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伝説のゆくえ

しばしの楽園

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あれから一週間たった。

俺はラースの様子を見に行った。フィリックスから少し変化していると言われたのが気になったからだ。

ラースはまだ幼体から抜けきれてはおらず、成長してるからなぁ。

ドラゴン舎に着き、ラースがどこにいるかを探すと、いた。

カイザー号とオリオン号、ヘラクレス号に挟まれたラース。ラースが顔を上げるとカイザー号がラースに軽くキスをしていた。そのまま頬にもそっと触れる。オリオン号はラースの背中を引き寄せて抱き締めた。ヘラクレス号は優しげな瞳でラースを側で見つめている。

うわあ、イチャイチャしてる…。

「お、シン」

エリアスがドラゴン舎に来ていた。カイザー号の鞍を手入れしている。俺は軽く微笑んで近づいた。

「今日はパトロールはないの?」
「オスカーがこちらについてからしばらくモンスターは出てきてないからな、要請はない、休みだ休み、たまにはな」

エリアスが俺を見て笑う。

「社畜だもんね、エリアスには休息が必要だよ」
「そう思うなら癒してくれよ、シンが」
「俺?」

俺は目を丸くした。

「デートしよ」
「デート…?一緒に出掛けるの?ごはん食べたりとか?」
「デートをそういう言い方すると何か素っ気ない…デートっていったらデートなんだよ」

整った唇を尖らせたエリアスは拗ねるように俺を見た。

「…行く?」
「…行く」

俺の返事を聞いたエリアスが弾けたように嬉しそうに笑う。

「何でいくの?カイザー号?」
「いや…こんなイチャイチャしてるやつらの邪魔したら殺されそうだ」

エリアスがカイザー号を一瞥すると、カイザー号もご満足げにラースを抱いてエリアスにアイコンタクトをする。

「ラース、出掛けてくるね」

俺がそう言ってラースに近づくと、フィリックスの言った通り、ラースのたてがみが前より固くなって、体も一回り大きくなっていた。美しさはもっと上がり、大人びたようになっている。雄なんだけど、なんだろう?色気?俺にはないからうらやましかったりして…。

ラースが起き上がり、俺をきゅっと抱き締めて頬擦りをした。俺はラースの首にしがみついて頬を思い切りこすりつける。

ん?あれ?ラースの首にドラゴンの誰かの咬み痕がついてる。それも複数…。俺はそれを手で触れてエリアスを見る。それに気づいたエリアスはわざとらしく目をサッと逸らした。

え、どういう…?

エリアスの表情が、察してくれとばかりに泳いだ。

も、もしかして…!ラース…!いや、人の事いえんけど!

ラースが俺の顔を見て目を細める。大人っぽい、綺麗な仕草に見惚れてしまう。俺から見てもこんなに美しいドラゴンなんだから、同族からはもっと魅力的に映るんだろうな。それに性格もとにかく可愛い。俺の蒼いドラゴン。

お、大人の階段を上がったのか、ラースも…!

「出掛けるのなら、着替えてから行くか」

エリアスが立ち上がり、俺の手を引いてドラゴン舎から出た。

「お前ら、今日はオフだ…ごゆっくり」

エリアスはドラゴン達にニヤッと笑いかけてそう言うと、俺の肩を抱いて部屋へ向かう。その腕に少しドキドキした。二人で廊下を歩いていると王宮の女官達がエリアスを見て黄色い声を上げる。モテるんだよなぁこの人…男性の文官らしい人達が通りかかり、エリアスに全員憧憬の目を投げた。

恵まれた体躯、整った容姿、おまけに金髪碧眼。明るい性格と切れる頭脳。神に祝福されたような最強の竜騎士のエリアスに人気が出ないはずがない。

こんな人が、俺を側に置いてくれてる…申し訳なさすぎるというか、俺なんぞで本当にいいのか?

こざっぱりとした黒革のジャケットに白いTシャツ、濃紺のパンツに身を包んだエリアスが着替えた俺を迎えに来た。俺はオレンジのTシャツに普通のデニムだ。

首から下げた鎖の先にロザリオのような大きな黒い宝石が目についた。その視線に気づいたエリアスが照れたように笑う。モデルみたいだな…!

厩舎から黒い馬を引いてきて、俺を抱き上げて前に乗せる。

「こいつは陛下から頂いた、俺の馬なんだ。エンペラーくんだよ、あ、これは陛下がつけたんだからな!」

さすがトップ騎士、馬も持ってた…。俺は長老の馬を乗り回していたので経験はある。

俺の後ろに股がったエリアスは手綱を持つと、一気にエンペラーくんを走らせた。あ、気持ちいい風。久々の乗馬の揺れが腰にくるけど…。

俺たちは軽快に王宮を抜け、門をくぐって外に出ると、エリアスの指示でエンペラーくんはゆっくりと歩きだした。

「前から連れていきたかった場所があるんだ」

後ろから耳元でそっとエリアスが囁き、ちゅっとキスをした。



































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