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定食屋ミナミ
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85 定食屋ミナミ
「面倒なことはワシに任せておけ。オヌシはいつも通りやっていればいいのだ。さっき、街での仕事を始めると言っておったの。そのうち様子を伺いに行くからしっかりやるのだぞ」
「ガンツが来てくれたら嬉しいよ。ゼランドさんの店の裏なんだ。ミナミって定食屋だよ。明日から働くんだ。明日は流石にいろいろ大変だと思うけど、ぜひ食べに来てよ。唐揚げが美味しいらしいよ」
「ゼランドのところにはワシも行く機会が多いからの。機会があればケイの仕事をのぞいてみることにしよう。油断せずに気を抜かないでちゃんと仕事をするのだぞ」
そう言って手を振るガンツが、じいちゃんとなぜか重なって見えた。
王都に来てから色んな人に支えられてる。
靴屋のサイモンさんから始まって、セシル姉さんとかに目をつけられちゃって。
ゼランドさんには頭が上がらないな。3男は別にどうでもいいけど。
黒狼のメンバーが優しくしてくれたのはセシル姉さんのおかげだし。
ガンツとライツは僕のことをいつも支えてくれてる。
あぁ。あのメガネの人にもお世話になったっけ。
いろんな人に助けてもらって、なんとか王都で暮らせる目処がついた。何か返せるものがあればいいんだけど。
セシル姉さんとかは普通に受け取ってくれないよな。ガンツだって、それからライツもそう。ドワーフって種族がそうなのか、身内に対してすごく優しい。
何かで少しでも返せたらいいのにな。
「どうした?ケイ。さっきから何か悩んでいるようにみえるが」
ガンツの工房を出て、いつもの公衆浴場に行き、フェルの髪を乾かしているとフェルが僕を心配そうに見る。
「王都に来てさ。色んな人に助けてもらって、その人たちに何か恩返ししたいんだけど……みんな、ちゃんと受け取ってくれなさそうじゃない。どうしたらいいのかなって、思うんだけど、あまりいいアイデアが思いつかなくって」
フェルはいつものように首を傾けて、ドライヤーの魔法を待っている。
「そんなもの、みんなを集めて食事会でもしたら良いではないか。ケイの作る料理で、もてなせばいいのだ。炊き出しの日にでもやってみれば良い。社交は苦手だが、頑張って私も力になろう」
社交会?あんまり大袈裟にしたくなんだけど。でも何か料理を作ってみんなに振る舞うのは悪くない気がした。
でもあのメガネの人呼べるのかな?
お風呂に入って急いで帰る。急いでいたけどフェルの髪は時間をかけて丁寧に乾かした。
「明日はフェルはどうするの?」
「うむ。ギルドに行ってみて考えることにしようと思っていたが、やはり少し不安だな。セシルとかがいればいいのだが」
「黒狼の人たちでもいいんじゃない?でもいるかどうかわからないから、いなかったら受付の人とかに相談だね」
「ダメならばそれでも良いのだ。エリママのところに行けば良い。明日は何時に終わるのだ?終わる頃に私が迎えに行こう」
「そしたら夕飯を食べに来てよ。だいたい8時くらいには店を閉めるって言ってたから、7時くらいに」
「わかった。その時間に店に行くことにしよう」
次の日、朝の魔力循環ランニングの後、卵と牛乳を買って家に帰る。今日は途中でパンも買った。
お米を炊かなくていいから朝食の支度は結構楽ちんだ。おかげで30分前にはミナミの前に着いた。
「早いね。もっとゆっくりきてもよかったのに」
そう言うホランドさんに、初日なので緊張して早く着いてしまったと言う。
ホランドさんは笑っていた。
スープに使う野菜の皮剥きをして、下拵えが終わったら、店の掃除をして開店の準備をする。
テーブルを拭いて、店の前をきれいにする。なんだかじいちゃんとお店をやってた時みたいだ。懐かしい。
「ケイくん。朝ごはんは食べてきたかい?これからずっと忙しくなるから、食べるんだったら今だよ」
「大丈夫ですー。朝はちゃんと食べてきたので。それより他に何かやることはありませんか?」
テーブルも拭き終えて店の前の掃除も終わってしまった。あとは何をしたらいいかな。
「実はもうやることってもうほとんどないんだよ。ケイくんとっても手際がいいね」
「じいちゃんの食堂もこんな感じでしたからね。ずっとやってたからこういうの慣れてるだけですよ」
ホランドさんは少し手を止めて考え込む。
「じゃあちょっとこっちの仕込みも手伝ってもらおうかな」
そう言ってホランドさんはメインの料理の仕込みの仕方を教えてくれる。
メインの料理といってもミナミのメニューはとてもシンプルだ。
お借りした店の包丁で唐揚げ用の鶏肉を切り分けていく。ちょっと大きめがいいみたい。
切り分けた鶏肉に満遍なく薄く塩をかけて、ボウルに入れていく。
ボウルに一杯になったら少し揉み込んでから、一度水で洗い流す。こうすると少し臭みがなくなるらしい。
そのあとは秘伝の塩ダレを鶏肉にかけ少し混ぜ合わせたら唐揚げの下準備はおしまい。
唐揚げは人気のメニューなのでひたすらそれをやる。
ホランドさんはスープを作るのに集中している。普段はスープを作りながら合間で唐揚げの仕込みをしていたから、とても助かるとホランドさんに言われた。
「ケイくん。そろそろ開店だから看板変えてきて」
準備中と書かれた看板を、営業中に変える。看板少し汚れてるな。明日きれいにしてみよう。並んでいるお客さんにできるだけ元気な声で声をかける。
「いらっしゃいませ!何名様ですか?」
定食屋ミナミの営業が始まった。
「面倒なことはワシに任せておけ。オヌシはいつも通りやっていればいいのだ。さっき、街での仕事を始めると言っておったの。そのうち様子を伺いに行くからしっかりやるのだぞ」
「ガンツが来てくれたら嬉しいよ。ゼランドさんの店の裏なんだ。ミナミって定食屋だよ。明日から働くんだ。明日は流石にいろいろ大変だと思うけど、ぜひ食べに来てよ。唐揚げが美味しいらしいよ」
「ゼランドのところにはワシも行く機会が多いからの。機会があればケイの仕事をのぞいてみることにしよう。油断せずに気を抜かないでちゃんと仕事をするのだぞ」
そう言って手を振るガンツが、じいちゃんとなぜか重なって見えた。
王都に来てから色んな人に支えられてる。
靴屋のサイモンさんから始まって、セシル姉さんとかに目をつけられちゃって。
ゼランドさんには頭が上がらないな。3男は別にどうでもいいけど。
黒狼のメンバーが優しくしてくれたのはセシル姉さんのおかげだし。
ガンツとライツは僕のことをいつも支えてくれてる。
あぁ。あのメガネの人にもお世話になったっけ。
いろんな人に助けてもらって、なんとか王都で暮らせる目処がついた。何か返せるものがあればいいんだけど。
セシル姉さんとかは普通に受け取ってくれないよな。ガンツだって、それからライツもそう。ドワーフって種族がそうなのか、身内に対してすごく優しい。
何かで少しでも返せたらいいのにな。
「どうした?ケイ。さっきから何か悩んでいるようにみえるが」
ガンツの工房を出て、いつもの公衆浴場に行き、フェルの髪を乾かしているとフェルが僕を心配そうに見る。
「王都に来てさ。色んな人に助けてもらって、その人たちに何か恩返ししたいんだけど……みんな、ちゃんと受け取ってくれなさそうじゃない。どうしたらいいのかなって、思うんだけど、あまりいいアイデアが思いつかなくって」
フェルはいつものように首を傾けて、ドライヤーの魔法を待っている。
「そんなもの、みんなを集めて食事会でもしたら良いではないか。ケイの作る料理で、もてなせばいいのだ。炊き出しの日にでもやってみれば良い。社交は苦手だが、頑張って私も力になろう」
社交会?あんまり大袈裟にしたくなんだけど。でも何か料理を作ってみんなに振る舞うのは悪くない気がした。
でもあのメガネの人呼べるのかな?
お風呂に入って急いで帰る。急いでいたけどフェルの髪は時間をかけて丁寧に乾かした。
「明日はフェルはどうするの?」
「うむ。ギルドに行ってみて考えることにしようと思っていたが、やはり少し不安だな。セシルとかがいればいいのだが」
「黒狼の人たちでもいいんじゃない?でもいるかどうかわからないから、いなかったら受付の人とかに相談だね」
「ダメならばそれでも良いのだ。エリママのところに行けば良い。明日は何時に終わるのだ?終わる頃に私が迎えに行こう」
「そしたら夕飯を食べに来てよ。だいたい8時くらいには店を閉めるって言ってたから、7時くらいに」
「わかった。その時間に店に行くことにしよう」
次の日、朝の魔力循環ランニングの後、卵と牛乳を買って家に帰る。今日は途中でパンも買った。
お米を炊かなくていいから朝食の支度は結構楽ちんだ。おかげで30分前にはミナミの前に着いた。
「早いね。もっとゆっくりきてもよかったのに」
そう言うホランドさんに、初日なので緊張して早く着いてしまったと言う。
ホランドさんは笑っていた。
スープに使う野菜の皮剥きをして、下拵えが終わったら、店の掃除をして開店の準備をする。
テーブルを拭いて、店の前をきれいにする。なんだかじいちゃんとお店をやってた時みたいだ。懐かしい。
「ケイくん。朝ごはんは食べてきたかい?これからずっと忙しくなるから、食べるんだったら今だよ」
「大丈夫ですー。朝はちゃんと食べてきたので。それより他に何かやることはありませんか?」
テーブルも拭き終えて店の前の掃除も終わってしまった。あとは何をしたらいいかな。
「実はもうやることってもうほとんどないんだよ。ケイくんとっても手際がいいね」
「じいちゃんの食堂もこんな感じでしたからね。ずっとやってたからこういうの慣れてるだけですよ」
ホランドさんは少し手を止めて考え込む。
「じゃあちょっとこっちの仕込みも手伝ってもらおうかな」
そう言ってホランドさんはメインの料理の仕込みの仕方を教えてくれる。
メインの料理といってもミナミのメニューはとてもシンプルだ。
お借りした店の包丁で唐揚げ用の鶏肉を切り分けていく。ちょっと大きめがいいみたい。
切り分けた鶏肉に満遍なく薄く塩をかけて、ボウルに入れていく。
ボウルに一杯になったら少し揉み込んでから、一度水で洗い流す。こうすると少し臭みがなくなるらしい。
そのあとは秘伝の塩ダレを鶏肉にかけ少し混ぜ合わせたら唐揚げの下準備はおしまい。
唐揚げは人気のメニューなのでひたすらそれをやる。
ホランドさんはスープを作るのに集中している。普段はスープを作りながら合間で唐揚げの仕込みをしていたから、とても助かるとホランドさんに言われた。
「ケイくん。そろそろ開店だから看板変えてきて」
準備中と書かれた看板を、営業中に変える。看板少し汚れてるな。明日きれいにしてみよう。並んでいるお客さんにできるだけ元気な声で声をかける。
「いらっしゃいませ!何名様ですか?」
定食屋ミナミの営業が始まった。
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