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本編

転生者である俺の告白

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演奏を終えた俺に、目を潤ませたベンが俺を抱き締めて尋ねてきた。

「この曲はレイの作ったものなのか…?とにかく素晴らしいんだが」
「あ、いや、違う…」

これは世界の巨匠が作った、俺の世界ではとても有名な曲ばかりだ。

「じゃ、誰が?あの国ににそんな素晴らしい曲を作る作曲家がいるなど聞いたことがないぞ」

そ、そうだよね、その通りです。これは俺の前世の昔からの巨匠が作り上げた歴史的超有名曲。そんなことも考えずうっかり弾いてしまったことを後悔した。

「あ、あの…でも、俺じゃないの…」
「レイ、そういう隠し事は嫌だと言った筈だが」

ぱくぱくと挙動不審な俺に、ベンの眉間が険しくなる。

だってそれを言ったら…。

「レイ」

もう一度、ベンが俺を低い声で呼んだ。とうとう俺は観念してしまった。

「お、怒らないで聞いてくれる?言うの遅いとか、嫌いになるとかやめてね…」
「は?なる訳がないだろう?言わないほうが怒るわ」

早く言えとばかりにベンが俺の額に自分の額をゴチンと当てた。痛い、でもその仕草にもキュンとしてしまう自分がいる。

「俺ね…前世の記憶があるんだ、よ」

ベンの目がみるみるうちに見開かれる。

「レイお前…て…」
「そう、転生者。異世界から転生した音楽家だったんだ。さっきの曲は俺の世界では有名な曲。もう弾かない、これからはこの国の曲を弾くから楽譜をちょうだい」

あまりのことにベンが言葉を失っている。

「たいして驚くことじゃないよ。人に初めて言ったけど…親にも誰にも黙ってたんだ」
「俺の他には誰も知らないのか?」
「ん」

しばらく考えてからベンが俺を抱き締める。

「誰にも言わないほうがいい。俺の胸のうちにおさめておく、伝説がデリケートすぎる事案だからな…」

転生者を手に入れた者は王座が約束されるという伝説。

ベンは王位継承第二位だ。一位には兄のヴォルフがいる。俺の存在はヴォルフの王冠を危うくするものだ。それはベンも望んでいない。

ベンが駄礼もいないこの部屋で俺を膝にのせ、唇を奪うようなキスをする。

「ん…っ」

思わず吐息がもれてしまう。

「だからといってレイは私のなかでは何も変わらない、私の愛しいレイだ」
「ベン…」

そんな甘い言葉をピンポイントにくれる、この痒いところにいちいち届く感じが好き!俺はベンの首に手を巻き付ける。

「すぐに有名どころの楽譜を揃えよう。早くレイの演奏が聞きたい。部屋に戻ろうか、その楽器は父上に頂けるよう手配するから安心して持って帰ろうな」

俺の手にしっくりなじむ、最高の楽器が手にはいった。

部屋に戻るとベンが抱き締めて、またキスをしてきて、俺たちはまた愛し合った。

あの楽器の部屋で、誰かが俺たちの話を聞いていたなんて思いもしないで。





                                                                              
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