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伝説のゆくえ

カイザーさん発情期

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俺は朝、ラースに会いにドラゴン舎へ行った。

ドラゴンが吠えている。なにやら騒がしい…。なんだ?と思ったら。

「落ち着けカイザー!フィリックス!オリオンとラース連れてここから逃げろ!ついでにパトロールしてきてくれ、頭冷やせカイザーっ!」
「わかった!」

カイザー号とオリオン号が睨み合って唸り、吠えているのだ。まさに一触即発。エリアスがカイザー号に魔法でシールドを張って抑えているのだ。

俺の姿を見つけて、ヘラクレス号の懐にいたラースが駆け寄ってきた。

「ほら行くぞラース!シン、悪いな。ラース借りるぞ」

フィリックスが慌てたようにラースを呼び、ラースはクゥンと淋しげな様子で俺に鼻をすりつけて彼らと出かけていった。

「えっ?何なのこれ?何があったんだ?」

俺はエリアスに尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「カイザー号が発情期に入った。いつもなら雌の汎用竜あてがってなんとかなるんだが、今回雌ドラゴンに全く興味がないんだ…理由はラースだ…。ラースを庇ったオリオン号とヘラクレス号とが朝からこんな調子でな、喧嘩寸前だ」
「発情期…?」

驚く俺にエリアスは苦笑した。

「知らなかったのか?まあ、ラースは大人じゃないから仕方ないか…二十歳を超えた成体のドラゴンには発情期がある。ヘラクレス号もオリオン号もちゃんとあるぞ」

えっ!

「まあ、カイザー号のは他のドラゴンより少し多いかもな…血の気も多いし。カイザー号は休めないし業務はできるから、しばらくラースがドラゴン舎から離れて暮らしてくれると助かる」
「え、一緒にいたら、どうなるの?」

俺の言葉にエリアスが詰まった。少し赤くなり、俺の頭をくしゃっと撫でて答えた。

「俺と…シンみたいに体を重ねて…。ただ、俺らと違ってラースの同意があるかはわからん。強引にカイザー号が襲いかかるかもしれない。発情期ってそういう理性も利かなくなるかもな。傷つくのはラースだ。それに雄だ…」

ん?俺らも雄同士だったよ?

「ラースはカイザー号のことをどう思ってるんだ?」
「えっ?聞いたことないな…そういうこと、ラースは言わないし」
「そっか…普段は多少イチャイチャしても、ドラゴンは発情期にならないと完全な交尾はしないからな」

エリアスの言葉に、俺は反省をする。ドラゴンの生態も全く知らなかった自分が恥ずかしい。困るのはカイザー号とラースなのに…。ごめんなさい…。ショックが大きすぎて凹んでしまった。

ドサッ、と大きな音を立ててカイザー号が倒れる。どうやらエリアスが鎮静させる魔法を使ったようだった。

「荒療治だが仕方ない。夜まで眠ってろ、カイザー号…」

うとうとするカイザー号の大きな角を撫で、エリアスは大切そうに額をこつん、とつけ目を閉じた。大切な相棒、カイザー号が本当に大好きなんだというのがエリアスの表情から伝わってきた。

「このエロドラゴン、マジでどうしようかな…」
「ぶっ」

思わず吹き出した俺をエリアスはがっちり捕まえて抱き締めた。

「寝不足か?隈ができてるぞ…顔色もよくない」

俺の目の下を唇でなぞりながら言われてドキっとした。昨夜はフィリックスと朝方まで…。中指で顎を持ち上げられて軽いキスをする。そのままドラゴン舎の中にある倉庫に抱きかかえられて連れ込まれた。

「ん…ふ…っ」

エリアスから激しめのキスが落とされ、唇をなすがままに奪われた。ちゅっ、ちゅ…というリップ音と絡まる舌の水音が耳を通って興奮をかきたてる。長いキスのあと、ちゅっ、とまた音を立ててやっと唇を離したエリアスが、少し熱い息を吐きながら絞り出すように俺に言った。

「嫉妬…した。ごめん…」

バレてる。

昨夜、フィリックスに抱かれたことはエリアスにお見通しなんだと直感した。
エリアスは大人の男性なんだ、とものすごく実感がわき、それと同時に嫉妬に悩ましく耐えるエリアスがものすごくセクシーで胸が疼いた。俺、どんだけサディストなんだろ…。

エリアスもフィリックスも、二人とも大好き。最高の男に憧れ、側にいられるだけで幸せなのに、こんなに愛してもらって、選ばないのは罰当たりなのかもしれない、俺は子どもでまだ恋がわからなくて二人に迷惑をかけてばかりなんだろうな…。

ラースはもっと複雑だ。カイザー号、オリオン号、ヘラクレス号と3匹も想いを寄せられてるのはわかる。

またエリアスが俺の唇を重ねる。まだ嫉妬さめやらないようで、今度は俺の首に唇を這わせ、服のボタンを外して襟を広げる。あ、そこは…。

鎖骨の下にはフィリックスに昨夜つけられた愛しあった痕、キスマークがつけられている。エリアスはそれを見つけ、そこを同じように吸う。

「あっ、ん…!」

ピクン、と体が反応する。ぽん、と唇を離したエリアスが呟いた。

「上書き…俺もたいがいフィリックスに喧嘩売ってるよな…カイザーと同じで独占欲が強くて…血の気も多いし…でも」

俺をぎゅうっと抱き締めて、耳をかぷりと甘く噛んだ。

「…フィリックスに抱かれてもいい、シンの心を誰も縛れない、それは自由だ…だけど少しくらいは嫉妬させてほしい…いつか、シンが誰かを愛するときの相手が俺でありますように、ってな」
「エリアス…!」

エリアスは優しい。俺の前では器も広くて大人だ。こんな人がなんで俺なんかを好きでいてくれるんだろうって思う。フィリックスだってそうだ。

ラースも同じなのかな?みんなに大切にされて。カイザー号は今、自制がきいてないけど、普段はラースをとても大切にしてる。

…つか、ラースは、まだ初めてなんだろうか?

その時、魔法を使った通話でフィリックスから救援要請が来た。かなり緊迫した様子だ。

「こちらフィリックス!魔のモンスターが出入りする大きな穴を見つけた!座標は今画像で送る、すぐに出動願う!あっ、ラース!ラースっ!」

そこで通信が途切れた。エリアスが急いで俺の手を引いて倉庫から飛び出してカイザー号の鎮静の魔法を解きにかかった。

俺はその場に立ちすくんでしまっている。

ラース…?ラース、何があった!?






























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