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 午前中は走り込みだ。
 魔力循環しながらゴードンさんの農場まで走った。
 僕のペースに合わせて、フェルがゆっくり走る。
 なぜゴードンさんの農場なのかというと、ホーンラビットを少し狩っておきたかったからだ。

 ゴードンさんちの農場に着くと、長男が畑を耕しているところだった。
 ホーンラビットを狩らせてくださいと言うと、喜んでクズ野菜をくれた。
 被害は減ったが、気を抜くとやられてしまっていたりするようだ。
 比較的被害の多いところを聞いてそのあたりで狩ることにした。
 柵がないけど、草むしりをして、狩り場を作る。長男が僕の魔法に驚いている。

「母さんが梅の塩漬けを渡したがってたから後で家に寄ってくれ」

 長男はニコラスさんという名前で、次男はエディ。次男のエディとは歳が近い。僕の一つ上だった。

 ニコラスさんは僕らにそう言って仕事に戻って行った。

 餌をばら撒いて狩りをする。
 やりすぎるなよ、とギルマスには言われたけれど、30分くらいで36匹のホーンラビットを狩ってしまった。弓で仕留めた方が素材の状態がいいので今日は弓を使って狩りをした。

 ゴードンさんの家に行ったらまた梅干しをたくさんもらってしまった。ほぼ毎日食べているから、けっこう助かる。今度何かお礼をしなくては。

 ニコラスさんとエディが僕がやってた土魔法のやり方を教えてくれというので教えてあげる。2人とも生活魔法はできるので、きっかけがつかめれば狭い範囲だけど土を柔らかくすることができた。
 実際に畑で土を触りながら、土を柔らかくするイメージを強く思うことが大事なんだというと、先にエディができるようになってニコラスさんも続いてできるようになった。毎日土を触っているからイメージするのが簡単だったのかも。
 
 魔力循環のやり方も教えて、毎日練習すればもっと広い範囲でできるようになると教えた。

 帰りも魔力循環しながら走って帰った。

 ギルドの食堂でお昼を食べて、僕は受付に、フェルは訓練場に行った。

 サリーさんを呼び出して依頼の話を聞く。

「ケイくんにちょうどいいかなって思ってとっておいたのよ」

 そう言ってサリーさんは依頼書を僕に渡す。
 依頼内容は南区の外れにある食堂の手伝いだった。
 奥さんが足を怪我してしまったので、その怪我が治るまでの数週間、食堂の手伝いをしてくれる人を探しているとのことだった。
 とりあえず期間は2週間、日曜日と月曜日は休みで銀貨20枚。1日銀貨2枚か。けっこういいかも。
 調理経験者に限ると但し書きが書いてあったので、サリーさんに村の食堂で働いていただけなんだけど大丈夫か聞く。

「あれだけ美味しいご飯が作れるんだもの、大丈夫よ」

 そう太鼓判を押された。

 とりあえず月曜日に面接に行くことにして、相手の都合のいい時間を問い合わせてもらうことにした。
 明日にはわかると思うとサリーさんは言っていた。
 そのあと今日狩ったホーンラビットをギルドに提出する。
 討伐報酬は変わらないが、素材の値段はしばらく値下げになるようだ、1匹銅貨5枚。状態がいいのに悪いなと、解体係の人に言われた。しょうがない。こないだあんなに狩ったからな。

 6匹分を肉にして受け取り、報酬は銀貨6枚にしてもらえた。解体も僕がやったから少し上乗せしてくれた。
 あの時一緒に遠征に行った解体係の人から、しばらくホーンラビットには触りたくないと思っていたから助かるとお礼を言われた。

 訓練場に行くと、ちょうどフェルが模擬戦をやっていた。だいぶ白熱しているようだったので、僕は弓の練習をして時間を潰した。

 いい訓練になったみたいで、フェルが嬉しそうだ。
 市場に行っていろいろ食材を買い込む。ゴードンさんのところであとで待ち合わせることにして、フェルと別れて1人でいろいろ見て回った。フェルはなにか買いたいものがあるらしい。

 ゴードンさんに野菜をもらって、代金を支払うとフェルが戻ってきた。毛糸かな?
 買ってきた荷物を受け取ってマジックバッグにしまう。

 そのあと少しだけ市場を2人で見て回り、ちょっと早い時間だけど公衆浴場に向かう。
 商業ギルドに行くのは今度時間がある時にすることにした。
 
 フェルの髪を乾かしながら、今日聞いた依頼のことをフェルに伝える。

「良い話ではないか。その仕事受けられるといいな。私のことは心配するな。実は私も少々やりたいことがあるのだ。冒険者の仕事は受ける頻度を少し減らそうと思う。遠征の報酬で少し余裕ができたからな」

 差し当たってこれから先のことはセシル姉さんに相談してみるらしい。姉さんの紹介ならおかしなパーティに当たることもないだろう。

 僕の面接がうまく行くかどうかもあるけど、来週は2人別々の仕事をすることになった。

 帰りにゼランドさんの商会で買い物をして、家に帰り夕飯を作る。

 食事の後は麦茶を淹れて、お砂糖を少し足してそれを飲んだ。

 王都に来てひと月過ぎた。いろいろあったねと、フェルと笑って話す。

 少しずつだけど前に進んでいるような気がする。野宿して、お金を貯めて。装備を揃えて。最初はほとんど一文なしだったもんな。
 でも頑張ってこれたのは隣にフェルがいたからだ。

 膝を抱えて座りこみ、テントの中から星を見上げるフェルの横顔はとてもきれいだった。

 僕の視線に気付いてフェルが僕を見る。

「やはりこの麦茶は美味しいな」

 そう言ってフェルは僕にやわらかく微笑んだ。

 













 
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