41 / 73
41 エステバン 予測不能
しおりを挟む
「ニルス……あなたは一体何と話ているのですか?」
寝巻のニルスが窓の外に話かけています。
窓の外に居るのは……炎のように揺らめく影しかいません。
は! 今はそんな事を気にしている場合ではありませんね!
「窓から離れてください! ロビー! ロビー起きてください!」
急いでニルスを抱きしめて窓から離れます。
「あ痛! ちょっとお姉ちゃんどうしたの?」
ニルスはこの影を知っているのでしょうが、まさかエステバンがこのような得体のしれない物だとは思いもしませんでした。
ベッドの反対側へ行き、ニルスを手で押さえて伏せさせます。
「ロビー! どうしたのですかロビー!」
ベッドで寝ているロビーを揺さぶりますが、目覚める気配がありません。
どういう事でしょうか、こんな事は今までありませんでした。
2人を抱えて逃げるのは無理です。
こうなったら仕方がありません、部屋の外にはマットが待機しているはずなので、マットを呼んで……?
「影が……消えた」
窓の外に居た影が居なくなりましたが、まだ油断はできません。
私はゆっくりと壁伝いに窓際へ行き、そっと窓の外を覗き込みます。
やはりいません。窓を開けて確認しますが、どこにも姿はありませんでした。
ここは6階、バルコニーもありません。
あの影は一体……。
「あれ? エステバン帰っちゃったの?」
ニルスも窓際に来ていました。
以前の話し方からすると、ニルスはエステバンと何度も会っているようです。
あの影、エステバンは敵でしょうか、それとも味方?
「エステバンは、いつもこんな時間に現れるのですか?」
「ううん、時間はバラバラだよ。朝早い時もあるし、お昼に来るときもあるよ」
「そう、ですか。エステバンは、一体誰なのでしょか」
「わかんない。でもいい人だよ」
いいひと。
何度も会っているとはいえ、人なのか魔物なのかも分からない存在に会っているというのは、少なくとも護衛の観点からいっても良くありません。
「今日はまたくると思いますか?」
「どーだろう。何日かに一回来るかどうかだし、来ないんじゃないかな」
「そうですか。ではニルス、今日はもう寝てください」
「はーい」
ベッドに戻って布団をかぶるニルス。
ロビーも目が覚めたようで、ニルスがいる事を確認すると目をつむりました。
先ほどのロビーは明らかに様子が変でした。
寝ている、というよりも気を失っている感じでした。
それにしても……アレは美術館に反対する勢力の者ではないのでしょうが、今回の護衛の一番の危険事項であることは間違いないでしょう。
まさか人以外の者からの護衛になるとは思いませんでした。
それに先見の明でも直前までビジョンが見えませんでした。
それが意味する事は、直前に未来が確定したという事であり、直前まではエステバンが出て来る未来は無かったという事です。
先見の明が通じない相手……未来を改変するような存在でない事を祈るばかりです。
翌朝、5人が揃った時に昨晩の事を話ました。
あんな状況でロビーが起きなかった事は皆信じられませんでしたが、エステバンが現れた事、その存在があまりに不可思議すぎる事が状況を複雑にしています。
「俺は昨晩、ニルスの窓の外も巡回したが、怪しい事は無かったぞ」
「そうですか……あれは一体何なのでしょうか」
「ニルス、エステバンってヤツはさ、一体どんな奴なんだ?」
ニルスに目が集まります。
しかしニルスの口からエステバンの事が語られることはありませんでした。
「ごめんフラン。寝続けるなんて思っても居なかったよ」
ロビーと2人で外の見回りをしている時、頭を下げてきました。
昨晩の事が気になっていたのでしょう。
「いえ、あれはエステバンの仕業でしょうから、現れる直前まで気付けなかった私の責任でもあります」
「いや、先見の明でも見えない相手なんだ、フランに責任はないよ」
これはいけませんね。お互いに自分を責めて切りが無くなるパターンです。
「それではお互い様、という事にしましょう」
「……うん、ありがとう」
かなり気にしていますね。
大きな背中が丸まって小さく見えます。
「ほらロビー、しっかりと背を伸ばしてください。めげている場合ではありませんよ?」
後ろから抱き付き、ロビーを持ち上げるようにして胸を張らせます。
「フ、フラン?」
「冒険者は常に胸を張っていてください。落ち込んだり自信を無くしている所を依頼主に見られたら、それだけで信頼を失ってしまいますよ? それに……」
「それに?」
「……ロビーのそんな顔は見たくありません」
「うん、分かった! こんな顔はフランには見せたく無いからね!」
カラ元気でも元気を出しましょう。
そうすれば前向きな考えも出来るという物です。
それに、早急にエステバン対策を練らねばなりません。
落ち込んでいる時間などありませんからね。
※ファンタジー小説大賞に参加しています! ぜひ投票をお願いします!
寝巻のニルスが窓の外に話かけています。
窓の外に居るのは……炎のように揺らめく影しかいません。
は! 今はそんな事を気にしている場合ではありませんね!
