3 / 113
竜騎士になったよ
後ろ髪ひかれて
しおりを挟む
「うーん…」
王宮行きを即答したのはよかったけれども…。
赤いドラゴンの竜騎士だというフィリックスは長老や集落の中心のジジイ達に話をしにこの集落を訪れていた。フィリックスはラースの怪我の経過も見たいと言い、今夜はここへ泊まって明日の朝出発と決まってしまった。
そうなるといざ、我に返った俺は悩んでしまうのだ。
長老の家の前の古い石造りの階段に座り込んでため息をついていると、集落のジジイの一人が建物から出てきて俺の隣へ座った。
大きなジジイ。大ジジイと俺だけが呼んでいる、がっちりとしたジジイだ。幼い頃から俺は彼に肩車やだっこをしてもらい、力仕事は全てこの人に教えてもらった、優しくてこわくて、俺の大好きなジジイだ。
「なんだシン?浮かない顔だな?王宮へ行くのが嫌なのか?さっき自分で行くと言ったのに?」
俺が苦い顔で大ジジイを見ると、彼は笑って俺の首に手を廻して髪をぐしゃぐしゃとかき回した。
「わっ!なにすんだよ!」
「わかってる。お前がいなくなったらここは老人しかいなくなる。お前がいつも力仕事をしてくれたり、みんなの水を毎朝、遠い泉から汲んできてくれたり。自分が王宮に行ったらする人がいなくなるって思ってるんだろ?だからずっとここを出て行くのを嫌がってた、それはみんな知ってるよ」
「……。」
半分は当たり。
半分は怖いんだ。ここから出たことのない俺とラースは外でどんな目に遭うかわからない。こんな弱い俺じゃラースを守ってあげられるかどうかもわからない。
でも、フィリックスの魔法を見て、王宮には強い魔法がたくさんあるんだろうなと思った。俺が強くなればラースを守ってあげられるし、大ケガも治してあげられる。俺の大切な、小さなラースをもっともっと強くすることもできる。
でも、ジジイ達の体も心配…。俺は泣きそうになった。そんな俺の顔を見て、大ジジイが大声で怒鳴った。
「シン!このバカが!俺やジジイを見くびるんじゃない!お前を育ててここまで大きくしたのは俺たちジジイ達だぞ!
…胸張って行けよ。お前は俺たちの誇りだ!強くなって、蒼い竜騎士シンの伝説を噂で聞けるのを楽しみに長生きしてやるわ」
「大ジジイ…!うう~!」
俺は大ジジイの大きな広い胸に年甲斐もなく小さな子のように抱きついて泣いてしまった。
「王宮に行ったら流行りの若いアイドルの写真送ってこいよ」
大ジジイがにっこり笑って俺に言い、お陰さまで出た涙もすーっと引っ込んだ。
王宮行きを即答したのはよかったけれども…。
赤いドラゴンの竜騎士だというフィリックスは長老や集落の中心のジジイ達に話をしにこの集落を訪れていた。フィリックスはラースの怪我の経過も見たいと言い、今夜はここへ泊まって明日の朝出発と決まってしまった。
そうなるといざ、我に返った俺は悩んでしまうのだ。
長老の家の前の古い石造りの階段に座り込んでため息をついていると、集落のジジイの一人が建物から出てきて俺の隣へ座った。
大きなジジイ。大ジジイと俺だけが呼んでいる、がっちりとしたジジイだ。幼い頃から俺は彼に肩車やだっこをしてもらい、力仕事は全てこの人に教えてもらった、優しくてこわくて、俺の大好きなジジイだ。
「なんだシン?浮かない顔だな?王宮へ行くのが嫌なのか?さっき自分で行くと言ったのに?」
俺が苦い顔で大ジジイを見ると、彼は笑って俺の首に手を廻して髪をぐしゃぐしゃとかき回した。
「わっ!なにすんだよ!」
「わかってる。お前がいなくなったらここは老人しかいなくなる。お前がいつも力仕事をしてくれたり、みんなの水を毎朝、遠い泉から汲んできてくれたり。自分が王宮に行ったらする人がいなくなるって思ってるんだろ?だからずっとここを出て行くのを嫌がってた、それはみんな知ってるよ」
「……。」
半分は当たり。
半分は怖いんだ。ここから出たことのない俺とラースは外でどんな目に遭うかわからない。こんな弱い俺じゃラースを守ってあげられるかどうかもわからない。
でも、フィリックスの魔法を見て、王宮には強い魔法がたくさんあるんだろうなと思った。俺が強くなればラースを守ってあげられるし、大ケガも治してあげられる。俺の大切な、小さなラースをもっともっと強くすることもできる。
でも、ジジイ達の体も心配…。俺は泣きそうになった。そんな俺の顔を見て、大ジジイが大声で怒鳴った。
「シン!このバカが!俺やジジイを見くびるんじゃない!お前を育ててここまで大きくしたのは俺たちジジイ達だぞ!
…胸張って行けよ。お前は俺たちの誇りだ!強くなって、蒼い竜騎士シンの伝説を噂で聞けるのを楽しみに長生きしてやるわ」
「大ジジイ…!うう~!」
俺は大ジジイの大きな広い胸に年甲斐もなく小さな子のように抱きついて泣いてしまった。
「王宮に行ったら流行りの若いアイドルの写真送ってこいよ」
大ジジイがにっこり笑って俺に言い、お陰さまで出た涙もすーっと引っ込んだ。
52
お気に入りに追加
4,179
あなたにおすすめの小説
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい
戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。
人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください!
チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!!
※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。
番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」
「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる