4 / 236
箸
しおりを挟む
4 箸
家に着いたらもう夜だった。
じいちゃんの仕事を手伝いながら、今日の僕たちの夕飯を作る。
ニワトリの骨で出汁を取り。作り置きのトマトソースを使ってスープを作る。
せっかく貴重なニワトリを潰したのだから、今日は豪勢な夕食にしよう。
お客様もいることだし。
精米したお米を水で洗ってご飯を炊く。
そう、お米があるのだ。
沼地に生える繁殖力の強い品種で、主に家畜の餌に使われる。
年に3回くらい収穫できるので村ではけっこう備蓄がある。
餌として与えるときは籾ずりをして玄米の状態にするので、それをもらってきて精米するのだ。
手作業なので量はあまり作れないけど、じいちゃんも僕も好きで、たまに食べている。
村の人は家畜の餌なんて、と言って食べないのだけど。
僕たちは村の中でも少し浮いている。
大部分は僕のせいなんだけど、理由の一つはじいちゃんと僕が、村にはいない黒い髪をしているからだ。
じいちゃんは王国から東の方にある島国の出身なんだそうだ。
東の国ではお米も普通に食べてられていて、精米の仕方はじいちゃんから教えてもらった。ツボに何度も太めの棒を突き刺して糠を取り除くのだ。
取り除いた糠は洗い物や洗濯に使っている。
ご飯が炊けるまでの空いた時間でフェリシアさんの服を洗濯した。下着を洗うのは恥ずかしかったけど、なるべく見ないようにして丁寧に洗った。
フェリシアさんってそういうの気にしないのかな?騎士団って男社会だからな、いちいち気にしてられなかったのかも。
厨房に戻ったらじいちゃんがお米を炊いてた鍋の火を止めてくれていた。
「ちょうど炊けたとこだぞ、ケイ」
じいちゃんが教えてくれた。
ニワトリのモモ肉をソテーにする。
味付けは塩と森で採取した胡椒を使う。
胡椒の作り方は前世の記憶の中にあった。
運良く胡椒を見つけたのは、母さんが胡椒を薬の材料にしていたからだ。
最後のお客さんが帰ったので、フェリシアさんを呼んで夕食にする。
フェリシアさんにはナイフとフォーク、僕とじいちゃんは箸で食べる。
お椀に入れたスープを食べにくそうにしているので、慌ててスプーンを持ってきた。
「ごめんね、普段あまり使わないから忘れてたよ」
「そのケイが使ってるその2本の棒はなんなのだ?ずいぶん器用に使っているが」
「これは箸って言うんだ。慣れたらこっちの方が使いやすいよ。でも村の中で使ってるのは僕たちくらいなんだけどね」
フェリシアさんが使ってみたいと言うので箸を渡して使い方を教える。
意外に器用なのか、ぎこちないけれどうまく箸で美味しそうに食べている。
「このごはんというのも美味いな。家畜の餌だと思っていたが、こうやって食べたのは初めてだ。この村ではこうやって食べるのが普通なのか?」
「これも僕たちだけだよ。美味しいでしょ。じいちゃんが昔住んでた国ではこういうふうにして普通に食べてたんだ。作るのがちょっと面倒くさいから、たまにしか食べないけど、今日はご馳走だから作ってみようと思って」
「なんと、これはケイが作ったのか?こんなに美味いものは久しぶりに食べた。ケイは料理が上手なのだな」
真っ直ぐに見つめられて褒められると照れてしまう。
だってフェリシアさんすごい美人なんだもの。
あっという間に料理はなくなり、フェリシアさんは「貴重な鳥をつぶしてしまって申し訳ない。この恩は一生忘れない」そう言って頭を下げた。
困った時はお互い様だから気にしなくていいと伝えれば、恩返しに何かうちの仕事の手伝いをさせてくれとフェリシアさんが言い出す。
うーん。それなんだけどね。
実はちょっと困っているんだ。
家に着いたらもう夜だった。
じいちゃんの仕事を手伝いながら、今日の僕たちの夕飯を作る。
ニワトリの骨で出汁を取り。作り置きのトマトソースを使ってスープを作る。
せっかく貴重なニワトリを潰したのだから、今日は豪勢な夕食にしよう。
お客様もいることだし。
精米したお米を水で洗ってご飯を炊く。
そう、お米があるのだ。
沼地に生える繁殖力の強い品種で、主に家畜の餌に使われる。
年に3回くらい収穫できるので村ではけっこう備蓄がある。
餌として与えるときは籾ずりをして玄米の状態にするので、それをもらってきて精米するのだ。
手作業なので量はあまり作れないけど、じいちゃんも僕も好きで、たまに食べている。
村の人は家畜の餌なんて、と言って食べないのだけど。
僕たちは村の中でも少し浮いている。
大部分は僕のせいなんだけど、理由の一つはじいちゃんと僕が、村にはいない黒い髪をしているからだ。
じいちゃんは王国から東の方にある島国の出身なんだそうだ。
東の国ではお米も普通に食べてられていて、精米の仕方はじいちゃんから教えてもらった。ツボに何度も太めの棒を突き刺して糠を取り除くのだ。
取り除いた糠は洗い物や洗濯に使っている。
ご飯が炊けるまでの空いた時間でフェリシアさんの服を洗濯した。下着を洗うのは恥ずかしかったけど、なるべく見ないようにして丁寧に洗った。
フェリシアさんってそういうの気にしないのかな?騎士団って男社会だからな、いちいち気にしてられなかったのかも。
厨房に戻ったらじいちゃんがお米を炊いてた鍋の火を止めてくれていた。
「ちょうど炊けたとこだぞ、ケイ」
じいちゃんが教えてくれた。
ニワトリのモモ肉をソテーにする。
味付けは塩と森で採取した胡椒を使う。
胡椒の作り方は前世の記憶の中にあった。
運良く胡椒を見つけたのは、母さんが胡椒を薬の材料にしていたからだ。
最後のお客さんが帰ったので、フェリシアさんを呼んで夕食にする。
フェリシアさんにはナイフとフォーク、僕とじいちゃんは箸で食べる。
お椀に入れたスープを食べにくそうにしているので、慌ててスプーンを持ってきた。
「ごめんね、普段あまり使わないから忘れてたよ」
「そのケイが使ってるその2本の棒はなんなのだ?ずいぶん器用に使っているが」
「これは箸って言うんだ。慣れたらこっちの方が使いやすいよ。でも村の中で使ってるのは僕たちくらいなんだけどね」
フェリシアさんが使ってみたいと言うので箸を渡して使い方を教える。
意外に器用なのか、ぎこちないけれどうまく箸で美味しそうに食べている。
「このごはんというのも美味いな。家畜の餌だと思っていたが、こうやって食べたのは初めてだ。この村ではこうやって食べるのが普通なのか?」
「これも僕たちだけだよ。美味しいでしょ。じいちゃんが昔住んでた国ではこういうふうにして普通に食べてたんだ。作るのがちょっと面倒くさいから、たまにしか食べないけど、今日はご馳走だから作ってみようと思って」
「なんと、これはケイが作ったのか?こんなに美味いものは久しぶりに食べた。ケイは料理が上手なのだな」
真っ直ぐに見つめられて褒められると照れてしまう。
だってフェリシアさんすごい美人なんだもの。
あっという間に料理はなくなり、フェリシアさんは「貴重な鳥をつぶしてしまって申し訳ない。この恩は一生忘れない」そう言って頭を下げた。
困った時はお互い様だから気にしなくていいと伝えれば、恩返しに何かうちの仕事の手伝いをさせてくれとフェリシアさんが言い出す。
うーん。それなんだけどね。
実はちょっと困っているんだ。
104
お気に入りに追加
236
あなたにおすすめの小説
姫騎士様と二人旅、何も起きないはずもなく……
踊りまんぼう
ファンタジー
主人公であるセイは異世界転生者であるが、地味な生活を送っていた。 そんな中、昔パーティを組んだことのある仲間に誘われてとある依頼に参加したのだが……。 *表題の二人旅は第09話からです
(カクヨム、小説家になろうでも公開中です)
異世界で婚活したら、とんでもないのが釣れちゃった?!
家具付
恋愛
五年前に、異世界に落っこちてしまった少女スナゴ。受け入れてくれた村にすっかりなじんだ頃、近隣の村の若い人々が集まる婚活に誘われる。一度は行ってみるべきという勧めを受けて行ってみたそこで出会ったのは……?
多種多様な獣人が暮らす異世界でおくる、のんびりほのぼのな求婚ライフ!の、はずだったのに。
異世界道中ゆめうつつ! 転生したら虚弱令嬢でした。チート能力なしでたのしい健康スローライフ!
