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28話 ジャネット視点5

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「じ、自慢なんてしてないわよ! ちょっと楽しい事があったから、アシュリーにも教えたくって……」

「なんてひどい事を! お姉ちゃんに婚約者との楽しい思い出話をしたんですか!? 信じられません!!!」

 ナンシーはバカじゃないけど、少しお姉ちゃんを引っ張り回す傾向がある。
 本人は親友と楽しく過ごしてるつもりだろうけど……いや、お姉ちゃんもそれを楽しんでるけど、今はそこに付け込んでやろう。

「でも、でもアシュリーとは面識もあるし、彼とは友人でもあるんだし……」

「友人であっても、婚約者ですよね? 婚約者とのノロケ話を、お姉ちゃんにしたんですよね?」

「私……私!!!」

 ナンシーが走って屋敷に戻っていった。
 後は何もしなくても、勝手に自爆してくれるわね。

 案の定、翌日ナンシーは学園を休んだ。
 思い込んだらどんどん深みにはまっていくのよね、あの手の能天気は。
 これでお姉ちゃんとはぎこちなくなるだろうし、お姉ちゃんの学園でのよりどころは……バート様を何とかするだけね。

 大公の孫娘とその取り巻きだけど、謝罪という形を取ったら簡単に会う事が出来た。
 3年生だから後輩への影響力はあるし、そもそも国王の血族だもの、元々の影響力がすごい。

「私の姉が申し訳ありません。分不相応な姉に代わり、皆さまに謝罪を致します」

 学園の庭の一角に、大公の孫娘専用のお茶スペースが作られている。
 バカみたい、こんな所で威張るなんて。

「あなたの姉、アシュリーといったかしら。よくもまぁ伯爵程度の身分でバート様と会話が出来るものね」

「申し訳ありません! お姉様方の足元にも及ばない姉が、どうしてあそこまで厚顔無恥でいられるのか、注意をしても聞いてもらえなくて……」

「ふふふ、あなたは多少は常識がありそうね。どうかしら? 私達と一緒に、あの厚顔無恥な姉に思い知らせてみない?」

 バカな女。
 でも私が頭を下げなきゃいけないなんて……落ち着いて、落ち着くのよジャネット。
 これはお姉ちゃんに自覚をさせるために必要な事なのよ。

 バカな孫娘のお陰で、お姉ちゃん包囲網は簡単に敷けた。
 やっぱり家柄が良いと物事が簡単に進むわね。

 あ、そうそう、お茶会の流れで、ナンシーっていう女はフラれた女に男自慢をする奴だ、って話が出来上がったわ。
 なんだかおもしろい流れね。

 気が付いたらナンシーがいなくなってたけど、どうしたのかしら。
 ついでだから利用しようかな。

『アシュリーは妹に嫌がらせをするだけでは飽き足らず、親友のナンシーにも嫌がらせをして学園にいられなくした』

 こんなうわさが蔓延していた。
 流したんだけどね。
 3年生はバート様と仲のいいお姉ちゃんを元々良く思ってなかったし、1年生はお姉ちゃんのことを良く知らないから、簡単に信じてくれた。

 2年生は上と下が同じウワサをしてるもんだから、ひょっとして本当に? という疑心暗鬼になってる。
 後はウワサが消えないように、適当な頃に新しい燃料を投下するだけだわ。
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