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その1 王都エフェレリアの惨劇

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ここは、王都エフェレリア。

少し前までこの都は、交易都市として栄えていた。

だが、今は、この都中を怪現象が襲い、そのせいで人々の姿はほとんど見受けられない。


それは、お月様が顔を出す晩になると、いつもいつも、突如として始まる。

だいたい夜の2時頃をピークに、この王都エフェレリアは、「春」と化し、盛りを迎える。

だが、それは素晴らしく美しい都での祭りを迎える、といったような類の盛りではない。

それは、実に黒々としている、黒蛇がとぐろを巻いて静かに境内に鎮座しているかのような、不気味な”盛り”なのであった。

 

丑三つ時とも呼ばれる深夜2時頃の事である。

薄暗い中、2人の中年オヤジがスキップをしながら、街中を歩いていた。金髪のオヤジと銀髪のオヤジである。

2人とも、若い頃には、さぞかしハンサムであったろう面影があるが、今はシワと加齢臭に覆われ、完全にオヤジそのものである。
 
しばらくは、2人仲良くスキップをしていたのだが、一人のオヤジが何かを思い出したかのように立ち止まる。

すると、もう一人の銀髪のオヤジも立ち止まり、いきなり2人は手をつないだのだ。

それから足早に、月の薄明かりが照らしだす森の中へと足を速め、入っていったのだった。

 
オヤジ2人は、深い森の中に居た。

森の中は静まりかえっていた。まるで、森が街の喧騒を飲み込んだかのようだった。
 
街の喧騒が完全に消え去った深い森の中まで来ると、オヤジ2人は互いの目と目を見つめ合い、互いに頬を赤く染める。

そして、不気味な満月の光のさす中で、加齢臭漂う2人のオヤジは、熱い口づけをかわしたのであった。

しかも、ディープキスである。オヤジたちは、互いの舌をからめあい、愛の証を激しく求めあっている。

そうしてしばし、時の止まったような空間の中で、口づけに熱中していたオヤジたちであった。

それからしばらくして、長い長いキスの時間が終わると、再び街へと戻り、街の喧騒の中へと、静かに消えて行ったのであった。


男同士で、このような行為が行われることはある。
 
だが、この王都エフェレリアでは、全員・・の男が、男同士で愛するようになってしまったのだ。

真夜中になると、静かだった男共が外へ出て、全ての男共が、男同士で愛し合う。

その姿が、この都エフェレリアでは、もう夜の日常と化している。

 
よく見てみると、夜のエフェレリアの街は、男性しか見当たらないのであった。

所々で男同士口づけを交わしたり、とあるマッチョの男のカップルが、頬を赤らめながら、宿屋に2人で入って行ったりしている。

エフェレリアの男どもの行為は、毎晩毎晩続けられていた。

 
王都エフェレリアは、今まさに、ボーイズ・ラブ国家と化していたのであった。

男同士で性行為を行い、口づけを交わし合い、はたまた、男同士で結婚式を挙げたカップルまでいる。



だが、街に女たちがいないわけではなかった。

このような状況の中、女たちは、深い絶望感の中にあった。

 
今の時刻はだいたい、丑の刻。

その頃になると、街中の男たちのボーイズ・ラブ度が活性化しする。

男たちは一気に街へ出て、男同士でイチャイチャするのである。

男たちの中には、物陰にて、その愛の印である行為を男同士にて、熱烈的に行う者もあった。

 
男同士でイチャつくようになってしまった自分の結婚相手や恋人を目にする度に、女たちは、絶望に打ちひしがれていた。

男に自分の恋人や結婚相手を取られた彼女たちは、部屋にこもり、声を押し殺し、それぞれが泣いているか、うなだれていた。

全ての男たちが、男同士でイチャイチャするその陰で、女たちは、ひっそりこもって涙を流している。

そのような光景が、王都エフェレリアのあちこちに存在していた。

 
少し前から、王都エフェレリアの男たちは、男同士で愛しあうようになってしまっていたのだ。

だが、その原因は、塵ほども明らかになっていないのだった。

 
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