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竜騎士になったよ
赤の竜騎士フィリックス
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大ジジイが用事があると言って帰ってしまったので、俺もラースのところへ戻ろうかと立ち上がった時、長老の家のドアが開いて、フィリックスが姿を見せた。
「…ここにいたのか、シン。探しに行こうと思ってた」
「…え?」
見つめられてドキっとする。やっぱりめっちゃくちゃカッコいい…。
「お前の家はどこだ?」
「え?来るの?」
「今夜はここへ泊めてもらうって言っただろ?お前の家に泊まるんだよ。荷物の整理手伝ってやるよ」
「ええっ!」
俺の散らかった汚部屋を見られるというのですかーーーー?
マジか…
という間にあれよあれよと家に連れていかれる。一緒に並んで歩いていると、ずっと思ってたんだけど、フィリックスは背が高い。俺はつむじから見下ろされてる気がしてしょうがなかった。
「シンは小さいな…食が細いのか?」
突然フィリックスが俺の腰を抱いた。
「うわっ!」
ビックリして、変な声が出ちゃったし!そのままぺたぺたと胸板や腹に触れられて俺は耐えられなくて身をよじる。
変だぞ俺!フィリックスは男だ!俺も男だ!何でこんなにドキドキするんだ?
「本当に細いな…こんなに美しいのに、細すぎてもったいない。食料事情もあるのかもしれんな、もうちょっと太ったほうが俺好みなのに。」
は?…は?
「美しい?…誰が?」
唖然とする俺を見て、フィリックスが驚いた顔をした。
「…気づいてないのか?シンは相当な美形だぞ?さっき空中で初めて会ったときに思ったんだけど…なかなか王宮に来ない蒼の竜騎士が、こんな美しい青年とは驚いた。皆、驚くぞ」
にっこりと笑うフィリックスの言葉が信じられない。
美形なのはあなたの方なんですけどねフィリックス。その深い紫を帯びた黒髪と、深い黒の瞳に高い鼻、締まった顎に逞しく鍛え上げられた贅沢な体躯。俺にはないもんばっかりだよ。さぞかし王宮にフィリックスのファンが多いんでしょうね!
「ただいまー」
俺の家の前にはなんと、ラースとフィリックスの赤いドラゴンがいた。二匹とも仲良くお互いを舐めたりしている。
「なんだ、もうラースと仲良くなったのか。」
フィリックスが赤いドラゴンに笑いかけた。ラースの2倍はある見事なドラゴン。真っ赤な鱗に金色の瞳。手入れの行き届いた立派な鞍もついている。なんだかラースが見劣りした気になって俺は俯いてしまった。
「綺麗なドラゴンだな。愛情いっぱいに育てたんだろ?わかるよ。賢くていい子だ」
「えっ!うん、ラースは最高だよ」
フィリックスがラースを褒めてくれた事が嬉しくて、つい自慢げに話してしまった。
「シンは赤ちゃんの時からラースと一緒なんだろ?」
「うん、ラースとは主従関係じゃないんだ」
「へえ?じゃ、何?」
「相棒。友達…ううん?もう一人の俺だよ。そして俺はもう一人のラース。お互い一心同体なんだ」
うん、一心同体。それが一番しっくりくるかも。そう思うと心が暖かくなって笑顔になった。
しばらくフィリックスは俺を驚いた表情で見つめていたけれど、ふっ、と笑ってくれた。
「そうか…いいな、そういうの…俺も誰かとそうなりたいな」
「え?このドラゴンはそうじゃないの?」
「こいつは…そういう育てられ方をしてない。竜騎士の下僕となるべく専門の施設で育てられてきた。シンが育てたラースとは違う。もし俺がピンチに陥っても、去れと命令したら去るだろうな。命令は絶対だ」
「命令…そもそもラースにはしたことないもん」
「命令をしたことないのか?」
俺は驚くフィリックスを横目にラースに走っていって話しかけた。
「怪我よくなって良かったね!ねえラース、俺を守ってくれてありがと!ラース大好きい~!」
ラースの首に抱きついて頬擦りをすると、ラースは喉を鳴らして蒼い瞳で俺を優しく見つめ、満足げに前足で俺を抱き締めて一緒にじゃれて転がった。
ーーーーー
そんなシンたちを見て、フィリックスが独り言を呟く。
「やばい…これはクるな」
フィリックスがラースとじゃれるシンを見て、整った顔をほころばせて微笑んだ。
そして。
「オリオン号。…す、好きだぞ…」
フィリックスが何を思ったのか、赤いドラゴンを見上げて、シンが言ってたように、好きだと小声で伝えてみた。オリオン号と呼ばれた赤いドラゴンは首を傾げて不思議そうな表情になる。
「…。今のは忘れろ」
フィリックスは一瞬赤面をして振りきるように首を振ると、すぐに険しい表情になった。赤いドラゴンをポンポンと軽く撫でながら、少し離れてじゃれているラースとシンを見ていた。
「他の竜騎士のやつらには渡したくないな…」
フィリックスはぽつりと呟いた。
「…ここにいたのか、シン。探しに行こうと思ってた」
「…え?」
見つめられてドキっとする。やっぱりめっちゃくちゃカッコいい…。
「お前の家はどこだ?」
「え?来るの?」
「今夜はここへ泊めてもらうって言っただろ?お前の家に泊まるんだよ。荷物の整理手伝ってやるよ」
「ええっ!」
俺の散らかった汚部屋を見られるというのですかーーーー?
マジか…
という間にあれよあれよと家に連れていかれる。一緒に並んで歩いていると、ずっと思ってたんだけど、フィリックスは背が高い。俺はつむじから見下ろされてる気がしてしょうがなかった。
「シンは小さいな…食が細いのか?」
突然フィリックスが俺の腰を抱いた。
「うわっ!」
ビックリして、変な声が出ちゃったし!そのままぺたぺたと胸板や腹に触れられて俺は耐えられなくて身をよじる。
変だぞ俺!フィリックスは男だ!俺も男だ!何でこんなにドキドキするんだ?
「本当に細いな…こんなに美しいのに、細すぎてもったいない。食料事情もあるのかもしれんな、もうちょっと太ったほうが俺好みなのに。」
は?…は?
「美しい?…誰が?」
唖然とする俺を見て、フィリックスが驚いた顔をした。
「…気づいてないのか?シンは相当な美形だぞ?さっき空中で初めて会ったときに思ったんだけど…なかなか王宮に来ない蒼の竜騎士が、こんな美しい青年とは驚いた。皆、驚くぞ」
にっこりと笑うフィリックスの言葉が信じられない。
美形なのはあなたの方なんですけどねフィリックス。その深い紫を帯びた黒髪と、深い黒の瞳に高い鼻、締まった顎に逞しく鍛え上げられた贅沢な体躯。俺にはないもんばっかりだよ。さぞかし王宮にフィリックスのファンが多いんでしょうね!
「ただいまー」
俺の家の前にはなんと、ラースとフィリックスの赤いドラゴンがいた。二匹とも仲良くお互いを舐めたりしている。
「なんだ、もうラースと仲良くなったのか。」
フィリックスが赤いドラゴンに笑いかけた。ラースの2倍はある見事なドラゴン。真っ赤な鱗に金色の瞳。手入れの行き届いた立派な鞍もついている。なんだかラースが見劣りした気になって俺は俯いてしまった。
「綺麗なドラゴンだな。愛情いっぱいに育てたんだろ?わかるよ。賢くていい子だ」
「えっ!うん、ラースは最高だよ」
フィリックスがラースを褒めてくれた事が嬉しくて、つい自慢げに話してしまった。
「シンは赤ちゃんの時からラースと一緒なんだろ?」
「うん、ラースとは主従関係じゃないんだ」
「へえ?じゃ、何?」
「相棒。友達…ううん?もう一人の俺だよ。そして俺はもう一人のラース。お互い一心同体なんだ」
うん、一心同体。それが一番しっくりくるかも。そう思うと心が暖かくなって笑顔になった。
しばらくフィリックスは俺を驚いた表情で見つめていたけれど、ふっ、と笑ってくれた。
「そうか…いいな、そういうの…俺も誰かとそうなりたいな」
「え?このドラゴンはそうじゃないの?」
「こいつは…そういう育てられ方をしてない。竜騎士の下僕となるべく専門の施設で育てられてきた。シンが育てたラースとは違う。もし俺がピンチに陥っても、去れと命令したら去るだろうな。命令は絶対だ」
「命令…そもそもラースにはしたことないもん」
「命令をしたことないのか?」
俺は驚くフィリックスを横目にラースに走っていって話しかけた。
「怪我よくなって良かったね!ねえラース、俺を守ってくれてありがと!ラース大好きい~!」
ラースの首に抱きついて頬擦りをすると、ラースは喉を鳴らして蒼い瞳で俺を優しく見つめ、満足げに前足で俺を抱き締めて一緒にじゃれて転がった。
ーーーーー
そんなシンたちを見て、フィリックスが独り言を呟く。
「やばい…これはクるな」
フィリックスがラースとじゃれるシンを見て、整った顔をほころばせて微笑んだ。
そして。
「オリオン号。…す、好きだぞ…」
フィリックスが何を思ったのか、赤いドラゴンを見上げて、シンが言ってたように、好きだと小声で伝えてみた。オリオン号と呼ばれた赤いドラゴンは首を傾げて不思議そうな表情になる。
「…。今のは忘れろ」
フィリックスは一瞬赤面をして振りきるように首を振ると、すぐに険しい表情になった。赤いドラゴンをポンポンと軽く撫でながら、少し離れてじゃれているラースとシンを見ていた。
「他の竜騎士のやつらには渡したくないな…」
フィリックスはぽつりと呟いた。
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