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1章

★最後まで③

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「……っ!きっつ……」
「あぁぁぁっ……」


挿れた瞬間にギュッと締めて絡みつく感覚に、一瞬で持っていかれそうになる。避妊具越しでこの気持ちよさなら、生で挿れたら本当に持っていかれたんだろうなと苦笑する。


「……大丈夫か?痛くない?」


短く息を吐いて、もう鳴く以外にできない様子のたまきは、俺の目を見てゆっくり頷いた。我慢できずにゆっくりと腰を動かすと、それに合わせてたまきの腰もゆっくり動く。


可愛すぎてどうにかなりそうなくらい、可愛い。
動く度に胸も合わせてぷるぷるっと揺れるのが、更に視覚を刺激する。


「かわいい……すきだ……」
「わたしもっ……すき……だいすきっ」
「くっ……そんなに締めるなっ……」
「しめて……なっ……あぁっ!」
「お前の一番深い奥を突いてやるから。ここの中に子種を注ぐのは俺が一番先。俺が一番先に孕ませるってちゃんと脳にも体にも覚えさせるっ……!」
「んぁぁぁぁぁっ!!!」


腰を掴んで思い切り自身を打ち付ける。
ぴくぴくと快感に震える体は達したのだと分かるけれど、腰が止まらない。より締まった最奥に腰を掴んで自身をグリグリ擦り付ける。何回も何回も最奥でキスを繰り返して、この快感だけは誰にも上書きされないようにマーキングしたい。


「はげしっ……」
「お前がノヴァやルカの閨係になっても、俺の所に帰ってくるように目印つけてんだよっ!」
「……はぁん!!!あっ……!」


ああ、そうか。
俺は嫉妬してるんだ。
閨係としてやってきたたまきは、他の2人とも関係を持つ。最初から分かっていたのに、他の男がこの体を抱くと思うと、どうしようもなく嫉妬する。俺だけのものにしたい、と。


「かならず……他の男と閨に入っても俺の所に戻ってきてくれ……頼む」


返事の代わりにギュッとしがみついて、軽く頬にキスをするたまき。ナカも一緒にギュッと締まり、もうお互い限界が近い事を悟る。


「一緒にイくぞっ……!!」
「あっあっあっ……!!イくっ……イッちゃいますっ……すてふぁんさまぁぁぁっ!!」
「……くっ……んぐっ!!」


ナカの痙攣に刺激されて、避妊具内に解き放たれる精。避妊具から溢れてしまうのではと一瞬不安になる程、止まらない射精。ようやく止まった頃には、俺達は息絶えだえの汗まみれだった。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇


その後、シャワーを浴びて汗を洗い流した俺達は、たまきを腕枕しながらベッドに体を横たえている。


「痛くないか?違和感とか……」
「はい、大丈夫です」


ニコニコご機嫌そうに俺の胸元に顔を埋める姿が可愛いすぎて、そのまま余った片腕で包み込む。


「ご機嫌だな?」
「そりゃあ、ご機嫌にもなりますよ。この人になら身を捧げてもいいって思った好きな方に、はじめてをもらっていただいたので!」
「俺もお前のはじめてを貰えて幸せだよ」
「今まで感じられなかった幸せをこの一日に凝縮したのかって思う程に幸せです、いま人生で一番!!」


そう言われる事に対してどうしようもなく嬉しくなると同時に、胸がキリッと痛む。


「なあ。お前は閨係だから、きっとノヴァとルカとも関係を持つとは思う。すぐとはいかなくても、あの2人も良い奴だからお前も気にいると思うし。この国は一妻多夫が認められてるから、特にそれ自体は問題ないしな。……でも、もし出来るなら……」
「私の一番はずっと変わらず、あなたですよ。ステファン様」
「あ……」
「確かに私は閨係なので、きっと関係は持つと思います。でも誰にその身を捧げても、思いを重ねたとしても、私の一番は永遠にステファン様です。それだけは揺るがない、確固たる私の意思。だからどうか、ステファン様のお傍にこれからも置いてもらえると嬉しいです……」
「ああ、もちろんだ……お前の一番は俺で、俺の一番もお前だ」


あれだけ嫉妬していたのに、たまきの一言で全てが浄化される。最終的には3人でたまきを気持ちよくしてやるのも悪くないかもしれない、と一瞬思うくらいには心に余裕が出来た。


いつか言っていた、隣国の親戚の言葉を思い出す。


【どれだけ側室がいても、彼の一番も帰ってくる場所も正妻である私だって自信があるから。……正妻の余裕、ってやつね】


あの時は分からなかった彼女の言葉が、今は良くわかる。
俺に出来るのは今まで通り、職務に励み、たまきを愛し、帰る場所を提供するだけだ。


「ステファン様……あれは何でしょう?」
「ん?」


たまきの指差す先には、光り輝く蝶がひらひらと舞っていた。
ルカからの伝令蝶だ。
俺はベッドから抜け出し、伝令蝶に触れると文字が映し出される。


「……うわ、まじか」
「どうされたんですか?」
「今、活発に動いてる魔物を俺の部下が偵察に行っていたんだが、一日早く明日の朝に帰還するらしくて……。悪いが、明日はお前と一緒にいてやれない。報告を聞かないといけなくてな」
「いえ、ステファン様と過ごせないのは寂しいですけど、仕事の方が今は優先ですから行ってきてください」
「代わりにルカが明日はお前と一緒にいる。あっちもあっちで、明日しか時間が取れなくなったらしいから、その後の事はまた今度話そう」
「分かりました」


せっかく明日は朝から部屋でイチャイチャして、たくさん抱こうかと模索していたのに、なかなか上手くいかない。
でも、部下の報告を聞いて今後の方針を決める立場である以上、今はたまきより職務を優先する義務がある。


「明日の朝帰還するとは言っても、そんな早朝に戻ってくる事はないだろうから、朝食の時間まではこうして……くっついて寝てくれ」


ベッドに戻って、また腕枕をしつつ頭を抱えれば、また胸元に顔を埋めてくるたまきに愛しさが込み上げる。


「数日は一緒に過ごす時間は取れないかもしれないけど、早めに仕事終わらせて時間を作る。だから、次は街に出かけるか」
「はい!」
「お前に似合いそうな服とか色々買ってやりたい……で、それを脱がして抱く」
「どこからが冗談ですか……」
「全部、本気」


そう言ってお互いの視線が交わると、同時に零れる笑い声。


たまきを好きになってよかった。
転移した閨係が、たまきでよかった。


心からそう思いながら、隣で聴こえる寝息に合わせて俺の意識もすぐに微睡んでいった。
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