マーニー
ファンタジー
※ほのぼの日常系です
病弱で閉鎖的な生活を送る、伯爵令嬢の美少女ニコル(10歳)。対して、亡くなった両親が残した借金地獄から抜け出すため、忙殺状態の限界社会人サラ(22歳)。
ある日、同日同時刻に、体力の限界で息を引き取った2人だったが、なんとサラはニコルの体に転生していたのだった。
「こういうときって、神様のチート能力とかあるんじゃないのぉ?涙」
異世界転生お約束の神様登場も特別スキルもなく、ただただ、不健康でひ弱な美少女に転生してしまったサラ。
「せっかく忙殺の日々から解放されたんだから…楽しむしかない。ぜっっったいにスローライフを満喫する!」
―――異世界と健康への不安が募りつつ
憧れのスローライフ実現のためまずは健康体になることを決意したが、果たしてどうなるのか?
魔法に魔物、お貴族様。
夢と現実の狭間のような日々の中で、
転生者サラが自身の夢を叶えるために
新ニコルとして我が道をつきすすむ!
『目指せ健康体!美味しいご飯と楽しい仲間たちと夢のスローライフを叶えていくお話』
※はじめは健康生活。そのうちお料理したり、旅に出たりもします。日常ほのぼの系です。
※非現実色強めな内容です。
※溺愛親バカと、あたおか要素があるのでご注意です。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
王家を追放されたわけじゃないけど、世直しすることにしました。
克全
ファンタジー
アリステラ王国の16番目の王子として誕生したアーサーは、性欲以外は賢王の父が、子供たちの生末に悩んでいることを知り、独自で生活基盤を作ろうと幼い頃から努力を重ねてきた。
王子と言う立場を利用し、王家に仕える優秀な魔導師・司教・騎士・忍者から文武両道を学び、遂に元服を迎えて、王国最大最難関のドラゴンダンジョンに挑むことにした。
だがすべての子供を愛する父王は、アーサーに1人でドラゴンダンジョンに挑みたいという願いを決して認めず、アーサーの傅役・近習等を供にすることを条件に、ようやくダンジョン挑戦を認めることになった。
しかも旅先でもアーサーが困らないように、王族や貴族にさえ検察権を行使できる、巡検使と言う役目を与えることにした。
更に王家に仕える手練れの忍者や騎士団の精鋭を、アーサーを護る影供として付けるにまで及んだ。
アーサー自身はそのことに忸怩たる思いはあったものの、先ずは王城から出してもらあうことが先決と考え、仕方なくその条件を受け入れ、ドラゴンダンジョンに挑むことにした。
そして旅の途中で隙を見つけたアーサーは、爺をはじめとする供の者達を巻いて、1人街道を旅するのだった。
追放されてから数年間ダンジョンに篭り続けた結果、俺は死んだことになっていたので、あいつを後悔させてやることにした
チドリ正明@不労所得発売中!!
ファンタジー
世間で高い評価を集め、未来を担っていく次世代のパーティーとして名高いAランクパーティーである【月光】に所属していたゲイルは、突如として理不尽な理由でパーティーを追放されてしまった。 これ以上何を言っても無駄だと察したゲイルはパーティーリーダーであるマクロスを見返そうと、死を覚悟してダンジョンに篭り続けることにした。 それから月日が経ち、数年後。 ゲイルは危険なダンジョン内で生と死の境界線を幾度となく彷徨うことで、この世の全てを掌握できるであろう力を手に入れることに成功した。 そしてゲイルは心に秘めた復讐心に従うがままに、数年前まで活動拠点として構えていた国へ帰還すると、そこで衝撃の事実を知ることになる。 なんとゲイルは既に死んだ扱いになっており、【月光】はガラッとメンバーを変えて世界最強のパーティーと呼ばれるまで上り詰めていたのだ。 そこでゲイルはあることを思いついた。 「あいつを後悔させてやろう」 ゲイルは冒険者として最低のランクから再び冒険を始め、マクロスへの復讐を目論むのだった。
転生したらドラゴンに拾われた
hiro
ファンタジー
トラックに轢かれ、気がついたら白い空間にいた優斗。そこで美しい声を聞いたと思ったら再び意識を失う。次に目が覚めると、目の前に恐ろしいほどに顔の整った男がいた。そして自分は赤ん坊になっているようだ!
これは前世の記憶を持ったまま異世界に転生した男の子が、前世では得られなかった愛情を浴びるほど注がれながら成長していく物語。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる