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竜騎士になったよ
竜騎士転生
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崖に囲まれた小さな辺境の集落。
小さな男の子が生まれた。
蒼い髪と金の瞳を持つ子だった。
母親は彼を産み落とすとすぐ息を引き取ってしまう。父親が誰かはわからない。
この集落には、ある予言が残されていた。この村から次の竜騎士がうまれる、と。
…っていうけれど、まあ各地にそんな話はあるんだ。
それよりも俺には生まれる前の記憶がある。
俺の名前はシン。ここではそう呼ばれてる。
でも前の名前はシンヤ。日本人で病弱な少年だった。外には出られず、ずーっと病院で育った。遊び相手は本だけ。自然に憧れてずっと外で過ごすことを夢見た。森や野原を走り回りたい。走ったことなどない。折れそうな細い手足を見ながらため息の日々。
そしてとうとう病に負けてしまう時がきた。
両親とお別れするのは悲しかったけれど。
目の前が少しずつ真っ暗になって、目が覚めたらここで赤ちゃんになっていたというわけだ。
生まれ変わりって本当にあるのだな、というのが正直な感想。これはかの有名な異世界転生っていうのだろうか。
そして、大自然の中で健康で生まれて来られた事がものすごく嬉しくて、毎日走り回って元気に走り回って、とにかく走り回って。俺はアホみたいに逞しく弾けた毎日を送ってしまっていた。
この集落には俺以外、子どもはいない。ここは過疎地で、右も左もどこもかしこも、みーんなご老人ばっかりだ。若い人は俺を生んだ母親ただ一人だったらしい。でも亡くなってしまったので、俺はたった一人の子どもとして村のみんなに大切に育てられたんだ。
でも、たった一人だけの子どもだからって、遊び相手がいないわけじゃない。
「ラース、空に連れていって」
俺は崖の上からある名前を呼んだ。
すると崖からぬっと大きな影が現れる。
美しい蒼の鱗を持つドラゴン。俺の髪と同じ色のドラゴンが翼を広げて目の前に飛んできた。
ラース。俺の大好きな相棒。
俺を乗せたラースは大空をどこまでも飛んでいく。キレイな空、下の景色がどんどん小さくなっていく。最高の爽快感が突き抜ける。ラースとならどこでもなんでもできる、大好きな、俺だけのドラゴン。
俺が生まれた日、神殿の祭壇に赤ちゃんドラゴンがうずくまっていたのだそうだ。それがラース。それは俺が竜騎士だということをみんなに確信させることになった。
この世界にいるドラゴンはほぼ茶色、色つきのドラゴンは大変珍しくめったに生まれない。そして竜騎士は色つきのドラゴンを持っている。だから俺は竜騎士としてうまれたんだと思われているんだ。
でも俺はその説を疑っている。だって、ラースはただの迷子だったかもしれないもん。
でも、お陰で俺たちは一緒に育ち、いつも一緒にいる。ラースは話にきく竜騎士のドラゴンより小さくて華奢だけど、勇気がある。今じゃ俺を乗せて飛ぶことなんて難なくできるようになった。それに俺は竜騎士として育てられたから、魔法が使えるご老人たちから基本的な魔法の手解きは受けていた。
ラースと二人なら、何でもできる。
ある日俺は長老のジジイに呼び出された。
「は?ここを出てけって?」
いきなり切り出された話に長老とジジイ達を睨み付けた。
「お前はもう立派な大人だ。竜騎士は18になると王宮で騎士団に入らなければならない。行け」
「はあ?そんなこと全く聞いてないけど?何それ?」
憤る俺に長老達が面食らった。
「あのなシン、普通な、若い者だったら都会に出た~いとか、ここから出て自分の力を試したいんだ~的な?おまえには冒険心ってものがないのか?」
長老の言葉に後ろにいるジジイどももうんうんと頷く。
「いや……衣食住足りてて健康に平穏に暮らせてるから別に……今のままで満足なんだけど」
「今どきの子だな……いや、竜騎士たるものその力を世に使わなくてはならんのだ」
「え?めんどくさ……」
俺とラースはものすごく不満そうな顔をした。
「と、とにかく!王宮から召集がきておるのだ!お前が活躍すればこの集落の誉れ!とっとといけー!活躍すれば昇進金銭思うまま勝ち組人生が手にはいるぞ!」
「興味ないなー、なあラース。いこ?」
「グァ!」
ラースが機嫌よく返事をする。
「可愛い子がめっちゃいるぞ。姫君とか」
「えー?恋とか興味ないもん」
「くそ、手強い…なかなかだな今の子…」
と、いうわけで俺はなかなか集落を出ていかなかった。
