72 / 93
本編
あれから
しおりを挟む
国王陛下の命でベンは王宮に戻ることになり、馬に乗り、後ろからゼルとゲットを連れていってしまった。
「えっ…一緒に戻らないの?」
「やけくそになった皇后一派がレイに何をするかわからないじゃないか。今はダリウスとドラゴンに守ってもらうといい。彼らには詳細を頼んであるから」
拗ねる俺を抱き締めながらベンが頬にキスをした。今はベッドの中。
昨夜、彼があんなに激しく執拗に俺を求めたのは、しばらくまた別行動になっちゃうからだったんだ…。俺は寂しくなってベンの腕に絡み付く。
「寂しいな…」
「うん…私もだ、レイ。だが必ずお前と幸せにずっと一緒にいられるようにする。もうしばらくの辛抱だ」
「うん…」
俺はこくりと頷いた。わかってはいるけれど、寂しいのは止められない。
「ああもう!私の胸をこんなに乱して…!レイは本当に憎らしい」
ベンが突然俺をがばりと抱き締める。
「本当は一秒だって離れたくないんだ、また何かあったらと思うと今でも胸がかきむしられそうになる…」
俺の額、頬、鎖骨、耳など手当たり次第に唇を押し付けてくるベンが狂おしげに呻く。
ベンも苦しいんだ、寂しいんだ…俺と同じように。
でも、俺たちは戦わなくちゃいけない。きっと国王陛下とシュワルツも同じ想いを、いや、それ以上に何かあったのかもしれない。結ばれたくても日陰にいることしかできなかったシュワルツの気持ちと、そうすることしかできなかった国王陛下の無念。そしてまた、引き裂かれそうになっている俺たち。
一人の女と、一国のエゴで。
朝、別れ際にまた熱いキスをした。
「ダリウスの言うことをよく聞いてほしい。彼はプロだ」
え?よくわからないけれど、…わかった。俺はこくんと頷き、そしてベンは行ってしまった。
後ろにダリウスとドラゴンが現れた。
「さて…俺たちも行くとするか」
「え?…どこに?」
「B国」
…は?B国?俺は目を丸くした。
「ヴォルフ王子とB国のクレオン王子と合流する」
「え、なんで…?」
「ベンと俺と話し合ったんだ」
話し合った?何を?
「お前はこの金のドラゴンの使い手、ドラゴンライダーのレイとして戦功をあげてもらうことにした。ドラゴンも快諾してくれてるようだし。一族に伝わる魔法薬を取り寄せてな、俺もドラゴンと話せるようになったんだ」
ふふ、と笑ってダリウスがドラゴンを見上げ、ドラゴンもダリウスに目配せをした。
『外国に住んでいた頃、大戦などで竜騎士と大暴れした昔が懐かしい…レイは安心して乗っていれば良いから案ずるな』
な?なななにそれ?めちゃくちゃ案ずるわ!
物語でしか聞いたことのなかった世界が今、俺の前にリアルに現れた。
「えっ…一緒に戻らないの?」
「やけくそになった皇后一派がレイに何をするかわからないじゃないか。今はダリウスとドラゴンに守ってもらうといい。彼らには詳細を頼んであるから」
拗ねる俺を抱き締めながらベンが頬にキスをした。今はベッドの中。
昨夜、彼があんなに激しく執拗に俺を求めたのは、しばらくまた別行動になっちゃうからだったんだ…。俺は寂しくなってベンの腕に絡み付く。
「寂しいな…」
「うん…私もだ、レイ。だが必ずお前と幸せにずっと一緒にいられるようにする。もうしばらくの辛抱だ」
「うん…」
俺はこくりと頷いた。わかってはいるけれど、寂しいのは止められない。
「ああもう!私の胸をこんなに乱して…!レイは本当に憎らしい」
ベンが突然俺をがばりと抱き締める。
「本当は一秒だって離れたくないんだ、また何かあったらと思うと今でも胸がかきむしられそうになる…」
俺の額、頬、鎖骨、耳など手当たり次第に唇を押し付けてくるベンが狂おしげに呻く。
ベンも苦しいんだ、寂しいんだ…俺と同じように。
でも、俺たちは戦わなくちゃいけない。きっと国王陛下とシュワルツも同じ想いを、いや、それ以上に何かあったのかもしれない。結ばれたくても日陰にいることしかできなかったシュワルツの気持ちと、そうすることしかできなかった国王陛下の無念。そしてまた、引き裂かれそうになっている俺たち。
一人の女と、一国のエゴで。
朝、別れ際にまた熱いキスをした。
「ダリウスの言うことをよく聞いてほしい。彼はプロだ」
え?よくわからないけれど、…わかった。俺はこくんと頷き、そしてベンは行ってしまった。
後ろにダリウスとドラゴンが現れた。
「さて…俺たちも行くとするか」
「え?…どこに?」
「B国」
…は?B国?俺は目を丸くした。
「ヴォルフ王子とB国のクレオン王子と合流する」
「え、なんで…?」
「ベンと俺と話し合ったんだ」
話し合った?何を?
「お前はこの金のドラゴンの使い手、ドラゴンライダーのレイとして戦功をあげてもらうことにした。ドラゴンも快諾してくれてるようだし。一族に伝わる魔法薬を取り寄せてな、俺もドラゴンと話せるようになったんだ」
ふふ、と笑ってダリウスがドラゴンを見上げ、ドラゴンもダリウスに目配せをした。
『外国に住んでいた頃、大戦などで竜騎士と大暴れした昔が懐かしい…レイは安心して乗っていれば良いから案ずるな』
な?なななにそれ?めちゃくちゃ案ずるわ!
物語でしか聞いたことのなかった世界が今、俺の前にリアルに現れた。
81
お気に入りに追加
4,114
あなたにおすすめの小説
虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?
み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました!
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜
天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。
彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。
幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。
運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
転生するにしても、これは無いだろ! ~死ぬ間際に読んでいた小説の悪役に転生しましたが、自分を殺すはずの最強主人公が逃がしてくれません~
槿 資紀
BL
駅のホームでネット小説を読んでいたところ、不慮の事故で電車に撥ねられ、死んでしまった平凡な男子高校生。しかし、二度と目覚めるはずのなかった彼は、死ぬ直前まで読んでいた小説に登場する悪役として再び目覚める。このままでは、自分のことを憎む最強主人公に殺されてしまうため、何とか逃げ出そうとするのだが、当の最強主人公の態度は、小説とはどこか違って――――。
最強スパダリ主人公×薄幸悪役転生者
R‐18展開は今のところ予定しておりません。ご了承ください。
【完結】欠陥品と呼ばれていた伯爵令息だけど、なぜか年下の公爵様に溺愛される
ゆう
BL
アーデン伯爵家に双子として生まれてきたカインとテイト。
瓜二つの2人だが、テイトはアーデン伯爵家の欠陥品と呼ばれていた。その訳は、テイトには生まれつき右腕がなかったから。
国教で体の障害は前世の行いが悪かった罰だと信じられているため、テイトに対する人々の風当たりは強く、次第にやさぐれていき・・・
もう全てがどうでもいい、そう思って生きていた頃、年下の公爵が現れなぜか溺愛されて・・・?
※設定はふわふわです
※差別的なシーンがあります
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる