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異国での決意

緑のドラゴンジュール

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「シン、お前は何処に住んでいるのだ?青い使い魔は?」

白銀ドラゴンの父ちゃんが俺に尋ねるけれど、それは俺が聞きたい…。

「ハーフドラゴンに住みかなんてないよ…。これからもずっとさまよって、魔族に狙われて怯える毎日が続くの、ラースにもそんな苦労はさせられないよ」
「シン…もしや今、独りなのか…?」

父ちゃんが切なそうな目をして俺を見る。俺は黙って俯いた。

「そうか…すまない…。異世界にあるドラゴン族の国には連れていってはやれないが、ジュール」
「はい」

父ちゃんが緑のドラゴンを呼んだ。

「お前はこの近くに住んでただろう?しばらくシンを預かってはもらえまいか?シン、今後のことは私が考えよう。今まで父親らしいことが何一つできなかった…。ジュールが側にいれば魔族も近寄らん」
「…ご子息さえよければ俺は構いませんが」

緑のドラゴンが快諾した。

「俺には頼まねぇのか王よ」

赤いドラゴンが機嫌のの悪そうな顔をする。

「「お前に任せるとシンに手を出すだろうが」」

父ちゃんと緑のドラゴンが見事にハモり、赤いドラゴンはばつの悪そうな顔をした。えっ、そうなの?赤いドラゴンのキャラが俺のなかで固定した。

でも、誰と住もうが俺はもう…。目を閉じるとエリアスとフィリックス、ラースの姿が浮かんで泣きそうになった。

「では、お預かりします、乗って」

緑のドラゴンが羽ばたきをした。ドラゴン族のドラゴン形態はオリオン号やカイザー号よりは小さい。でもラースよりは大きい。俺はその背中にそっと乗る、緑の皮膚がキラキラしていてとても美しかった。ドラゴン族…オスカーが思い出された。

羽音も立てず宙にふわりと飛び上がった緑のドラゴンジュールの背中で俺はラースのことを考えていた。

もう、ラースに会いたくなってる。俺のラース…。ラースの背中にはキラキラしたハートがたの白い痣があって、それにそっと触れるのが好きで…。

「っ…!」

俺はジュールという緑のドラゴンの背中で不覚にも泣いてしまった。ジュールは気づいているのだろうけど、黙っている。

「ごめんなさい…このまま…少しだけ…」

俺は涙を抑えられなくなった。

「いいさ。泣けるときに泣いとけ。…涙が枯れるまでしばらく飛んでいようか」
「あ…りがと…ぅっ…」

緑のドラゴンジュールは優しい声でしばらく大空を周回した。

「向こうから…使い魔ドラゴンが二匹来るぞ…赤いのと青いの…シンを探してる」

周囲を見回したが全く俺にはわからない。ジュールのドラゴン族のセンサーなのだろうな。二匹の赤蒼ドラゴン。それはオリオン号、そしてラースのことなのだろう。 

「俺たちの姿を見えないようにできるがどうするシン?」
「じゃ…そうしてください…」
「わかった」

ジュールが何か唱えたけれど、全く変わった様子はない。


今は。


せっかくの決意が揺らいでしまう。


向こうから二匹のドラゴンが飛んでくるのが見えた。

オリオン号とラース。ラースにはエリアスが乗っていて、オリオン号にはフィリックス。二人とも、というか全員心痛な表情をしているのがわかる。

「ごめん、行って。急いで」

俺はジュールにそう頼み、彼は一気にスピードをあげてラース達の横をすり抜ける。

ごめん、みんな。俺はそばにいられない。



◆◆◆

「…?」

ふと、ラースが振り向いた。

「どうした?ラース?」
「シンの気配を感じたんだけど…」

エリアスの問いかけにラースが答えた。

「…俺も違和感は感じたんだけど…。あの崖、岩のほうは確かにシンの匂いがするんだが」

エリアスが眉間を険しくして言う。

「俺もそれは感じた…」

フィリックスが少し考え込むような表情をしてラースに言う。

「うん…じゃあ、そっちにいってみようかな」

迷いがのこっているように見えるけれども、ラースは二人に従い、二匹のドラゴンはさっきシンがいた崖の上を目指して飛んでいく。


◆◆◆◆


ラースが何度も振り返ったのが見えたけれど、ジュールはスピードをあげて二匹のドラゴンから遠ざかっていった。











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