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ウサギ鍋再び
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66 ウサギ鍋再び
矢をつがえながらフェルの動きを観察する。フェルだって闇雲に剣を振っているわけではないと思うんだけど、剣術なんて習ったことない僕にはその動きの意味なんてわからなかった。
視点を少し変えよう。
前衛で戦っていた時はどんな攻撃が嫌だった?倒しにくいと感じたのはどんな状況だった?
複数の敵から同時に攻撃されるとやはり対処が苦しくなる。2体まではなんとかなっても3体になるとけっこうしんどい。
それと、様子見してタイミングを計っているような奴もやりにくい。警戒するだけでも集中力が必要だ。
要はそういう状況を作らなければいい。
フェルの代わりにいっぱい敵を倒す必要はないんだ。フェルは充分強いから。
フェルがやりやすい状況を僕が作ってやるつもりで狙うんだ。
フェルから離れて様子を伺ってるホーンラビットに向けて矢を放つ。
落ち着いて次の矢を構えフェルの左側に回り込んだ個体を狙う。
右側から2体のホーンラビット。一体を確実に矢で射抜く。
「ケイ。いいぞそんな感じでいい。ロラン!矢を回収しろ!できる範囲でいい」
「ケイ。左側の2匹、速射で当てろ!フェルは2歩下がれ、前に出過ぎだ。ケイが狙いにくい」
矢筒から矢がなくなったころ、ホーンラビットが少なくなってきた。
ロランさんがエサを追加でばら撒き、その後あたりのホーンラビットは全てフェルの手で狩られた。
「よし、こんなもんだな。フェル、お前はすぐ前に出る癖があるな。対応できるだけの実力があるのはわかるが、パーティで狩りをするならもう少し下がった方がいい。他の奴らが入る余地がなくなる」
汗を拭きながら息を整えているフェルが静かに頷く。
「さて、少し休憩したら飯にするか。ケイよろしく頼むぞ」
「ケイ、その弓を貸せ。少し見てやる。ところで俺の弓はどうした?なんで使わねーんだ?」
ライツが僕の自作の弓を調整してくれるらしい。
「ライツの弓は強力過ぎて、ホーンラビットだと矢が貫通してどっか行っちゃうんだ。加減が難しいんだよ。それにまだあの弓を何度も引けるほど体力がついてないし。あの弓だとほんとに狙ったとこに矢が飛んでいってすごく使いやすいんだけどね。だけど今の僕の力じゃ速射とかできないんだ」
ライツは少し嬉しそうだ。
「そりゃ俺の最高傑作だからな。そうか、ホーンラビット相手では逆に使いづらいか。そりゃそうかもしれんな」
ライツは僕が自作した弓を少し使いやすくしてやると言い、自分の馬車の方に向かって歩いて行った。
「さて、ケイ。昼飯はさぞ美味しいものを作ってくれるんだろうな。ロランの報告にあったぞ。鍋という料理が最高に美味かったと」
ギルマスがニヤリと笑いながら言う。
「フェル。昨日もおとといも食べた鍋だけどもう1回作ってもいいかな?ギルマスが食べたいんだって、もちろん前より美味しく作る自信はあるんだけど、いいかな?」
「私は構わない、と言うか、また食べたいぞ。あの鍋を食べたら不思議と次の日調子が良かった。いいな、あの料理は」
「そう、気に入ってくれたなら嬉しいよ。じゃあウサギ鍋作るね」
マルセルさんが解体をしている場所に行くと、すでにホーンラビットの骨から出汁を取ってくれていた。
「ギルマスの指示です」
マルセルさんが苦笑いする。
最初に捌いた方のホーンラビットの肉をもらって、スープを炊いている近くで調理を始める。
調理を始める前に近所の農家で野菜を分けてもらった。白菜かな?ずいぶん立派なものを出してもらった。
ホーンラビットの肉をお酒に漬け込んで揉み込んだら水洗いする。
マルセルさんが用意してくれた出汁に野菜を入れ、煮込む。
米を炊いて、すりつぶし、団子を作った。
前回はしっかりした味噌ベースの味付けだったけど、今回は醤油ベースの味付けにして、少し炒めたホーンラビットの肉を入れて、煮込んでいく。
米をすりつぶして作った団子も入れて味が染みてきたころに刻んだ梅干しを投入。
たしか米をすりつぶして団子にして鍋に入れるという郷土料理があったと思うが、味付けは完全にアドリブだ。
鍋だし、細かいルールは無いからなんとなく美味しいだろうなと思ったことを全部試してみた。
そろそろかな?と鍋の蓋を開ける。ぱぁっと梅の香りがして、その後美味しそうな肉の匂いと醤油の匂いが漂ってくる。
薄切りにしたネギを最後に入れて、鍋の蓋を閉じる。
追加で入れる食材と出来上がった鍋をテーブルに乗せて準備完了だ。
狩り場の方からみんながこっちに向かってくるのが見えた。
周辺を捜索して、撃ち漏らしたホーンラビットを駆除してきたみたい。
フェルがホーンラビットを数匹持っている。
「お、これがウサギ鍋というやつか。うまそうな匂いがするな」
ギルマスが食卓についてそう言った。
「そこに水を用意しているので、まずは手を洗ってきてください」
早く食べたいギルマスは渋々手を洗いに行く。
「ケイ!もしかして梅干しを入れたのか?」
すっかり梅干しが好物になったフェルが興奮気味に聞いてくる。
「前と同じだとみんなつまらないかなって思ったから、今日は創作鍋?っていうのかな、なんとなく美味しい組み合わせを考えて味付けしてみたんだけど。どうかな、とにかく食べてみてよ」
「こりゃうまいな。いくらでも食べられそうだ。微かに酸味があるのがいいな。食欲が出る」
ギルマスは待ちきれなかったのか座ってすぐに食べ始めている。
「ケイ。梅干しはこんな使い方もできるのか!私は好きだぞ、こういう味付け」
フェルも気に入ってくれたみたいだ。
「この前の料理もそうでしたが、いいですね。下ごしらえに手間がかかっているかと思いますが、具材を入れて煮込むだけですから、これはこの狩りの締めとしては良い料理かもしれませんね」
ロランさんが感心してそう言ってくる。
この後このホーンラビットの罠狩りは完全に僕の手を離れていくのだが、狩りの後はみんなで鍋を囲んでホーンラビットの肉を食べるというのが定番になったらしい。
ロランさんに、簡単に作れる鍋のレシピをいくつか渡したら、ホーンラビット狩りといえば鍋だと、すっかり定着してしまったそうだ。ギルドの予算で味噌まで購入しているらしい。
「ケイ。この米を丸めたものが良いな。汁を吸ってすこし崩れそうなところが美味い」
フェルが楽しそうに感想を伝えてくれる。
「流石に鍋料理が連続だと飽きてきちゃうよね」
「そんなことはないぞ!味付けを変えるだけでもはや別の料理だ。毎日だって私は平気だぞ」
「流石に毎日鍋だと飽きてきちゃうよ。王都に帰ったらまたなにか新しい料理を作るね。ガンツにいろいろ作ってもらったからもっといろんな料理に挑戦できると思うんだ」
「なに?そうか、フェルは毎日このケイの作る料理を食べているんだったな。ケイ。お前料理屋をやる気はないか?ギルドの近くの空き物件を探させてもいいぞ」
「そんな、店を出すなんて今の僕じゃ実力不足です。どこかのお店で料理の修行をして充分実力をつけてからじゃないと」
「そうか。そういえばたまにギルドの依頼で店の手伝いとか依頼がきてたりするな。試しにそういう依頼を受けてみればいい。サリー、もしそういう依頼があったらケイに教えてやれ」
すみっこで黙々と食べていたサリーさんが食べながら頷く。
その後後片付けをして、僕たちは王都に帰った。
王都には日が沈む前に着いて、疲れていた僕たちはお風呂にも行かずテントができたらその日はすぐに布団に入って眠った。
矢をつがえながらフェルの動きを観察する。フェルだって闇雲に剣を振っているわけではないと思うんだけど、剣術なんて習ったことない僕にはその動きの意味なんてわからなかった。
視点を少し変えよう。
前衛で戦っていた時はどんな攻撃が嫌だった?倒しにくいと感じたのはどんな状況だった?
複数の敵から同時に攻撃されるとやはり対処が苦しくなる。2体まではなんとかなっても3体になるとけっこうしんどい。
それと、様子見してタイミングを計っているような奴もやりにくい。警戒するだけでも集中力が必要だ。
要はそういう状況を作らなければいい。
フェルの代わりにいっぱい敵を倒す必要はないんだ。フェルは充分強いから。
フェルがやりやすい状況を僕が作ってやるつもりで狙うんだ。
フェルから離れて様子を伺ってるホーンラビットに向けて矢を放つ。
落ち着いて次の矢を構えフェルの左側に回り込んだ個体を狙う。
右側から2体のホーンラビット。一体を確実に矢で射抜く。
「ケイ。いいぞそんな感じでいい。ロラン!矢を回収しろ!できる範囲でいい」
「ケイ。左側の2匹、速射で当てろ!フェルは2歩下がれ、前に出過ぎだ。ケイが狙いにくい」
矢筒から矢がなくなったころ、ホーンラビットが少なくなってきた。
ロランさんがエサを追加でばら撒き、その後あたりのホーンラビットは全てフェルの手で狩られた。
「よし、こんなもんだな。フェル、お前はすぐ前に出る癖があるな。対応できるだけの実力があるのはわかるが、パーティで狩りをするならもう少し下がった方がいい。他の奴らが入る余地がなくなる」
汗を拭きながら息を整えているフェルが静かに頷く。
「さて、少し休憩したら飯にするか。ケイよろしく頼むぞ」
「ケイ、その弓を貸せ。少し見てやる。ところで俺の弓はどうした?なんで使わねーんだ?」
ライツが僕の自作の弓を調整してくれるらしい。
「ライツの弓は強力過ぎて、ホーンラビットだと矢が貫通してどっか行っちゃうんだ。加減が難しいんだよ。それにまだあの弓を何度も引けるほど体力がついてないし。あの弓だとほんとに狙ったとこに矢が飛んでいってすごく使いやすいんだけどね。だけど今の僕の力じゃ速射とかできないんだ」
ライツは少し嬉しそうだ。
「そりゃ俺の最高傑作だからな。そうか、ホーンラビット相手では逆に使いづらいか。そりゃそうかもしれんな」
ライツは僕が自作した弓を少し使いやすくしてやると言い、自分の馬車の方に向かって歩いて行った。
「さて、ケイ。昼飯はさぞ美味しいものを作ってくれるんだろうな。ロランの報告にあったぞ。鍋という料理が最高に美味かったと」
ギルマスがニヤリと笑いながら言う。
「フェル。昨日もおとといも食べた鍋だけどもう1回作ってもいいかな?ギルマスが食べたいんだって、もちろん前より美味しく作る自信はあるんだけど、いいかな?」
「私は構わない、と言うか、また食べたいぞ。あの鍋を食べたら不思議と次の日調子が良かった。いいな、あの料理は」
「そう、気に入ってくれたなら嬉しいよ。じゃあウサギ鍋作るね」
マルセルさんが解体をしている場所に行くと、すでにホーンラビットの骨から出汁を取ってくれていた。
「ギルマスの指示です」
マルセルさんが苦笑いする。
最初に捌いた方のホーンラビットの肉をもらって、スープを炊いている近くで調理を始める。
調理を始める前に近所の農家で野菜を分けてもらった。白菜かな?ずいぶん立派なものを出してもらった。
ホーンラビットの肉をお酒に漬け込んで揉み込んだら水洗いする。
マルセルさんが用意してくれた出汁に野菜を入れ、煮込む。
米を炊いて、すりつぶし、団子を作った。
前回はしっかりした味噌ベースの味付けだったけど、今回は醤油ベースの味付けにして、少し炒めたホーンラビットの肉を入れて、煮込んでいく。
米をすりつぶして作った団子も入れて味が染みてきたころに刻んだ梅干しを投入。
たしか米をすりつぶして団子にして鍋に入れるという郷土料理があったと思うが、味付けは完全にアドリブだ。
鍋だし、細かいルールは無いからなんとなく美味しいだろうなと思ったことを全部試してみた。
そろそろかな?と鍋の蓋を開ける。ぱぁっと梅の香りがして、その後美味しそうな肉の匂いと醤油の匂いが漂ってくる。
薄切りにしたネギを最後に入れて、鍋の蓋を閉じる。
追加で入れる食材と出来上がった鍋をテーブルに乗せて準備完了だ。
狩り場の方からみんながこっちに向かってくるのが見えた。
周辺を捜索して、撃ち漏らしたホーンラビットを駆除してきたみたい。
フェルがホーンラビットを数匹持っている。
「お、これがウサギ鍋というやつか。うまそうな匂いがするな」
ギルマスが食卓についてそう言った。
「そこに水を用意しているので、まずは手を洗ってきてください」
早く食べたいギルマスは渋々手を洗いに行く。
「ケイ!もしかして梅干しを入れたのか?」
すっかり梅干しが好物になったフェルが興奮気味に聞いてくる。
「前と同じだとみんなつまらないかなって思ったから、今日は創作鍋?っていうのかな、なんとなく美味しい組み合わせを考えて味付けしてみたんだけど。どうかな、とにかく食べてみてよ」
「こりゃうまいな。いくらでも食べられそうだ。微かに酸味があるのがいいな。食欲が出る」
ギルマスは待ちきれなかったのか座ってすぐに食べ始めている。
「ケイ。梅干しはこんな使い方もできるのか!私は好きだぞ、こういう味付け」
フェルも気に入ってくれたみたいだ。
「この前の料理もそうでしたが、いいですね。下ごしらえに手間がかかっているかと思いますが、具材を入れて煮込むだけですから、これはこの狩りの締めとしては良い料理かもしれませんね」
ロランさんが感心してそう言ってくる。
この後このホーンラビットの罠狩りは完全に僕の手を離れていくのだが、狩りの後はみんなで鍋を囲んでホーンラビットの肉を食べるというのが定番になったらしい。
ロランさんに、簡単に作れる鍋のレシピをいくつか渡したら、ホーンラビット狩りといえば鍋だと、すっかり定着してしまったそうだ。ギルドの予算で味噌まで購入しているらしい。
「ケイ。この米を丸めたものが良いな。汁を吸ってすこし崩れそうなところが美味い」
フェルが楽しそうに感想を伝えてくれる。
「流石に鍋料理が連続だと飽きてきちゃうよね」
「そんなことはないぞ!味付けを変えるだけでもはや別の料理だ。毎日だって私は平気だぞ」
「流石に毎日鍋だと飽きてきちゃうよ。王都に帰ったらまたなにか新しい料理を作るね。ガンツにいろいろ作ってもらったからもっといろんな料理に挑戦できると思うんだ」
「なに?そうか、フェルは毎日このケイの作る料理を食べているんだったな。ケイ。お前料理屋をやる気はないか?ギルドの近くの空き物件を探させてもいいぞ」
「そんな、店を出すなんて今の僕じゃ実力不足です。どこかのお店で料理の修行をして充分実力をつけてからじゃないと」
「そうか。そういえばたまにギルドの依頼で店の手伝いとか依頼がきてたりするな。試しにそういう依頼を受けてみればいい。サリー、もしそういう依頼があったらケイに教えてやれ」
すみっこで黙々と食べていたサリーさんが食べながら頷く。
その後後片付けをして、僕たちは王都に帰った。
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