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第百三十三話

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 今回の連合の名前は一旦置いておいて、私達が出かけている間に色々とあったようです。
 まず一つが統括的軍事同盟から連絡があった事。
 二つ目が他国からも連合に参加したいという申し出があった事。
 そして三つ目がアフトヴァース国とワズ国反対連合から接触があった事です。

 会議室に集まり三つの事について議論をしていたようですが、一つ目と二つ目は全員が同じ意見です。

「統括的軍事同盟だが、話を聞く分には構わないがこちらに参加や同盟を組むという話は突っぱねる、で問題はないな?」

 グロリア様第一王子が確認をすると全員が首を縦に振ります。
 それはそうですよね、私達はあくまでも中立な立場でなければいけません。
 どちらかに加担したらもう片方との交渉は出来なくなります。

「次はこちらに参加をしたいという国だが、全部の国は無理だがこちらが選んだ国なら参加を認める、でいいな?」

 こちらも満場一致で決定しましたが、こちらは参加国の選定に時間を要します。
 問題は三つ目です。

「ローレル、この二国の反応はどう思うかしら?」

 シーマ様第一王女ローレル様第六王女を見ます。
 ローレル様は静かに目を閉じて考えると、半目を開いて足元に置いてあるバッグから何かを取り出します。

「これは昨日届いた情報なのでしゅが、反対連合は軍を国境沿いに移動させたようでしゅ」

 どうやら早馬から届いた書面のようで、机の上に紙を広げます。
 シワシワですが確かに軍を移動させたと書いてあります。
 早馬は昼夜問わず走りますが、二国とは離れているため二日間はかかるでしょう。
 つまり軍を移動させたのは二日前になります。

「グロリア様、反対連合から連絡があったのはいつなのですか?」

「三日前だシルビア。お前達が戻ってから返事をするからと保留にしている」

「つまり反対連合はあらかじめ軍を移動させ、私達をけん制しているのでしゅよ」

「おいおい待ってくれ、それはあまりにタイミングが良くないか? まるでシルビアさん達が戻ってくる日を知っていたようじゃないか」

 エクシーガ大司教の言う通りです。
 私が戻ってくる日にちを知っていて、それに合う様に連絡をして軍を移動させたように見えます。
 だとしたらこちらの動きはある程度把握されていると見た方が良いでしょう。

「反対連合と会うこと自体は問題ありません。こちらの情報が洩れている事も同じく。私達はあくまでも中立を維持し反対連合と参加希望連合の仲立ちをする事が目的です。しかし問題が一つあります」

「それは……なんだい……シルビア」

「参加希望連合からの連絡がない事です」

 統括的軍事同盟と反対連合から接触があったという事は、私達の活動は広く知られているという事です。なのに肝心の国から連絡が無いのです。
 正直言うと真っ先に連絡があると思っていました。
 一つの考えとしては統括的軍事同盟に参加をしたいわけですから、統括的軍事同盟側が代理として連絡をしてきたとも取れます。

 しかし私達は中立であらねばなりません。
 参加希望連合と反対連合の懸け橋にはなっても、統括的軍事同盟との接触は最小限でなければだめです。
 それに当事国が丸投げするなんてあってはなりません。

 まずは日をずらして統括的軍事同盟・反対連合と会う事になりました。

 統括的軍事同盟の希望概要
 ・参加希望連合に加担して欲しい
 ・統括的軍事同盟の内部組織として活動して欲しい
 ・反対連合と会わないで欲しい
 ・反対連合を世界の敵と認識させたい
 ・そののちに反対連合を何とかしたい
 ・費用は折半
 といった所です。

 まあ言いたい放題ですね。
 全部が通るとは思っていないでしょうが、妥協する気が一切ないようです。
 統括的軍事同盟は参加国を侵略から守る意味合いが強いと思っていましたが、やはり数が集まると我儘になるのでしょうか。

 反対連合の希望概要
 ・統括的軍事同盟は参加希望連合と共謀し我らを攻撃しようとしている
 ・諸君等はこちらに味方してしかるべきである
 ・統合的軍事同盟との接触を絶て
 ・侵略国を擁護するなら諸君等も敵である

 どちらの言い分も勝手なものです。
 両方とも正義は自分にあると思っているので、この内容には特に疑問はありません。
 しかし私達はこの中から希望を見いださねばなりません。
 
 それにしても統括的軍事同盟の意見を聞いても、参加希望連合の影は見えません。
 はて、これはどういう事でしょうか。

「シルビアしゃん悲報でしゅ。参加希望連合からも使者が出ていた様でしゅが、途中で何者かに襲われた様でしゅよ」

「襲われた? ただの盗賊でしょうか、それとも……」

「今のところ情報は入っておりましぇん」

「ひょっとして参加希望連合は襲われた事に気付いておらず、私達からの返事を待っているのでしょうか?」

「その可能性もありましゅ。しかし襲われた事に気が付かないというのは、国としてあるまじき失態なのでしゅよ」

 そうなのです。
 使者は必ず複数名で向かわせ相手国にたどり着き、無事手紙が届いた事を確認してその内の何名かが戻ります。
 自国に使者が戻ってきたところでワンセットが終了です。
 その確認を怠っているというのは……いえ、ひょっとしてそれが出来ない状況にあるのでしょうか。
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