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王都の母
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41 王都の母
私はエリーさんに促されるまま、男子禁制だというその部屋にはいる。
その部屋に入って私はひどくうろたえた。
「な、な、なんだこの部屋は、エリー殿、こ、この部屋は一体?」
女性の裸の身体を模した人形が、下着を履いてあらゆる場所に配置されている。手足と首は切られ、必要な部分だけ強調されている。
「フェルちゃん。わたしのことはエリーさんか、お母さんって呼んでね。エリー殿なんて呼ばれるのって、ほんと嫌なんだから。主人と初めて会った時も、まずそこから矯正したのよ。可愛くないんだもん。殿、なんてもう嫌、あ、様づけも嫌よ。そんなのもうたくさん。20年以上もそうよばれてたんだもん。私は今はただの平民。昔はいいところの貴族の娘だったけどね。主人と初めて会った時、この人だっ!て思って、電気が走ったわ。主人には私から迫ったの。結婚した時にはお腹にもう子供がいたわ。結婚するまではちょっと大変だったけど。両親は2人とも亡くなっていてね。歳の離れた兄が親代わりだった。その兄が激怒しちゃって。まあ最後はしぶしぶ許してくれたけど」
エリーさんが当時のことを思い出しながら少しはにかんだような顔をする。本当に魅力的な女性だ。私もいつかこういう風になれるだろうか?
「主人と出会ったのは22の時よ、世間ではもう行き遅れよね。でもあのまま家にいたら兄の勧めるままに、顔も知らない誰かと結婚させられちゃうと思ったの。そして主人との大恋愛の末、兄を説得して、ようやく結婚できたのよ。燃えたわーあの時は、隠れて逢瀬を繰り返して、宿には泊まれないからこっそり家を用意したりして。今思えば楽しかったわ。くっつくかくっつかないかギリギリのところがまた燃えるのよね。ても結局2人とも欲望に負けちゃって結婚する前に妊娠してしまったんだけど」
話を聞いているとどんどん顔が赤くなってしまう。
「かわいい下着は大切よ。誰かに見せるつもりがなくってもね。お気に入りの下着を身に着けているとなんだか自信が持てるの。そしたら歩き方も、表情にもそれが影響して、女の子ってどんどん美しくなれるのよ。お肌の調子だって良くなるんだから。主人と結婚して、しばらくして子供も手がかからなくなったら、わたしもなにか商売をしたくなってね。最初は何か主人の役に立つことがしたかったの。主人にお願いしてまず初めにやった商売は、この下着を売る仕事よ。すごく仲良くしてたお友だちがいてね。わたしも完成したら私も買いたいからって言って、いろいろ教えてくれて試作品をたくさん作って研究したの。主人も私を応援してくれて、わざわざ肌に合う布を作ってくれたりして」
エリーさんは話しながら、先ほどと同じような作りの試着室に私を誘導した。
「さぁフェルちゃん。ちょっと上を脱いでくれる?あー、まだワンピースだったわね。下も下着になった方が採寸しやすいから、そこで脱いで待ってて?ちょっと長さ測るもの持ってくるわ」
そう言われてその広めの試着室で服を脱ぐ。胸当てを外すのは少し恥ずかしかったが、それも外してエリーさんがくるのを待つ。
エリーさんが外からわたしに声をかけてから試着室の扉を開けて、入ってすぐ扉を閉めた。
「あら、フェルちゃん意外と胸があるのね。ケイくん運がいいわ。きっと喜ぶわよ。じゃあ採寸していくわね。力を抜いて気持ちを落ち着けて楽にしてて」
そう言って私のお尻と、お腹周りと胸は場所を変えて2回、布製の長いリボンのような物で測っていく。
「あーこれだとあの服、胸がちょっときつかったんじゃない?ごめんねー。サイズに合った物、出し直すわ。それにしても若いっていいわよね、肌もこんなに綺麗。うらやましいわー、全く。えいっ」
そう言ってエリーさんが私の胸の先端を軽く指で弾く。
急な衝撃に思わず身体がピクンと反応してしまう。
声が出そうなのは懸命にこらえた。
「そのままでちょっと待っててくれる?寒くない?暖房の魔道具ちょっと強くしてくるわね」
そう笑顔で言ってエリーさんは5分ほどして戻ってきた。
「はい、これ、付け方も教えるわね。こうして、こうやって、そう、それで身体ごと下に向けてね。そう。そうやって胸のお肉を寄せるの。そうそう。上手よ」
言われるがまま、ブラジャーというらしい下着を私は身につけた。
「はい、そうよ。身体を起こして、少し胸を張ってごらんなさい。そしてあの鏡を見て、いい?おどろくわよー」
振り向いて鏡を見ると、女性らしい柔らかな姿をした私がいた。母のような美しい体型になっている。
言葉を失って私が固まっているとエリーさんが笑顔で言う。
「初めてこの下着を友達に貸してもらってつけた時、わたしもあなたとおんなじ反応をしたわ。すごいでしょ。なんだか自信がついてこない?」
「これならケイも!、私のことを……私で……いや、なんでもないのだ。エリー……さん……もし許されるならエリーと呼んでもいいだろうか?もう二度と会えないかもしれないが、私には母がいる。母に心配をかけておいて、ここでエリーさんをお母さんと呼ぶのはちょっと心苦しいのだ。せめてエリーと呼び捨てにさせてもらって、友人としてこれからも私と親しくして欲しい。どうだろうか?」
私がそう言うとエリーさんは嬉しそうに笑顔になって、
「エリーって呼ばれるのもまだ何か他人行儀だわ。なんか使用人みたいじゃない。ねえ、エリママっていうのはどう?遠い国の言葉で母親のことをママって呼ぶらしいの。エリーママは言いにくいからエリママ。私はほんとのお母さんになってあげたいと思ってるけど、たとえ会えなくたってまだフェルちゃんのお母様は生きていらっしゃるのだから、フェルちゃんが言ってることはよくわかるわ。王都でのお母さんがわりだと思って、これからなんでも相談して。うちの店でお買い物しなくても、そんなのどうでもいいから、いつでも、顔を見せにきてちょうだい」
そう言ってエリママは下着姿の私を優しく抱きしめて私の頭を撫でた。
エリママは私の実の母のような香りがして、私はもう二度と会うことができないであろう、故郷の母のことを想った。
「わたしも両親が亡くなったあと、父の側室をお母さんって思ったこと一度もなかったもん。お母さんって呼びたいのはやっぱりこの世で1人だけ。よくわかるわー、その気持ち」
エリママはわたしに優しく語りかける。
3男に感じが似ている。やはり親子なのだな。一度話し出すと会話をとめにくい。
そのあと5種類、エリママは下着を持ってきて、私はその中でも比較的質素なものを3つ選んだ。エリママはこんなのもいいと思うわ、と、少し色使いが官能的なものを持ってくるが、私はそれを顔を真っ赤にしてそれを断る。
「どれもケイくんの好きそうな感じのデザインばかりね、いいと思うわ。でもこれだけだとなんだかさみしいわね」
そう言ってエリママは別の下着をさがしにいく。戻ってきたエリママは、私に薄手の下着を渡してきた。
「これはわたしからのプレゼント。お代はいただかないわ」
そう言って仕立ての良い下着を私に渡す。
着けてみると、少し、いや、かなりいやらしい。というかもうほとんど透けているではないか。隠したい大事なところが。
しかしこの下着はこんな貧相な私の体でも魅力的に、そして官能的にみせてくれる、まるで魔女にでもなったみたいだ。私はその下着をとても気に入った。ケイには恥ずかしくて絶対知られたくないのだが。
これは勝負下着というらしい。ここぞと思ったら着るそうだ。
女の戦いのための大切な鎧らしい。
半分くらいしか私にはエリママの言ってることがわからなかったのだけど。
そのあと寝るときの服装をエリママと選ぶ。
なんでも、女性の着る服で一番重要な服装は、華麗なアフタヌーンドレスや、美しい誰もが目を引くイブニングドレスでもなく。
愛しい人と眠る時に着るそのパジャマという衣装が一番大切なのだそうだ。
エリママは透け透けの衣装を勧めてきたが、なんとかそれを拒否して、いろいろとダメ出しされる中、私は少し薄手の白のパジャマを選んだ。しぶしぶではあったがエリママの許可も出たのでそれに決めた。
「いい?寝る前にできる限り自然にその服を着るのよ。あとは堂々としてなさい。絶対にこのパジャマが似合ってるとか聞いちゃダメよ。向こうから聞いてくるまで説明したらダメ。あと寝る時は上の下着は外しなさい。締め付けすぎるのも良くないし、その方がいろいろ都合がいいから」
その都合がいいというのはよくわからなかったが、私は王都の母であるエリママを見つめて頷いた。
私はエリーさんに促されるまま、男子禁制だというその部屋にはいる。
その部屋に入って私はひどくうろたえた。
「な、な、なんだこの部屋は、エリー殿、こ、この部屋は一体?」
女性の裸の身体を模した人形が、下着を履いてあらゆる場所に配置されている。手足と首は切られ、必要な部分だけ強調されている。
「フェルちゃん。わたしのことはエリーさんか、お母さんって呼んでね。エリー殿なんて呼ばれるのって、ほんと嫌なんだから。主人と初めて会った時も、まずそこから矯正したのよ。可愛くないんだもん。殿、なんてもう嫌、あ、様づけも嫌よ。そんなのもうたくさん。20年以上もそうよばれてたんだもん。私は今はただの平民。昔はいいところの貴族の娘だったけどね。主人と初めて会った時、この人だっ!て思って、電気が走ったわ。主人には私から迫ったの。結婚した時にはお腹にもう子供がいたわ。結婚するまではちょっと大変だったけど。両親は2人とも亡くなっていてね。歳の離れた兄が親代わりだった。その兄が激怒しちゃって。まあ最後はしぶしぶ許してくれたけど」
エリーさんが当時のことを思い出しながら少しはにかんだような顔をする。本当に魅力的な女性だ。私もいつかこういう風になれるだろうか?
「主人と出会ったのは22の時よ、世間ではもう行き遅れよね。でもあのまま家にいたら兄の勧めるままに、顔も知らない誰かと結婚させられちゃうと思ったの。そして主人との大恋愛の末、兄を説得して、ようやく結婚できたのよ。燃えたわーあの時は、隠れて逢瀬を繰り返して、宿には泊まれないからこっそり家を用意したりして。今思えば楽しかったわ。くっつくかくっつかないかギリギリのところがまた燃えるのよね。ても結局2人とも欲望に負けちゃって結婚する前に妊娠してしまったんだけど」
話を聞いているとどんどん顔が赤くなってしまう。
「かわいい下着は大切よ。誰かに見せるつもりがなくってもね。お気に入りの下着を身に着けているとなんだか自信が持てるの。そしたら歩き方も、表情にもそれが影響して、女の子ってどんどん美しくなれるのよ。お肌の調子だって良くなるんだから。主人と結婚して、しばらくして子供も手がかからなくなったら、わたしもなにか商売をしたくなってね。最初は何か主人の役に立つことがしたかったの。主人にお願いしてまず初めにやった商売は、この下着を売る仕事よ。すごく仲良くしてたお友だちがいてね。わたしも完成したら私も買いたいからって言って、いろいろ教えてくれて試作品をたくさん作って研究したの。主人も私を応援してくれて、わざわざ肌に合う布を作ってくれたりして」
エリーさんは話しながら、先ほどと同じような作りの試着室に私を誘導した。
「さぁフェルちゃん。ちょっと上を脱いでくれる?あー、まだワンピースだったわね。下も下着になった方が採寸しやすいから、そこで脱いで待ってて?ちょっと長さ測るもの持ってくるわ」
そう言われてその広めの試着室で服を脱ぐ。胸当てを外すのは少し恥ずかしかったが、それも外してエリーさんがくるのを待つ。
エリーさんが外からわたしに声をかけてから試着室の扉を開けて、入ってすぐ扉を閉めた。
「あら、フェルちゃん意外と胸があるのね。ケイくん運がいいわ。きっと喜ぶわよ。じゃあ採寸していくわね。力を抜いて気持ちを落ち着けて楽にしてて」
そう言って私のお尻と、お腹周りと胸は場所を変えて2回、布製の長いリボンのような物で測っていく。
「あーこれだとあの服、胸がちょっときつかったんじゃない?ごめんねー。サイズに合った物、出し直すわ。それにしても若いっていいわよね、肌もこんなに綺麗。うらやましいわー、全く。えいっ」
そう言ってエリーさんが私の胸の先端を軽く指で弾く。
急な衝撃に思わず身体がピクンと反応してしまう。
声が出そうなのは懸命にこらえた。
「そのままでちょっと待っててくれる?寒くない?暖房の魔道具ちょっと強くしてくるわね」
そう笑顔で言ってエリーさんは5分ほどして戻ってきた。
「はい、これ、付け方も教えるわね。こうして、こうやって、そう、それで身体ごと下に向けてね。そう。そうやって胸のお肉を寄せるの。そうそう。上手よ」
言われるがまま、ブラジャーというらしい下着を私は身につけた。
「はい、そうよ。身体を起こして、少し胸を張ってごらんなさい。そしてあの鏡を見て、いい?おどろくわよー」
振り向いて鏡を見ると、女性らしい柔らかな姿をした私がいた。母のような美しい体型になっている。
言葉を失って私が固まっているとエリーさんが笑顔で言う。
「初めてこの下着を友達に貸してもらってつけた時、わたしもあなたとおんなじ反応をしたわ。すごいでしょ。なんだか自信がついてこない?」
「これならケイも!、私のことを……私で……いや、なんでもないのだ。エリー……さん……もし許されるならエリーと呼んでもいいだろうか?もう二度と会えないかもしれないが、私には母がいる。母に心配をかけておいて、ここでエリーさんをお母さんと呼ぶのはちょっと心苦しいのだ。せめてエリーと呼び捨てにさせてもらって、友人としてこれからも私と親しくして欲しい。どうだろうか?」
私がそう言うとエリーさんは嬉しそうに笑顔になって、
「エリーって呼ばれるのもまだ何か他人行儀だわ。なんか使用人みたいじゃない。ねえ、エリママっていうのはどう?遠い国の言葉で母親のことをママって呼ぶらしいの。エリーママは言いにくいからエリママ。私はほんとのお母さんになってあげたいと思ってるけど、たとえ会えなくたってまだフェルちゃんのお母様は生きていらっしゃるのだから、フェルちゃんが言ってることはよくわかるわ。王都でのお母さんがわりだと思って、これからなんでも相談して。うちの店でお買い物しなくても、そんなのどうでもいいから、いつでも、顔を見せにきてちょうだい」
そう言ってエリママは下着姿の私を優しく抱きしめて私の頭を撫でた。
エリママは私の実の母のような香りがして、私はもう二度と会うことができないであろう、故郷の母のことを想った。
「わたしも両親が亡くなったあと、父の側室をお母さんって思ったこと一度もなかったもん。お母さんって呼びたいのはやっぱりこの世で1人だけ。よくわかるわー、その気持ち」
エリママはわたしに優しく語りかける。
3男に感じが似ている。やはり親子なのだな。一度話し出すと会話をとめにくい。
そのあと5種類、エリママは下着を持ってきて、私はその中でも比較的質素なものを3つ選んだ。エリママはこんなのもいいと思うわ、と、少し色使いが官能的なものを持ってくるが、私はそれを顔を真っ赤にしてそれを断る。
「どれもケイくんの好きそうな感じのデザインばかりね、いいと思うわ。でもこれだけだとなんだかさみしいわね」
そう言ってエリママは別の下着をさがしにいく。戻ってきたエリママは、私に薄手の下着を渡してきた。
「これはわたしからのプレゼント。お代はいただかないわ」
そう言って仕立ての良い下着を私に渡す。
着けてみると、少し、いや、かなりいやらしい。というかもうほとんど透けているではないか。隠したい大事なところが。
しかしこの下着はこんな貧相な私の体でも魅力的に、そして官能的にみせてくれる、まるで魔女にでもなったみたいだ。私はその下着をとても気に入った。ケイには恥ずかしくて絶対知られたくないのだが。
これは勝負下着というらしい。ここぞと思ったら着るそうだ。
女の戦いのための大切な鎧らしい。
半分くらいしか私にはエリママの言ってることがわからなかったのだけど。
そのあと寝るときの服装をエリママと選ぶ。
なんでも、女性の着る服で一番重要な服装は、華麗なアフタヌーンドレスや、美しい誰もが目を引くイブニングドレスでもなく。
愛しい人と眠る時に着るそのパジャマという衣装が一番大切なのだそうだ。
エリママは透け透けの衣装を勧めてきたが、なんとかそれを拒否して、いろいろとダメ出しされる中、私は少し薄手の白のパジャマを選んだ。しぶしぶではあったがエリママの許可も出たのでそれに決めた。
「いい?寝る前にできる限り自然にその服を着るのよ。あとは堂々としてなさい。絶対にこのパジャマが似合ってるとか聞いちゃダメよ。向こうから聞いてくるまで説明したらダメ。あと寝る時は上の下着は外しなさい。締め付けすぎるのも良くないし、その方がいろいろ都合がいいから」
その都合がいいというのはよくわからなかったが、私は王都の母であるエリママを見つめて頷いた。
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