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昔の夢を見たわ。
あれは私が小さな頃、顔のあざが嫌でフードを深くかぶって街を歩いていた時の事だ。
前髪を伸ばして右半分を隠していたわね。
お店に入る勇気は無かったから、お店の外から中を見てるだけだったけど、それでも知らない物ばかりでとても楽しかった。
でもそんな時、私のすぐ後ろで大きな声が聞えた。
「あれ! あれが欲しい!」
私よりも少し小さな男の子が、豪華な馬車から身を乗り出している。
なにが欲しいんだろう、私は男の子が指差す先を見た。
真っ黒い大きな鎧と、少し不気味な兜だった。
ええ……男の子の趣味って分からない。
私だったら隣にある、羽根がいっぱいついたきれいな方がいいな。
「ああ! 坊っちゃん!!!」
女の人の悲鳴が聞こえた。
慌てて振り向くと、男の子は身を乗り出しすぎて馬車から落ちようとしていた。
あ、あぶない!
とっさに体が動いた。
男の子が落ちる下に走って、何とか私がクッションに……ゴチン!
「い、いたい……」
「あははははは! 落っこちちゃった!」
男の子の頭と私の頭がぶつかった。
何がおかしいの? 男の子って本当に分からない。
「あ! お前……カッコイイな!」
男の子が私に顔を近づけてマジマジと見ている。
え? え? なに? あ!
気が付くとフードはめくれ、髪が横にずれてアザが丸見えになっていた。
み、見られちゃった……気持ち悪がられて……?
「お前、女なのにカッコイイな!」
カッコイイよりも、カワイイがいいです。
「坊っちゃん!」
女の人が男の子を抱き上げて、慌てて馬車に戻っていく。
馬車は急いでどこかに行ったけど、馬に乗った騎士さんがお礼を言ってくれた。
騎士さんは……カッコイイな。
「久しぶりに昔の夢を見たわ」
「アシュリーってば、昔はおてんばだったもんね~」
学園での昼食時間。
私はナンシーと一緒に芝生に座ってお弁当を食べていた。
私が婚約破棄をされて数日がたって、そろそろ噂は一周して落ち着き始めていた。
まだよそよそしい人も多いけどね。
「それにしても、最近はアレンとローランはどうしたのかしら」
「ホントホント、用事があるからって、全然おしゃべりしなくなったよね~」
学園では大体4人で過ごしていたけど、最近はナンシーと2人きりだ。
あの2人も、そろそろ彼女でもできたのかしら。
でもその原因は、もっと身近な事だった。
ある日の朝、私は学園でナンシーとおしゃべりしていると、アレンとローランが現れた。
「あらおはよう、アレン、ローラン。今日はお昼はご一緒できそう?」
「残念だぜ、アシュリー」
「君がそんな女性だとは思っていなかったよ」
え? え? なになに? なんの事?
あれは私が小さな頃、顔のあざが嫌でフードを深くかぶって街を歩いていた時の事だ。
前髪を伸ばして右半分を隠していたわね。
お店に入る勇気は無かったから、お店の外から中を見てるだけだったけど、それでも知らない物ばかりでとても楽しかった。
でもそんな時、私のすぐ後ろで大きな声が聞えた。
「あれ! あれが欲しい!」
私よりも少し小さな男の子が、豪華な馬車から身を乗り出している。
なにが欲しいんだろう、私は男の子が指差す先を見た。
真っ黒い大きな鎧と、少し不気味な兜だった。
ええ……男の子の趣味って分からない。
私だったら隣にある、羽根がいっぱいついたきれいな方がいいな。
「ああ! 坊っちゃん!!!」
女の人の悲鳴が聞こえた。
慌てて振り向くと、男の子は身を乗り出しすぎて馬車から落ちようとしていた。
あ、あぶない!
とっさに体が動いた。
男の子が落ちる下に走って、何とか私がクッションに……ゴチン!
「い、いたい……」
「あははははは! 落っこちちゃった!」
男の子の頭と私の頭がぶつかった。
何がおかしいの? 男の子って本当に分からない。
「あ! お前……カッコイイな!」
男の子が私に顔を近づけてマジマジと見ている。
え? え? なに? あ!
気が付くとフードはめくれ、髪が横にずれてアザが丸見えになっていた。
み、見られちゃった……気持ち悪がられて……?
「お前、女なのにカッコイイな!」
カッコイイよりも、カワイイがいいです。
「坊っちゃん!」
女の人が男の子を抱き上げて、慌てて馬車に戻っていく。
馬車は急いでどこかに行ったけど、馬に乗った騎士さんがお礼を言ってくれた。
騎士さんは……カッコイイな。
「久しぶりに昔の夢を見たわ」
「アシュリーってば、昔はおてんばだったもんね~」
学園での昼食時間。
私はナンシーと一緒に芝生に座ってお弁当を食べていた。
私が婚約破棄をされて数日がたって、そろそろ噂は一周して落ち着き始めていた。
まだよそよそしい人も多いけどね。
「それにしても、最近はアレンとローランはどうしたのかしら」
「ホントホント、用事があるからって、全然おしゃべりしなくなったよね~」
学園では大体4人で過ごしていたけど、最近はナンシーと2人きりだ。
あの2人も、そろそろ彼女でもできたのかしら。
でもその原因は、もっと身近な事だった。
ある日の朝、私は学園でナンシーとおしゃべりしていると、アレンとローランが現れた。
「あらおはよう、アレン、ローラン。今日はお昼はご一緒できそう?」
「残念だぜ、アシュリー」
「君がそんな女性だとは思っていなかったよ」
え? え? なになに? なんの事?
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