれずに俺の名を叫んだ。
俺は必死なので返事もできずただ乗っているだけだ。乗馬はそこそこやる。でもこんな暴れ馬に乗ったことはない。さすがにヤバイと俺の頭の何処かが警鐘を鳴らしている。
後ろから馬の走る音と共に俺を呼ぶ声がした。
「ジュリアン様っ!大丈夫ですか?シェンです!」
大丈夫なわけあるかー!
シェンが馬で追ってきたらしい。俺は彼の馬の音が近くなって心底驚いた。
うええ、これに追い付けんのってスゴくないか?騎士ってそんなにスゴいの?シェンがスゴいの?
しばらくすると、シェンの馬は完全に俺の馬の横についた。全速力で走ってるのに、シェンは余裕で片手で手綱を操っている。
「はい!俺の手につかまってください!」
シェンはあろうことか反対の手を俺に差し出した。
は?出来るかボケぇ!
俺は半べそ状態だ。
「大丈夫ですよ、俺は魔法を使えますから!手につかまるだけでいいですから!ほら早く!」
ま、魔法?魔法使えんのシェン?
俺は勇気を出してシェンの手をとった。
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