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伝説のゆくえ

陛下救出

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国王の部屋の前には兵が10人はいる。通いなれたあの扉の向こうに陛下が閉じ込められているのだ。そう思うと切なくなった。

ここにダリウスとフィリックスが先に来ていると思ったけどいないのが気になる。

すると、エリアスが何もなかったかのように平然と近づいていく。

「なっ!竜騎士!」
「何故ここに…竜騎士は壊滅したのでは!?」
「まあいい、殺ればいいだけだ!」

彼に気づき、剣を抜いた兵たちがエリアスに斬りかかろうとする。その前に。

バリッ

雷撃を放ち、見張りの兵は全員倒れ、一瞬で動けなくなった。転がる兵を避けて涼しい顔でドアに手をかける。

そしてドアが開くなり、エリアスがわあっと多人数に剣で斬りつけられるのが見えた。

「あっ…!」

びっくりして俺は瞬時に体が走り出す。でもエリアスの剣が複数の剣を完全に止めて、一気に弾き飛ばした。やっぱり強いなぁ。

走った勢いで俺は部屋に飛び込むと、アンディが捕縛され、国王陛下がソファに座っているのを見た。エリアスがまた雷撃で他の兵を失神させる。

俺は急いでアンディの縄を解いて自由にした。

「シン、ありがとう…エリアスも」

アンディが縄をかけられた場所をさすりながら礼を言ってくれた。彼も魔力を封じる腕輪をはめられている。

「無事でよかった。陛下も。向こうがこんなに早く動いてくるとは思わなくてな…油断した」
「俺もだ。貴族院め、余程焦っていたかバカなんだか…竜騎士は皆無事か?」
「ああ。怪我はしてるが…命は大丈夫だ。せっかくお前が竜騎士をやめてまで抑止力になろうとしたのに、こうなってしまったな」
「…ふ、自分はとんだ役立たずだ」

エリアスとアンディが見つめあって笑っているのだけれど、俺には話が読めてないので不思議そうな表情をしていたと思う。それに気づいたエリアスが教えてくれた。

「アンディは元竜騎士だ。ドラゴンが戦闘で死んでしまって、また新たなドラゴンを探そうとしていたんだが、貴族院がその頃騎士団を乗っ取ろうとしていて…それを抑止するために陛下の薦めもあって騎士団長に就任したんだ」
「陛下が…」

全員、陛下を見る。陛下は心痛な面持ちで俺たちを見ていた。

「…すまん、私のせいでこんな…」

掠れた声でそれだけ言うとまた黙る。相当のメンタルダメージを受けているようだった。あの朗らかで優しい陛下がかなり凹んでいるなんて。

「シン…!」

悲痛な陛下の顔を見て、俺は胸がきゅんと痛んだ。

でも。イラっとしたのも事実だった。
息を吸う。

2秒。

「陛下!もっとしっかりしてください!陛下がちゃんとしてくれなければ俺たちはどうしようもないんですよ、リーダーの自覚はありますか?!俺たち竜騎士はあなたの臣下なんですよ、しょげてないでご指示を!俺は従います!ご命令を!」

俺は大声で怒鳴ってしまっていた。

エリアスとアンディが目を丸くして呆然と俺を見つめている。

鳩が豆鉄砲食らったような顔をしていたのは陛下だった。自分でも何故こんなことを言ったのかもわからず、言い切ってから全身の血が下がる。

俺はものすごく青くなった。ひい、どうしよう…!

『すごいなシン…!』

ガラが呟く声がして、オスカーが感嘆の声を上げるのが脳内に遠く聞こえる。

「ぷ、さすが俺のシン…!」

エリアスが笑って呟いた。

「…!シン…。こんな俺にまだ従ってくれるのか?」
「陛下…」

そう言った陛下にエリアスとアンディが膝まづく。

「この竜騎士と騎士団長に何卒ご命令を。我々はあなたに、あなただけに従います」

アンディが言った。俺もあわてて膝まづく。

すると、バタバタと足音がして兵が複数部屋に入ってきて、新たな敵に俺たちはすぐさま陛下を庇って身構える。

すると。

「いやんエリアスぅ~もう!ここにいたの?せっかく騎士団棟に捕まえててもらったのにぃ!」

甘ったるい声がして、ぽっちゃり残念な少女が兵を押し退けて現れた。後ろからは貴族とおぼしきオッサン達が数人、侍女のようなオバサンがくっついている。

「姫…!」

エリアスが見たこともないくらいあからさまに嫌そうな顔をした。

あ、姫な…!陛下の腹違いの妹だ。確か、エリアスファンクラブ会長なんだっけ?

「お兄様、もうこの国の王は私になるの、お兄様は遠島に行くの。さっき貴族院の決定でそうなったんですってよ、もう、お兄様の味方なんて誰もいないわよ」

偉そうにふんぞり返った姫が陛下に言い放った。

「エリアス、早くこっちに来てー!貴方は私の護衛騎士として採用が決まってるの、私が王になったら、エリアスをこれからずっと私のことだけを守る騎士にしてくれるって。ほら、いつもみたいに私のそばに膝まづいて!」

姫がエリアスに手を差しだし、甲を見せた。営業としてキラキラエリアスを演じていたのをそのままのエリアスと信じているこのバカ姫。エリアスが無傷で監禁されていたのは、この姫の命令だったからだな。

「それだけのために…王位継承1位のお前が貴族院についたのか?」

陛下が信じられないような顔をした。

「そう。お兄様が早く退位すればエリアスと結婚もできるって貴族院が約束してくれたもの。身分違いで絶対無理だって諦めてたの。外国に嫁に出されるなんて嫌だもの、エリアスでないと嫌なの、だからちょっと早かったけど決心して兵を出しちゃったのよ!」

俺は姫の話を聞いてイライラというか、ブチブチと何かが切れたらしい。

あのね、エリアスは、俺の。

そう言いたい衝動を押さえられなかった。するとエリアスが俺の手を握ってきた。きっとそうしなければ正気を保てなかったのかもしれない。
彼の目も怒りにギラギラしている、相当怒っているように見えた。

「陛下…ご命令を…!」

やっと絞り出した低い声でエリアスが陛下に告げると、陛下は奴等を睨み付けて忌々しげに言い放った。

「俺はほとほともう愛想が尽きた、無責任だとは思うがな。ここを捨てて婚約者の元へいくことにする。その前に、思う存分暴れていいぞ。お前たちは俺だけの騎士だ、他の誰にもやらん!」

「承知致しました…陛下」

エリアス、アンディ、俺はニヤリと笑ってすらりと剣を抜いた。












 












    
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