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1章

転移の理由

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普段通りに大学から家までの道を歩いていたら、突然眩い光に包まれて、次に目を開けた時には見知らぬ人達に囲まれていた。


なんて、よくある王道の異世界転移の冒頭。
まさか自分が体験するとは思ってなかったよ、うん。


「ほう、これはまた可愛らしい」
「これなら騎士様や魔道士様達も気に入るでしょう」
「早速、何人かここに呼んでくるのだ」
「御意に」


いや、まず私に状況を説明してくれないかな?
私は家に帰ろうとしてたら突然こんなところに呼び出されて、混乱もいいところなんですけど??ねぇ、聞いてます?
でも何か口にしたら不敬だって首が飛んでしまうかもしれない可能性もあるし、ここは黙っておくのが吉。


「陛下、お呼びでしょうか」
「来たか、お前達」


凛とした良く響く声に視線を移せば、そこに揃った3人のイケメン。直球に言えば、どタイプ。


「彼女が例の転移成功者だ。これからお前達の世話をするのでな、呼び出した次第だ」
「お言葉ですが、陛下。どうやら彼女は状況理解ができていないように見受けられます。ご説明はお済みなんですよね?」
「あっ……」


良く響く声の短髪ブロンドの男性が指摘してくれたおかげで、ようやく陛下と呼ばれる男性はその事に気付いた。やっと。


「申し訳ない。あまりにも望んでいた転移者だった故、説明を忘れてしまっていた。口を開いても不敬にはしない。楽にして欲しい。異界の方よ」
「はぁ……えっと……」
「そなたは我がサイガ帝国に召喚された。私はこの国を統べるサイガ3世。そなたの名を教えてくれるか?」
「私は椎名たまきです。転移させられたのは分かりましたが、私は帰れるんでしょうか?」
「たまき殿。申し訳ない。帰らす事は不可能だ」
「はい?」
「転移魔法はこちらに喚ぶ事は出来ても帰す事ができぬ。帰還が叶わぬ代わりに、そなたの願いは転移の目的を叶えてくれるのであればできる事は叶えると約束しよう」


正直な感想は、ですよね~!って感じ。
これも割と王道展開。
まぁ、家族はいなかったし、別に未練はないから大して驚きもしないし、嘆きもしない。


「転移の目的はなんでしょうか?私に何を望みますか?」
「私が言うのもあれだが、割とあっさり受け入れてくれたな」
「どうにもならない事を嘆くのは生産性がありませんから」
「……そうか。たまき殿には今呼び出した我が帝国を多方面から守護する騎士達の閨係を頼みたい」


聖女やれって言われたり、世界を救う勇者になれって言われなくて良かったとは思ったけど、まさかのそっち方面。
これも何かの運命なのかな~。


「その理由を伺っても?」
「もちろんだ。この大陸には多くの国があるが、サイガ帝国は最も繁栄をし、軍事力も群を抜いている。それ故、他国から攻撃を受けたり、魔物からの襲撃を受けたりしていてな。それらを薙ぎ払い、民の生活を守っているのが現状だ。そこで活躍するのが先程の騎士達。常に死と隣り合わせで戦地に赴く。特に団長や副団長となると、その危険性は更に高まる。……ここまでは理解出来たかな?」
「はい、大丈夫です」
「そういう戦地から帰ってきた騎士達は生存本能から、自らが生きている内にと性欲が強まる。団長や副団長クラスはその衝動がより強く出る。それを鎮めるのが、閨係の役割」
「花街に行けば解決するのでは?」
「時間が無くてな……戦況報告に事後処理。こやつらの仕事は戦地だけではないのだ。故に花街に行く事も叶わぬ。名乗り出る女性はいるが、それを受け入れる事もなくてな」


じゃあ、私なんかダメじゃない?
きっと名乗り出た女性は美人揃いで家柄も良さそう。
私はどこにでもいる大学生だし。胸も人よりは大きいけど、これといって大きくて良かった思い出はない。


「お話は分かりました。ですが、そのような女性を受け入れないのに私なんか受け入れるわけないのでは?」
「それは……」


目が泳いでる。
ここから先の展開、考えなかったな。
まぁ、きっと1人で処理しているであろう彼等を労ってあげようと、この世界とは関係ない異世界から閨係を転移させようとしたところかな。
話を聞いてる限り、この王様は悪い人ではない。


「騎士様方。私が仮に皆様の閨係になったとしましょう。受け入れますか?」


私の質問に顔を見合わせる3人。
やはり口を開いたのは短髪ブロンドの騎士様。


「難しいでしょう」
「ですよね、私もそうです。皆様も同じですか?」


問えば、他の2人も頷いてくれる。
良かった、考えは同じなようだ。


「陛下。お話は理解しました。ですが、条件がございます。私と騎士様に互いを知る時間をください。私も騎士様も閨に入り、夜伽の同意をするまで口出しはしないとお約束を。そして騎士様を知る為に、どうか私に1人で出歩く自由の許可を」


私の提案に一瞬戸惑った王様。
でも先程の騎士様の反応を見てたら、Noとは言えないよね。


「分かった」
「ありがとうございます。では早速、騎士様とお話させてください。私と騎士様の4人だけで」


お願いを快諾された私は、後ろに続く騎士様方の視線を感じつつ、防音魔法が施されてるという一室に案内された。
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