極限状態からの成り上がり～

英雄の産声

森の生活

ゴブリンとの激闘から三日が経過した。



　今は朝露に湿った地面を踏みしめて戦闘訓練を行っている。



「―――ハッ！――――セイッ！」



　棍棒の振り方。重心の移動。歩法。

　これまでとは違い、次にどう動けば最適か、なんとなくだが分かった。



「―――――スキルはすごいな。棍棒が手に馴染む」



　さらに、棍棒を持っていないときの体の動かし方も向上されたような気がする。

　どうも武術系のスキルを得ると日常的な運動行動も上昇するようだ。



　意図せず得た効果に自然と頬が緩む。




　スキルの確認を終え、残り少なくなった果物を口に放り込む。

　ごろんと寝転がり、ひんやりと堅く冷たい地面が熱くなった体を冷やす。



（しかし、都合よくこの場所が見つかって助かった）




　三日前の激闘の後休む場所を探していた。ゴブリンと闘った場所から西に三百メートルくらいだろうか。



　小さくぽっかりと空いた洞窟を見つけた。奥まで行って座り込むとそのまま眠ってしまった。



　それからは酷い筋肉痛と疲労、怪我で起き上がれず、持っていた果実を食いつなぎながら治癒に専念した。



　そしてやっと動けるようになったのが今日だ。




　休憩を終えて、再度街に向かって川辺を移動する。狸や鹿、猪など様々な動物を見かけたが、魔物はあのゴブリンしか遭遇しなかった。



　腹が減ってきた。三日も果実しか食べていないので流石に飽きてきた。



川の浅瀬で魚を取ろう。長いズボンを膝丈まで上げて川に入って行く。






　結果。





　―――――大量に取れた。




　初めてだったので心配していたが、全然要らなかった。



【魂魄眼】が優秀すぎた。



水が濁っていて普通は見えないのだが、【魂魄眼】を意識すると魚の輪郭が見えるのだ。



　あとは棍棒を思いっきり叩きつけるだけ。すると衝撃で魚が浮いてくる、という寸法だ。




　魚が焼けるのを待ちながら、これまでに把握できた【魂魄眼】の性能ついてまとめていた。




　・適応範囲に制限はない。

　正確に言えば目で見ることができればどんなに遠くだろうと発動できる。



　・岩や木など物体を通しては使用できないが、水などの液体は例外である。



　・植物や無機物に対しては発動できない。




　強い。分かりきっていたことだが強すぎる。



　視界に入れることさえ出来れば、相手を丸裸にできる。これで大分死ぬ確率が減るだろう。



　やはり、植物や無機物は発動できなかったか。いや、魂がないから当たり前か。




　そんなことを考えていると、魚の焼ける美味しそうな匂いがしてきて考えるのを止めた。



　魚の刺さった棒を取り、一口―――――




「――っ⁉うまっ！！」




　あまりの美味さに思わず声が出た。



　味付けなどしていないのだが、素の素材の味だけで十分楽しめる。



皮はパリパリ。身は柔らかく、ぷりぷりしていて噛めば噛むほど、どんどん旨味が出てくる。脂はさらさらしていて全然しつこくない。



　大量に取った魚が次から次へと口に放り込まれ、ものの数分で無くなった。



　腹も膨れ、活力を手に入れたところで街に向かって歩いてゆく。




　―――――『ドジョウ』という魚の名前を脳裏に刻み込みながら。






　ー－あとがきー－



　お読みくださりありがとうございます。

　応援、コメント大変励みなります。



　作者はドジョウの素焼きは食べたことありませんが、ドジョウの天ぷらは好きでよく食べていました。

　本来ドジョウは余り脂がのっていないのですが、そこはファンタジー。

　許してください（笑）



　次回は、闇ギルドと言ったらこれ！！というスキルを手に入れます。