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竜騎士になったよ
転生してきたんだよ俺
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俺は今日もドラゴン舎にいる。
ヘラクレス号をどうにかドラゴン舎から出して飛ぶ練習をしなければならないからだ。
俺はラースとシンクロするとドラゴンの声が聞こえる。それはフィリックスとエリアスだけにしか出来なかったんだそうだ。竜騎士のみんなは俺をすごいって言ってくれた。
ヘラクレス号がいつまでもドラゴン舎を出ないと、無駄なものとしていつか処分されてしまう。エリアスがそれを阻止するために待ったをかけていて、ヘラクレス号にかかる餌代等もエリアスが出しているのだ。竜騎士経理担当のハムザがこっそり教えてくれた。
そもそも、ヘラクレス号の元の竜騎士ってどんな人だったんだろう?
優しい人だったのかな?ヘラクレス号は優しいから、そうなんだろうか。
俺はヘラクレス号の額にへばりついて今日も会話を試みていた。
「何でヘラクレス号は、外に出たくないのかな…?」
ラースが後ろで鳴いたので振り向くと、トゥルキがいた。
「…ヘラクレス号はやる気になりましたか?」
トゥルキの切れ長の綺麗な瞳がヘラクレス号を見ると、ヘラクレス号は少しうつむいて目をそらした。
「トゥルキ…ヘラクレス号の前の主人のことを教えて?」
「ベン、ですか…。それはエリアスに聞いたほうがいいかもしれませんね、親友でしたから」
エリアスの親友…だったのか。
「フィリックスに次ぐ竜騎士3番手の強さで、弓の名手でした。エリアスのあのボウガンはベンの持ち物です」
俺が状態異常を起こしたあのボウガンか…。親友って…俺にはいないけど、大切な人だったんだろうな。だから余計にヘラクレス号を何とかしたいのかな。
「その、ベン、って人、亡くなったんだよね?」
「はい…俺が戦って…討ちましたからね」
「!、ごめんトゥルキ…」
失言をしてトゥルキの傷をえぐってしまった。彼は首を振って微笑んでくれたけど。
「頑張ってくださいね、ヘラクレス号と仲良くなれるのはシンだけだと思うので」
そう言ってトゥルキは黄色いドラゴンを連れて仕事に向かっていった。
残された俺はまたヘラクレス号と向き合う。
ベンという竜騎士はヘラクレス号を置いて亡くなってしまった。
…あ。
俺は思うところがあって、何だかとてもヘラクレス号に話したいことができた。
俺はまだ、バトル中や飛んでる時など、神経を使う時しかシンクロはできないんだ。平常時の今はまだ無理だからここでは直接ヘラクレス号と会話は出来ない。でも、こちらからの言葉はドラゴンに伝えられる。
「あのさ、ヘラクレス…俺ね、違う世界で一度死んで、こっちに生まれ変わってきたの、意味わかる?」
俺はヘラクレス号に、自分が異世界から転生してきたことを話してみることにした。
ヘラクレス号は俺の顔をじっと見ている。彼が驚いているのが伝わってくる。
ラースはこのことは知ってる。俺の背中に頬をすりつけて、慰めるように優しく来てくれた。そのラースの顔を抱き抱えるように腕を廻し、頬にキスをする。
「俺ね、不治の病だったんだよ。ずーっと病院で育ってね、病院で死んだの。…ヘラクレス号の竜騎士さんも、亡くなったんだよね?じゃあ、俺みたいにどこかの世界で生まれ変わって元気にしてるかもしれないよ?俺は今幸せなの、だからヘラクレス号の竜騎士さん、ベンさんだって幸せに暮らしてるかもしれない。
なのに、ヘラクレス号はずっとそんな風でいいの?俺がベンさんだったらもう悲しまないでほしいと思うけどな…俺だって、俺の前の両親に悲しまないでほしいもん」
俺の話を聞いていたヘラクレス号の瞳が、明らかに変わった。
ベン、幸せなのか?本当に?
言葉は聞こえないけど、ヘラクレス号の感情が伝わってくる。
「ベンさんって、俺みたいに頭おめでたい方だった?だったら幸せだと思うんだけど…」
ヘラクレス号から沈黙が流れる。ポジティブシンキングかって聞きたかったんだけど、語彙力なくてごめん。
ま、そうだよね、まだ傷も癒えてないのに答えづらいこと聞いてごめんよヘラクレス号…。俺はヘラクレス号の鼻先を撫でる。
「ベンは明るい、おめでたい奴だったよ」
声がして、思い切り驚いて振り向くとエリアスがカイザー号と立っていた。
「シン、さっきのその話は…?お前は前世の記憶があるってことか?」
あ、ばっちり聞かれてしまっていたんだ…。俺は観念して頷いた。
「普通、そんな話あるわけないよね?笑っていいよ?」
俺が茶化して笑うけど、エリアスは表情が真剣だった。
「笑わないぞ。だって俺もそうだからな」
「へえ、エリアスも同じかぁーあはは………」
俺は軽く笑った。ふ、と我に返る。
「「………。」」
二人ともに沈黙が流れた。
え?
ええ?
「えーーーーーーーーーーー?!」
俺の絶叫がヘラクレス号とラース、カイザ号ーしかいないドラゴン舎にこだました。
「なっなっ、何で?エリアスも転生したって?ほんとに?」
「ああ」
「前世の記憶があるの?」
「ああ」
「って、もしかして、…伝説の竜騎士って転生者とか?」
「ああ、歴代全員そうらしい」
冗談で聞いたのにガチか…アニメかゲームの設定かよ。でも俺は伝説の竜騎士じゃないぞ。
まあ、俺が転生者なんだから、俺以外の人がいるというのはものすごく納得できる…。
まさか、こんな近くにいるとは思わなかったけど。
ヘラクレス号をどうにかドラゴン舎から出して飛ぶ練習をしなければならないからだ。
俺はラースとシンクロするとドラゴンの声が聞こえる。それはフィリックスとエリアスだけにしか出来なかったんだそうだ。竜騎士のみんなは俺をすごいって言ってくれた。
ヘラクレス号がいつまでもドラゴン舎を出ないと、無駄なものとしていつか処分されてしまう。エリアスがそれを阻止するために待ったをかけていて、ヘラクレス号にかかる餌代等もエリアスが出しているのだ。竜騎士経理担当のハムザがこっそり教えてくれた。
そもそも、ヘラクレス号の元の竜騎士ってどんな人だったんだろう?
優しい人だったのかな?ヘラクレス号は優しいから、そうなんだろうか。
俺はヘラクレス号の額にへばりついて今日も会話を試みていた。
「何でヘラクレス号は、外に出たくないのかな…?」
ラースが後ろで鳴いたので振り向くと、トゥルキがいた。
「…ヘラクレス号はやる気になりましたか?」
トゥルキの切れ長の綺麗な瞳がヘラクレス号を見ると、ヘラクレス号は少しうつむいて目をそらした。
「トゥルキ…ヘラクレス号の前の主人のことを教えて?」
「ベン、ですか…。それはエリアスに聞いたほうがいいかもしれませんね、親友でしたから」
エリアスの親友…だったのか。
「フィリックスに次ぐ竜騎士3番手の強さで、弓の名手でした。エリアスのあのボウガンはベンの持ち物です」
俺が状態異常を起こしたあのボウガンか…。親友って…俺にはいないけど、大切な人だったんだろうな。だから余計にヘラクレス号を何とかしたいのかな。
「その、ベン、って人、亡くなったんだよね?」
「はい…俺が戦って…討ちましたからね」
「!、ごめんトゥルキ…」
失言をしてトゥルキの傷をえぐってしまった。彼は首を振って微笑んでくれたけど。
「頑張ってくださいね、ヘラクレス号と仲良くなれるのはシンだけだと思うので」
そう言ってトゥルキは黄色いドラゴンを連れて仕事に向かっていった。
残された俺はまたヘラクレス号と向き合う。
ベンという竜騎士はヘラクレス号を置いて亡くなってしまった。
…あ。
俺は思うところがあって、何だかとてもヘラクレス号に話したいことができた。
俺はまだ、バトル中や飛んでる時など、神経を使う時しかシンクロはできないんだ。平常時の今はまだ無理だからここでは直接ヘラクレス号と会話は出来ない。でも、こちらからの言葉はドラゴンに伝えられる。
「あのさ、ヘラクレス…俺ね、違う世界で一度死んで、こっちに生まれ変わってきたの、意味わかる?」
俺はヘラクレス号に、自分が異世界から転生してきたことを話してみることにした。
ヘラクレス号は俺の顔をじっと見ている。彼が驚いているのが伝わってくる。
ラースはこのことは知ってる。俺の背中に頬をすりつけて、慰めるように優しく来てくれた。そのラースの顔を抱き抱えるように腕を廻し、頬にキスをする。
「俺ね、不治の病だったんだよ。ずーっと病院で育ってね、病院で死んだの。…ヘラクレス号の竜騎士さんも、亡くなったんだよね?じゃあ、俺みたいにどこかの世界で生まれ変わって元気にしてるかもしれないよ?俺は今幸せなの、だからヘラクレス号の竜騎士さん、ベンさんだって幸せに暮らしてるかもしれない。
なのに、ヘラクレス号はずっとそんな風でいいの?俺がベンさんだったらもう悲しまないでほしいと思うけどな…俺だって、俺の前の両親に悲しまないでほしいもん」
俺の話を聞いていたヘラクレス号の瞳が、明らかに変わった。
ベン、幸せなのか?本当に?
言葉は聞こえないけど、ヘラクレス号の感情が伝わってくる。
「ベンさんって、俺みたいに頭おめでたい方だった?だったら幸せだと思うんだけど…」
ヘラクレス号から沈黙が流れる。ポジティブシンキングかって聞きたかったんだけど、語彙力なくてごめん。
ま、そうだよね、まだ傷も癒えてないのに答えづらいこと聞いてごめんよヘラクレス号…。俺はヘラクレス号の鼻先を撫でる。
「ベンは明るい、おめでたい奴だったよ」
声がして、思い切り驚いて振り向くとエリアスがカイザー号と立っていた。
「シン、さっきのその話は…?お前は前世の記憶があるってことか?」
あ、ばっちり聞かれてしまっていたんだ…。俺は観念して頷いた。
「普通、そんな話あるわけないよね?笑っていいよ?」
俺が茶化して笑うけど、エリアスは表情が真剣だった。
「笑わないぞ。だって俺もそうだからな」
「へえ、エリアスも同じかぁーあはは………」
俺は軽く笑った。ふ、と我に返る。
「「………。」」
二人ともに沈黙が流れた。
え?
ええ?
「えーーーーーーーーーーー?!」
俺の絶叫がヘラクレス号とラース、カイザ号ーしかいないドラゴン舎にこだました。
「なっなっ、何で?エリアスも転生したって?ほんとに?」
「ああ」
「前世の記憶があるの?」
「ああ」
「って、もしかして、…伝説の竜騎士って転生者とか?」
「ああ、歴代全員そうらしい」
冗談で聞いたのにガチか…アニメかゲームの設定かよ。でも俺は伝説の竜騎士じゃないぞ。
まあ、俺が転生者なんだから、俺以外の人がいるというのはものすごく納得できる…。
まさか、こんな近くにいるとは思わなかったけど。
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