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 4 箸

 家に着いたらもう夜だった。
 じいちゃんの仕事を手伝いながら、今日の僕たちの夕飯を作る。

 ニワトリの骨で出汁を取り。作り置きのトマトソースを使ってスープを作る。
 せっかく貴重なニワトリを潰したのだから、今日は豪勢な夕食にしよう。
 お客様もいることだし。

 精米したお米を水で洗ってご飯を炊く。

 そう、お米があるのだ。

 沼地に生える繁殖力の強い品種で、主に家畜の餌に使われる。
 年に3回くらい収穫できるので村ではけっこう備蓄がある。
 餌として与えるときは籾ずりをして玄米の状態にするので、それをもらってきて精米するのだ。
 手作業なので量はあまり作れないけど、じいちゃんも僕も好きで、たまに食べている。
 村の人は家畜の餌なんて、と言って食べないのだけど。

 僕たちは村の中でも少し浮いている。
 大部分は僕のせいなんだけど、理由の一つはじいちゃんと僕が、村にはいない黒い髪をしているからだ。

 じいちゃんは王国から東の方にある島国の出身なんだそうだ。
 東の国ではお米も普通に食べてられていて、精米の仕方はじいちゃんから教えてもらった。ツボに何度も太めの棒を突き刺して糠を取り除くのだ。
 取り除いた糠は洗い物や洗濯に使っている。

 ご飯が炊けるまでの空いた時間でフェリシアさんの服を洗濯した。下着を洗うのは恥ずかしかったけど、なるべく見ないようにして丁寧に洗った。

 フェリシアさんってそういうの気にしないのかな?騎士団って男社会だからな、いちいち気にしてられなかったのかも。

 厨房に戻ったらじいちゃんがお米を炊いてた鍋の火を止めてくれていた。

「ちょうど炊けたとこだぞ、ケイ」

 じいちゃんが教えてくれた。

 ニワトリのモモ肉をソテーにする。
 味付けは塩と森で採取した胡椒を使う。
 胡椒の作り方は前世の記憶の中にあった。
 運良く胡椒を見つけたのは、母さんが胡椒を薬の材料にしていたからだ。
 最後のお客さんが帰ったので、フェリシアさんを呼んで夕食にする。

 フェリシアさんにはナイフとフォーク、僕とじいちゃんは箸で食べる。

 お椀に入れたスープを食べにくそうにしているので、慌ててスプーンを持ってきた。

「ごめんね、普段あまり使わないから忘れてたよ」

「そのケイが使ってるその2本の棒はなんなのだ?ずいぶん器用に使っているが」

「これは箸って言うんだ。慣れたらこっちの方が使いやすいよ。でも村の中で使ってるのは僕たちくらいなんだけどね」

 フェリシアさんが使ってみたいと言うので箸を渡して使い方を教える。
 意外に器用なのか、ぎこちないけれどうまく箸で美味しそうに食べている。

「このごはんというのも美味いな。家畜の餌だと思っていたが、こうやって食べたのは初めてだ。この村ではこうやって食べるのが普通なのか?」

「これも僕たちだけだよ。美味しいでしょ。じいちゃんが昔住んでた国ではこういうふうにして普通に食べてたんだ。作るのがちょっと面倒くさいから、たまにしか食べないけど、今日はご馳走だから作ってみようと思って」

「なんと、これはケイが作ったのか?こんなに美味いものは久しぶりに食べた。ケイは料理が上手なのだな」

 真っ直ぐに見つめられて褒められると照れてしまう。
 だってフェリシアさんすごい美人なんだもの。

 あっという間に料理はなくなり、フェリシアさんは「貴重な鳥をつぶしてしまって申し訳ない。この恩は一生忘れない」そう言って頭を下げた。

 困った時はお互い様だから気にしなくていいと伝えれば、恩返しに何かうちの仕事の手伝いをさせてくれとフェリシアさんが言い出す。

 うーん。それなんだけどね。
 実はちょっと困っているんだ。













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