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伝説のゆくえ
ドラゴン舎での再会
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「エリアス…?」
ベンの笑顔が凍りついたのが俺にはわかる。
「そ、っか。俺がいない間にみんな時間が過ぎてたんだな…あ、ヘラクレス号は?」
キョロキョロと見回してヘラクレス号を見つけるとベンは笑いかけた。
ところが。
ヘラクレス号が低い声で唸ったのだ。俺は驚いた。ここにいるのは大好きなベンじゃないの?
「ヘラクレス号…?なんで…?」
驚いて目を見開いたままのベンに、エリアスが冷たく言った。
「ベン…おまえ、どうやって戻ってきたんだ?正しくは、甦ったと言うべきか…」
「え?どういう…?」
ベンはエリアスの言葉が全くわからないような表情だ。
「ベン、お前は死んだんだよ」
フィリックスが表情ひとつ崩さずに言い放った。
「え?死んだ…?遺跡で遺物に触れて眠らされたとこまでは覚えてるんだけど…目覚めたんだよね?」
「いや違う。そこのハムザとトゥルキに襲いかかって死闘になり、お前は息の根を止められて谷底に落ちていったらしい。明らかに死亡していたと聞いている。なあ、ハムザ」
エリアスが淡々と説明をする。みんな冷たいな!せっかくベンが帰ってきたのに!?
「ちょ、ちょっとみんなどうして!?仲間なんじゃないの?」
俺はそう抗議してベンとエリアスの間に立った。すると何故かフィリックスがすぐ横に立つ。
「何が目的だ…?シールドが張り巡らされて魔族など王宮に入り込めない。だからってわざわざベンなるとは。許せない…!」
エリアスが眉間に思いっきり皺を寄せてベンを睨み付けた。
「ちょっ、待ってエリアス、何を言ってるの?俺はベンだよ?本物だよ?」
笑顔でベンが説明しようとする。
「本物のベンならそんなことは言わない…」
エリアスが悲しげに俯いた。
「じゃあ、何て言ったら信じてくれるの?」
ベンが涙を流し、エリアスに震える声で尋ねたけれど、エリアスのベンを見る目は冷たかった。
「そうだな…フィリックス、ベンなら何て言いそうだ?」
エリアスがふとフィリックスに話を振った。少しの考える素振りも見せずフィリックスは即答する。
「俺様が帰ってきてやったんだ、てめえら酒盛りといこうぜ!…だろ」
半分巻き舌でフィリックスがおそらくベンの物真似をした。
「「「正解!」」」
ハムザとトゥルキ、エリアスは人差し指を向けてピシッとフィリックスにそう告げる。
え、ベンはそういうキャラだったんだ…顔と全く違うんだけど!?
「ヘラクレス号だって、ベンはヘラクレス号なんて呼ばない…さて何でしょうか、はいハムザ?」
エリアスがハムザを指名した。
「俺のぽっちゃり糞ドラゴン」
ハムザがしたのはおそらく本物のベンの物真似。
「「「正解!グァオ!」」」
ハムザがまた即答し、全員が指を指す。最後のグァオはヘラクレス号から発せられた声だった。
「あああ、ピポピポン!ていうボタンが欲しい…っ!」
エリアスがぴょんぴょん飛びながらふるふると震える。
く、口悪っ…ベン…!
「ま、リサーチ不足だったな、こんな初歩的なこともわからないのにベンの姿を借りて…。甘い甘い、で、お前は誰だ?魔族だったら容赦しない…」
エリアスが手のひらを自分の方に向けて右手を出し、片手で指をボキボキ鳴らした。カイザー号をはじめ、ドラゴン達が一斉に唸り声を上げて威嚇する。
「くそっ…!この糞騎士め!」
ベンが悔しげに顔を歪めた。
「そうそう、それそれ。おお、そっくり!」
エリアス、フィリックス、トゥルキ、ハムザが拍手をした。みんな…ベンってそんなに…?そして皆のバカにしっぷりが余裕綽々で。やられた方は本気で腹が立つだろうなこれ…。
だから、冷たかったんだ…はじめからベンの偽物だってわかってたから。知らなかった俺だけがベンに騙されてたんだな。
「く…くそっ!ならば!」
突然ベンが俺に向かって襲いかかってきた。フィリックスが魔法を使って炎の盾を作って防ぐ。
「っく…竜騎士め…!」
真っ黒の服に身を包んだ顔だけ人間の姿をした男が現れた。
これが魔族の本当の姿か……。
「へえ、魔族のほんとの姿ってこれかあ 。こないだの黒いドラゴンだよなお前?今の姿、全身黒タイツにしか見えないんだけど…」
あっ、それ言っちゃダメなやつ…!みんなそう思っていたから。
エリアスがすらっと剣を抜いた。さっきとは全く違う真剣な表情、というか怒っているみたいだ。空気がいっぺんに凍りついた。
「ひとつ聞きたいことがある…何故、ベンの姿を知っている?」
エリアスの声が低く響く。魔族は黙って笑っていた。
「 では言い方を変えてやる。遺跡でベンにとり憑いて死に至らしめたのは、お前かって聞いてるんだ」
そこにいた全員が静まり返った。
ベンの笑顔が凍りついたのが俺にはわかる。
「そ、っか。俺がいない間にみんな時間が過ぎてたんだな…あ、ヘラクレス号は?」
キョロキョロと見回してヘラクレス号を見つけるとベンは笑いかけた。
ところが。
ヘラクレス号が低い声で唸ったのだ。俺は驚いた。ここにいるのは大好きなベンじゃないの?
「ヘラクレス号…?なんで…?」
驚いて目を見開いたままのベンに、エリアスが冷たく言った。
「ベン…おまえ、どうやって戻ってきたんだ?正しくは、甦ったと言うべきか…」
「え?どういう…?」
ベンはエリアスの言葉が全くわからないような表情だ。
「ベン、お前は死んだんだよ」
フィリックスが表情ひとつ崩さずに言い放った。
「え?死んだ…?遺跡で遺物に触れて眠らされたとこまでは覚えてるんだけど…目覚めたんだよね?」
「いや違う。そこのハムザとトゥルキに襲いかかって死闘になり、お前は息の根を止められて谷底に落ちていったらしい。明らかに死亡していたと聞いている。なあ、ハムザ」
エリアスが淡々と説明をする。みんな冷たいな!せっかくベンが帰ってきたのに!?
「ちょ、ちょっとみんなどうして!?仲間なんじゃないの?」
俺はそう抗議してベンとエリアスの間に立った。すると何故かフィリックスがすぐ横に立つ。
「何が目的だ…?シールドが張り巡らされて魔族など王宮に入り込めない。だからってわざわざベンなるとは。許せない…!」
エリアスが眉間に思いっきり皺を寄せてベンを睨み付けた。
「ちょっ、待ってエリアス、何を言ってるの?俺はベンだよ?本物だよ?」
笑顔でベンが説明しようとする。
「本物のベンならそんなことは言わない…」
エリアスが悲しげに俯いた。
「じゃあ、何て言ったら信じてくれるの?」
ベンが涙を流し、エリアスに震える声で尋ねたけれど、エリアスのベンを見る目は冷たかった。
「そうだな…フィリックス、ベンなら何て言いそうだ?」
エリアスがふとフィリックスに話を振った。少しの考える素振りも見せずフィリックスは即答する。
「俺様が帰ってきてやったんだ、てめえら酒盛りといこうぜ!…だろ」
半分巻き舌でフィリックスがおそらくベンの物真似をした。
「「「正解!」」」
ハムザとトゥルキ、エリアスは人差し指を向けてピシッとフィリックスにそう告げる。
え、ベンはそういうキャラだったんだ…顔と全く違うんだけど!?
「ヘラクレス号だって、ベンはヘラクレス号なんて呼ばない…さて何でしょうか、はいハムザ?」
エリアスがハムザを指名した。
「俺のぽっちゃり糞ドラゴン」
ハムザがしたのはおそらく本物のベンの物真似。
「「「正解!グァオ!」」」
ハムザがまた即答し、全員が指を指す。最後のグァオはヘラクレス号から発せられた声だった。
「あああ、ピポピポン!ていうボタンが欲しい…っ!」
エリアスがぴょんぴょん飛びながらふるふると震える。
く、口悪っ…ベン…!
「ま、リサーチ不足だったな、こんな初歩的なこともわからないのにベンの姿を借りて…。甘い甘い、で、お前は誰だ?魔族だったら容赦しない…」
エリアスが手のひらを自分の方に向けて右手を出し、片手で指をボキボキ鳴らした。カイザー号をはじめ、ドラゴン達が一斉に唸り声を上げて威嚇する。
「くそっ…!この糞騎士め!」
ベンが悔しげに顔を歪めた。
「そうそう、それそれ。おお、そっくり!」
エリアス、フィリックス、トゥルキ、ハムザが拍手をした。みんな…ベンってそんなに…?そして皆のバカにしっぷりが余裕綽々で。やられた方は本気で腹が立つだろうなこれ…。
だから、冷たかったんだ…はじめからベンの偽物だってわかってたから。知らなかった俺だけがベンに騙されてたんだな。
「く…くそっ!ならば!」
突然ベンが俺に向かって襲いかかってきた。フィリックスが魔法を使って炎の盾を作って防ぐ。
「っく…竜騎士め…!」
真っ黒の服に身を包んだ顔だけ人間の姿をした男が現れた。
これが魔族の本当の姿か……。
「へえ、魔族のほんとの姿ってこれかあ 。こないだの黒いドラゴンだよなお前?今の姿、全身黒タイツにしか見えないんだけど…」
あっ、それ言っちゃダメなやつ…!みんなそう思っていたから。
エリアスがすらっと剣を抜いた。さっきとは全く違う真剣な表情、というか怒っているみたいだ。空気がいっぺんに凍りついた。
「ひとつ聞きたいことがある…何故、ベンの姿を知っている?」
エリアスの声が低く響く。魔族は黙って笑っていた。
「 では言い方を変えてやる。遺跡でベンにとり憑いて死に至らしめたのは、お前かって聞いてるんだ」
そこにいた全員が静まり返った。
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