3 / 28
序章
女神ロロは汝を導く
しおりを挟む真っ白な箱のような空間に、俺はいる。
あまりにも辺りが白いから、俺一人がこの空間唯一の汚れみたいだ。
汚れといえば店の天井のシミ、繁忙期過ぎたら業者入れて掃除してもらうかなぁ……。
店はどうなっただろう、あの新人くんお客さんの波を上手いこと乗り切ってくれるといいけど。時給に釣られて応募してきたとはいえ、ブッチしないで出勤してくれてたからなかなか素質はあると思う。
素質って何だ、社畜のか?
「ははは…」
つーか、ここどこですか。
箱の中心(?)に漫画でよく見るような魔法陣が突然現れ、淡い色の光を放つ。
な、なんじゃこりゃあ。
俺が好きな漫画にこんな錬成陣あったな、とぼんやり思い出す。
何が起こるか分からず突然爆発…なんてのも有り得るので、急いで部屋の隅っこに退避して身構えた。
頼むからキメラとか出てこないでくれよ……。
地面から何かがゆっくりと姿を現し始めたので、ぎゅっと目を瞑って息を殺す。どうか夢であってくれ。
「……はまじゅん、はまじゅん」
「!」
俺のあだ名……。
「はまじゅん、こちらにおいでなさい」
ぱっと目を開いて俺のあだ名を呼ぶ声の方に顔を向ける。
魔法陣の中心にはこの部屋と同じくらい真っ白なシルク一枚をワンピースのように纏った、とても美しい女性が佇んでいた。
どこかの国のお姫様だろうか、同じ人間とは思えないほどの神々しさがある。
「あ、あの……貴女は?」
「私はロロ。女神です」
「はい?」
「女神です」
「は、はあ……」
聞き間違いじゃなかったらしい。神々しいから女神…確かに一理ある、ような。
女神でもなんでもいいや、とりあえず害はなさそうだから詳しく話を聞いてみよう。ここが何処で、俺はあの後一体どうなったのか。
「ひとつお伺いしたいのですが、なぜ俺のあだ名をご存知なんです?」
「私は女神ですので何でも知っています。それに、あだ名で呼んだ方が貴方の警戒心も薄れるでしょう?」
「いや、逆に不信感しか無いんですが」
「あら、そう?おかしいわね……」
こう言えば死人と上手く打ち解けられるよ、って言われたのだけど……とか何とかボソボソと聞こえる。
しにん?とは俺のことだろうか?そもそも魔法陣から現れた彼女は何者なんだ?
あー……駄目だ、考えると頭が割れるように痛い。
「はまじゅん、貴方の記憶はどこまでありますか?」
「え……。『やっぱりゴリラ』でチーズインハンバーグのオーダーを伝えに厨房に行こうとしたら、ジュースで濡れた床で滑って転んだ……ってところですかね」
「ハイ、良くできました~」
「あの、それが何なんですか?いい加減この部屋からも出してもらいたいし、貴女はどこの誰で一体何者なんですか!?」
「……落ち着きなさいな」
ロロは太陽の陽の光のように美しい色の髪を耳に掛けると、慈しむような眼差しでこちらを見つめる。
「最初に申し上げたとおり、私は女神。貴方を次の生命へと導く者。
そして、貴方は死んだのです。過労で」
「……過労で?!」
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
おっチャンの異世界日記。ピンクに御用心。異世界へのキッカケは、パンツでした。
カヨワイさつき
ファンタジー
ごくごく普通のとあるおっチャン。
ごく普通のはずだった日常に
突如終わりを告げたおっチャン。
原因が、朝の通勤時に目の前にいた
ミニスカートの女性だった。女性の
ピンク色のナニかに気をとられてしまった。
女性を助けたおっチャンは車にはねられてしまった。
次に気がつくと、大きな岩の影にいた。
そこから見えた景色は、戦いの場だった。
ごくごく普通だったはずのおっチャン、
異世界であたふたしながらも、活躍予定の物語です。
過去の自身の作品、人見知りの作品の
登場人物も、ちょっと登場。
たくさんの方々に感謝します。
ありがとうございます。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる