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竜騎士になったよ
距離が近い
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「お、なかなかの部屋…」
散らかりまくった俺の部屋を見てフィリックスが笑う。玄関先で待っててとあれほど言ったのにすぐ入ってきちゃったし!
「片付けるから待ってて欲しかったのに…」
怒る俺にフィリックスは声を上げて笑った。こんな顔するんだな…。俺は少しキュンとしてしまう。
俺はそこら辺にある物を適当に移動して彼の居場所を作った。
俺は独り暮らしをするために数年前、長老に小さな家を建ててもらっていた。居間より寝室をかなり広めに作ってあるから、キッチンがものすごく狭い。でも快適な俺の城だ。
「ほんとに泊まるの…長老の家があるじゃんか」
「ここがいい。シンの部屋が気になったし、これからずっと一緒だしな」
「一緒?」
きょとんとする俺にフィリックスが近くに置いてある椅子に座って足を組んだ。いちいちサマになりすぎてつい見惚れてしまう。
「竜騎士はみんな同じ寮に住んでるんだ。」
「へえ…竜騎士ってたくさんいるの?」
フィリックスは不安そうに見ている俺に笑いかけた。
「いや、竜騎士は少ない。国王陛下に仕える騎士中の騎士だけがなれる難関だ」
「そうなんだ…ドラゴンがいるだけでも驚いて生きてきたのに俺が竜騎士とかいうのもわけわからん…」
「シン??」
フィリックスが怪訝な表情になって俺はハッと気がついた。イカンイカン、俺に異世界の前世の記憶があるなんて誰も信じてくれないし。
もう慣れたけど俺のいた日本とじゃここは違いすぎる。そもそもあり得ない魔法の国だし。
「夕食はどうする?俺の携帯用食料で良ければ二人で食おうか」
フィリックスが提案してきて、俺はキッチンへ他の食料を確認しに行き小さなパントリーを開ける。イモがいくつか入っている箱を出した。
「イモ…これがここの土地の主食か?」
フィリックスが後ろに立って俺の右肩に顎を乗せて覗きこんでくる。
ひいい!頬がくっついてる!
俺の鼓動がめちゃくちゃ早くなる。
と、とにかく距離が近くて!
「あのっ…!フィリックス、良かったら何か作るよ。でも口に合うかどうかは…」
「作ってくれるんだ、優しいな」
至近距離で微笑みながらフィリックスの手のひらが俺の頭をわしゃわしゃと撫でる。
そしてその手が俺の腰に廻された。
うわ、うわわわわー!
「フィリックス!んな!」
ビックリして身を翻したとたん、すぐそばの台の上の小さな水瓶に俺の肘が当たって倒れ、割れないようにそれを抱えた俺の上着がびしょびしょになった。冷たっ!俺はすぐに濡れた上着を脱ぐ。
「すまない」
「いや、俺が悪っ…えっ!」
フィリックスがすぐに自分のマントを掴んで俺を拭いてから、こぼれた水を拭いていく。しゃがみこんで床までそれで拭こうとするのを見て焦った。
「だめ!マントが汚れちゃう!」
騎士の制服であろう立派な紅いマントを俺の汚部屋で躊躇なく雑巾のようになんて、フィリックスいい人すぎる。俺が慌てて手を伸ばして制止すると、フィリックスがその俺の手首を掴んだ。
「…!細い手首だな…」
そのままキッチンの壁に俺の背中を押し付けて彼の両腕に閉じ込められた。
壁ドンって聞いたことあるけど、これがそうならすごい破壊力だ。
近い近い近い!んで、顔がひたすら眩しい。
フィリックスの美貌が近すぎて正視できない俺は思わず目をそらす。
「…シン…」
フィリックスが俺の顔にだんだん近づいてきた。突然のこのシチュエーションにビビったその時。
ぐう~~~。
俺のお腹が唸るようにそれはそれは盛大に鳴った。
「あ…」
しばらく二人とも爽やかににこやかに見つめあって沈黙する。
「ごはん…作るね」
心臓は爆発しそうなんだけれども、俺はなんとか平常心を装ってそう言い、すぐそばに掛けてあるカフェエプロンを身につけ、震える手で紐を結んだ。
気づくとフィリックスが真っ赤になっている。ん?何で?俺が不思議そうな顔をしていると、彼がぼそりと呟いた。
「それ、見ようによっちゃ、裸エプロ…あ、いや何でも…」
あっ俺、上着脱いだんだっけ…。なで肩から紐がするっと落ちたとたん、フィリックスがまた赤くなった。
散らかりまくった俺の部屋を見てフィリックスが笑う。玄関先で待っててとあれほど言ったのにすぐ入ってきちゃったし!
「片付けるから待ってて欲しかったのに…」
怒る俺にフィリックスは声を上げて笑った。こんな顔するんだな…。俺は少しキュンとしてしまう。
俺はそこら辺にある物を適当に移動して彼の居場所を作った。
俺は独り暮らしをするために数年前、長老に小さな家を建ててもらっていた。居間より寝室をかなり広めに作ってあるから、キッチンがものすごく狭い。でも快適な俺の城だ。
「ほんとに泊まるの…長老の家があるじゃんか」
「ここがいい。シンの部屋が気になったし、これからずっと一緒だしな」
「一緒?」
きょとんとする俺にフィリックスが近くに置いてある椅子に座って足を組んだ。いちいちサマになりすぎてつい見惚れてしまう。
「竜騎士はみんな同じ寮に住んでるんだ。」
「へえ…竜騎士ってたくさんいるの?」
フィリックスは不安そうに見ている俺に笑いかけた。
「いや、竜騎士は少ない。国王陛下に仕える騎士中の騎士だけがなれる難関だ」
「そうなんだ…ドラゴンがいるだけでも驚いて生きてきたのに俺が竜騎士とかいうのもわけわからん…」
「シン??」
フィリックスが怪訝な表情になって俺はハッと気がついた。イカンイカン、俺に異世界の前世の記憶があるなんて誰も信じてくれないし。
もう慣れたけど俺のいた日本とじゃここは違いすぎる。そもそもあり得ない魔法の国だし。
「夕食はどうする?俺の携帯用食料で良ければ二人で食おうか」
フィリックスが提案してきて、俺はキッチンへ他の食料を確認しに行き小さなパントリーを開ける。イモがいくつか入っている箱を出した。
「イモ…これがここの土地の主食か?」
フィリックスが後ろに立って俺の右肩に顎を乗せて覗きこんでくる。
ひいい!頬がくっついてる!
俺の鼓動がめちゃくちゃ早くなる。
と、とにかく距離が近くて!
「あのっ…!フィリックス、良かったら何か作るよ。でも口に合うかどうかは…」
「作ってくれるんだ、優しいな」
至近距離で微笑みながらフィリックスの手のひらが俺の頭をわしゃわしゃと撫でる。
そしてその手が俺の腰に廻された。
うわ、うわわわわー!
「フィリックス!んな!」
ビックリして身を翻したとたん、すぐそばの台の上の小さな水瓶に俺の肘が当たって倒れ、割れないようにそれを抱えた俺の上着がびしょびしょになった。冷たっ!俺はすぐに濡れた上着を脱ぐ。
「すまない」
「いや、俺が悪っ…えっ!」
フィリックスがすぐに自分のマントを掴んで俺を拭いてから、こぼれた水を拭いていく。しゃがみこんで床までそれで拭こうとするのを見て焦った。
「だめ!マントが汚れちゃう!」
騎士の制服であろう立派な紅いマントを俺の汚部屋で躊躇なく雑巾のようになんて、フィリックスいい人すぎる。俺が慌てて手を伸ばして制止すると、フィリックスがその俺の手首を掴んだ。
「…!細い手首だな…」
そのままキッチンの壁に俺の背中を押し付けて彼の両腕に閉じ込められた。
壁ドンって聞いたことあるけど、これがそうならすごい破壊力だ。
近い近い近い!んで、顔がひたすら眩しい。
フィリックスの美貌が近すぎて正視できない俺は思わず目をそらす。
「…シン…」
フィリックスが俺の顔にだんだん近づいてきた。突然のこのシチュエーションにビビったその時。
ぐう~~~。
俺のお腹が唸るようにそれはそれは盛大に鳴った。
「あ…」
しばらく二人とも爽やかににこやかに見つめあって沈黙する。
「ごはん…作るね」
心臓は爆発しそうなんだけれども、俺はなんとか平常心を装ってそう言い、すぐそばに掛けてあるカフェエプロンを身につけ、震える手で紐を結んだ。
気づくとフィリックスが真っ赤になっている。ん?何で?俺が不思議そうな顔をしていると、彼がぼそりと呟いた。
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