でも、そんな俺の気持ちを一変させる出来事が起こってしまったんだ。
小さな男の子が生まれた。
蒼い髪と金の瞳を持つ子だった。
母親は彼を産み落とすとすぐ息を引き取ってしまう。父親が誰かはわからない。
この集落には、ある予言が残されていた。この村から次の竜騎士がうまれる、と。
…っていうけれど、まあ各地にそんな話はあるんだ。
それよりも俺には生まれる前の記憶がある。
俺の名前はシン。ここではそう呼ばれてる。
でも前の名前はシンヤ。日本人で病弱な少年だった。外には出られず、ずーっと病院で育った。遊び相手は本だけ。自然に憧れてずっと外で過ごすことを夢見た。森や野原を走り回りたい。走ったことなどない。折れそうな細い手足を見ながらため息の日々。
そしてとうとう病に負けてしまう時がきた。
両親とお別れするのは悲しかったけれど。
目の前が少しずつ真っ暗になって、目が覚めたらここで赤ちゃんになっていたというわけだ。
生まれ変わりって本当にあるのだな、というのが正直な感想。これはかの有名な異世界転生っていうのだろうか。
そして、大自然の中で健康で生まれて来られた事がものすごく嬉しくて、毎日走り回って元気に走り回って、とにかく走り回って。俺はアホみたいに逞しく弾けた毎日を送ってしまっていた。
この集落には俺以外、子どもはいない。ここは過疎地で、右も左もどこもかしこも、みーんなご老人ばっかりだ。若い人は俺を生んだ母親ただ一人だったらしい。でも亡くなってしまったので、俺はたった一人の子どもとして村のみんなに大切に育てられたんだ。
でも、たった一人だけの子どもだからって、遊び相手がいないわけじゃない。
「ラース、空に連れていって」
俺は崖の上からある名前を呼んだ。
すると崖からぬっと大きな影が現れる。
美しい蒼の鱗を持つドラゴン。俺の髪と同じ色のドラゴンが翼を広げて目の前に飛んできた。
ラース。俺の大好きな相棒。
俺を乗せたラースは大空をどこまでも飛んでいく。キレイな空、下の景色がどんどん小さくなっていく。最高の爽快感が突き抜ける。ラースとならどこでもなんでもできる、大好きな、俺だけのドラゴン。
俺が生まれた日、神殿の祭壇に赤ちゃんドラゴンがうずくまっていたのだそうだ。それがラース。それは俺が竜騎士だということをみんなに確信させることになった。
この世界にいるドラゴンはほぼ茶色、色つきのドラゴンは大変珍しくめったに生まれない。そして竜騎士は色つきのドラゴンを持っている。だから俺は竜騎士としてうまれたんだと思われているんだ。
でも俺はその説を疑っている。だって、ラースはただの迷子だったかもしれないもん。
でも、お陰で俺たちは一緒に育ち、いつも一緒にいる。ラースは話にきく竜騎士のドラゴンより小さくて華奢だけど、勇気がある。今じゃ俺を乗せて飛ぶことなんて難なくできるようになった。それに俺は竜騎士として育てられたから、魔法が使えるご老人たちから基本的な魔法の手解きは受けていた。
ラースと二人なら、何でもできる。
ある日俺は長老のジジイに呼び出された。
「は?ここを出てけって?」
いきなり切り出された話に長老とジジイ達を睨み付けた。
「お前はもう立派な大人だ。竜騎士は18になると王宮で騎士団に入らなければならない。行け」
「はあ?そんなこと全く聞いてないけど?何それ?」
憤る俺に長老達が面食らった。
「あのなシン、普通な、若い者だったら都会に出た~いとか、ここから出て自分の力を試したいんだ~的な?おまえには冒険心ってものがないのか?」
長老の言葉に後ろにいるジジイどももうんうんと頷く。
「いや……衣食住足りてて健康に平穏に暮らせてるから別に……今のままで満足なんだけど」
「今どきの子だな……いや、竜騎士たるものその力を世に使わなくてはならんのだ」
「え?めんどくさ……」
俺とラースはものすごく不満そうな顔をした。
「と、とにかく!王宮から召集がきておるのだ!お前が活躍すればこの集落の誉れ!とっとといけー!活躍すれば昇進金銭思うまま勝ち組人生が手にはいるぞ!」
「興味ないなー、なあラース。いこ?」
「グァ!」
ラースが機嫌よく返事をする。
「可愛い子がめっちゃいるぞ。姫君とか」
「えー?恋とか興味ないもん」
「くそ、手強い…なかなかだな今の子…」
と、いうわけで俺はなかなか集落を出ていかなかった。
でも、そんな俺の気持ちを一変させる出来事が起こってしまったんだ。
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