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竜騎士になったよ

初出動の日

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「団長!エリアスさんっ!」

空から突然茶色いドラゴンが上空に現れた。

「…あの彼は竜騎士じゃなくて騎士だ。一般の騎士達は茶色いドラゴン、汎用竜と呼んでるんだが、それに乗っている、あと、馬にも乗る。俺たち竜騎士だけが色のついたドラゴンに乗ってるんだ」

フィリックスが小声で俺に説明してくれた。エリアスは茶色いドラゴンが着地したところへ走っていって話を聞いている。しばらくするとその汎用竜はまた飛んでいってしまった。

戻ってきたエリアスが渋い表情だ。

「フィリックス、オリオン号に乗れ。話は後だ。シン来い、社会見学だ」

俺たちは各々のドラゴンに乗ってふわりと浮かび上がる。

「カイザー号についてこい。…飛ばすぞ」

カイザー号が空中で翼をひねり、踵を返すと弾丸のようにいきなりスピードを上げた。

すごい!いきなりあんな速度が出せるなんて驚いた。

ラースだって!俺が頭で念じると、ラースも飛び出していく。すると横からオリオン号に抜かれた。
さすがの二匹はものすごく速い。

すると、エリアスの声がした。

「伝令によると、明後日の姫君のパーティー用の特注食材を積んだ商隊が襲われてるらしい」
「え?護衛に黄色と緑を二人もつけてるでしょうが?」

フィリックスが驚いている。

「あいつらは囮にしてやられたらしい。遠くまで行っちまって戻ってるとこだ。まだ飛ばせるか?シン」

エリアスが俺に尋ね、俺は返事をした。

「こんなスピード、ラースにとっちゃお散歩程度だよ」
「ふ、言うじゃん。」

エリアスが笑って前傾姿勢をとると、カイザー号とオリオン号が更にスピードを上げた。

すると、下界の山道に転がる馬車、傷ついて苦しげに呻く馬や運搬用のドラゴン達。散らばる果物や荷物が転々と見えた。それを略奪するやつらも見える。

「竜騎士の援軍だ!」

戦ってる茶色いドラゴンと騎士達の指揮が上がると同時に敵たちも声を上げる。

「竜騎士など恐れるな!あの一番小さい弱そうなのを狙え!」

ええっ俺のこと?ラースが一番小さいからって腹立つな…!俺はカチンときた。

「シンは下がってろ!」

エリアスが俺を止める。

「いやだ!」
「はぁ?また?反抗期か!」

エリアスの眉間がまた険しくなる。

「ラースをバカにされて黙ってられるか!さっき指示した奴がリーダーだろ?それを捕まえりゃいいんだよな?!誰か弓矢貸してっ!」
「俺ので良ければ使え!」

エリアスがカイザー号の鞍からクロスボウを外して投げてきた。

「ありがとう!」

俺は指示を飛ばしている敵の男へクロスボウをセットした。



◆◆◆◆

「あいつ…まさか飛んでるドラゴンから両手を離すだけでなく、弓まで狙えるのか…?」

エリアスが驚愕し、フィリックスが目を見開いた。

「っていうかエリアス、あのクロスボウまさか…」
「仕方ないだろう?緊急時だ」
「ですがあれは…!」

フィリックスが青ざめて心配している。

「魔法が使えない者にはただのクロスボウだよ。シンはまさかあんな辺境では魔法の手ほどきをうけてないだろ?」

エリアスが笑って流し、フィリックスは心配げにシンを見た。

遠くから黄色と緑のドラゴンが猛ダッシュで飛んでくるのが見えた。



◆◆◆◆

ヒュン!俺の放った矢はリーダーと思われる男の頬をかすめた。…ちっ、外したか、俺は舌打ちをした。

「くそ!蒼いドラゴンを殺せ!竜騎士でもいい!狙え!」

リーダーはそう叫び、弓矢で撃ってきた。それくらい軽くかわせるのでラースに任せていたら目の前が赤と黒になる。

カイザー号とオリオン号が目の前で敵に向かって大きく吠えた。その声で空気が震え、地響きさえする。圧倒的な恐怖心を煽るドラゴンのその姿に敵は震え上がった。

二匹は盾となりラースを敵から隠す。敵の矢はカイザーの厚い胸板に当たってもびくともしなかった。

ラースを守るドラゴンナイトは二匹もいるんだな。


ラースもててる。


「大丈夫かシン!俺が守ってやるからな!」

エリアスがカイザー号の鞍から振り返って俺に向かって言った。

「それは俺のセリフですエリアス!さっき知り合ったばかりの分際で馴れ馴れしく言わないでください!シン!俺が守ってやるからな!」

フィリックスがエリアスに食ってかかり、今度は優しく俺に言う。

「フィリックスてめえこの野郎!上司に向かって偉そうな!知り合ったに新しいもクソもねえ!」

あっ俺にもドラゴンナイトいたわ…




どっちもヤローだけど。


◆◆◆◆

隙をついてリーダーの乗った汎用竜が逃げ出した。








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