「窓から離れてください! ロビー! ロビー起きてください!」
急いでニルスを抱きしめて窓から離れます。
「あ痛! ちょっとお姉ちゃんどうしたの?」
ニルスはこの影を知っているのでしょうが、まさかエステバンがこのような得体のしれない物だとは思いもしませんでした。
ベッドの反対側へ行き、ニルスを手で押さえて伏せさせます。
「ロビー! どうしたのですかロビー!」
ベッドで寝ているロビーを揺さぶりますが、目覚める気配がありません。
どういう事でしょうか、こんな事は今までありませんでした。
2人を抱えて逃げるのは無理です。
こうなったら仕方がありません、部屋の外にはマットが待機しているはずなので、マットを呼んで……?
「影が……消えた」
窓の外に居た影が居なくなりましたが、まだ油断はできません。
私はゆっくりと壁伝いに窓際へ行き、そっと窓の外を覗き込みます。
やはりいません。窓を開けて確認しますが、どこにも姿はありませんでした。
ここは6階、バルコニーもありません。
あの影は一体……。
「あれ? エステバン帰っちゃったの?」
ニルスも窓際に来ていました。
以前の話し方からすると、ニルスはエステバンと何度も会っているようです。
あの影、エステバンは敵でしょうか、それとも味方?
「エステバンは、いつもこんな時間に現れるのですか?」
「ううん、時間はバラバラだよ。朝早い時もあるし、お昼に来るときもあるよ」
「そう、ですか。エステバンは、一体誰なのでしょか」
「わかんない。でもいい人だよ」
いいひと。
何度も会っているとはいえ、人なのか魔物なのかも分からない存在に会っているというのは、少なくとも護衛の観点からいっても良くありません。
「今日はまたくると思いますか?」
「どーだろう。何日かに一回来るかどうかだし、来ないんじゃないかな」
「そうですか。ではニルス、今日はもう寝てください」
「はーい」
ベッドに戻って布団をかぶるニルス。
ロビーも目が覚めたようで、ニルスがいる事を確認すると目をつむりました。
先ほどのロビーは明らかに様子が変でした。
寝ている、というよりも気を失っている感じでした。
それにしても……アレは美術館に反対する勢力の者ではないのでしょうが、今回の護衛の一番の危険事項であることは間違いないでしょう。
まさか人以外の者からの護衛になるとは思いませんでした。
それに先見の明でも直前までビジョンが見えませんでした。
それが意味する事は、直前に未来が確定したという事であり、直前まではエステバンが出て来る未来は無かったという事です。
先見の明が通じない相手……未来を改変するような存在でない事を祈るばかりです。
翌朝、5人が揃った時に昨晩の事を話ました。
あんな状況でロビーが起きなかった事は皆信じられませんでしたが、エステバンが現れた事、その存在があまりに不可思議すぎる事が状況を複雑にしています。
「俺は昨晩、ニルスの窓の外も巡回したが、怪しい事は無かったぞ」
「そうですか……あれは一体何なのでしょうか」
「ニルス、エステバンってヤツはさ、一体どんな奴なんだ?」
ニルスに目が集まります。
しかしニルスの口からエステバンの事が語られることはありませんでした。
「ごめんフラン。寝続けるなんて思っても居なかったよ」
ロビーと2人で外の見回りをしている時、頭を下げてきました。
昨晩の事が気になっていたのでしょう。
「いえ、あれはエステバンの仕業でしょうから、現れる直前まで気付けなかった私の責任でもあります」
「いや、先見の明でも見えない相手なんだ、フランに責任はないよ」
これはいけませんね。お互いに自分を責めて切りが無くなるパターンです。
「それではお互い様、という事にしましょう」
「……うん、ありがとう」
かなり気にしていますね。
大きな背中が丸まって小さく見えます。
「ほらロビー、しっかりと背を伸ばしてください。めげている場合ではありませんよ?」
後ろから抱き付き、ロビーを持ち上げるようにして胸を張らせます。
「フ、フラン?」
「冒険者は常に胸を張っていてください。落ち込んだり自信を無くしている所を依頼主に見られたら、それだけで信頼を失ってしまいますよ? それに……」
「それに?」
「……ロビーのそんな顔は見たくありません」
「うん、分かった! こんな顔はフランには見せたく無いからね!」
カラ元気でも元気を出しましょう。
そうすれば前向きな考えも出来るという物です。
それに、早急にエステバン対策を練らねばなりません。
落ち込んでいる時間などありませんからね。
※ファンタジー小説大賞に参加しています! ぜひ投票をお願いします!
0
お気に入りに追加
2,192
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢は逃げ出すことにした【完結済】
佐原香奈
恋愛
公爵家の跡取りとして厳しい教育を受けるエリー。
異母妹のアリーはエリーとは逆に甘やかされて育てられていた。
幼い頃からの婚約者であるヘンリーはアリーに惚れている。
その事実を1番隣でいつも見ていた。
一度目の人生と同じ光景をまた繰り返す。
25歳の冬、たった1人で終わらせた人生の繰り返しに嫌気がさし、エリーは逃げ出すことにした。
これからもずっと続く苦痛を知っているのに、耐えることはできなかった。
何も持たず公爵家の門をくぐるエリーが向かった先にいたのは…
完結済ですが、気が向いた時に話を追加しています。
ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません
野村にれ
恋愛
人としての限界に達していたヨルレアンは、
婚約者であるエルドール第二王子殿下に理不尽とも思える注意を受け、
話の流れから婚約を解消という話にまでなった。
ヨルレアンは自分の立場のために頑張っていたが、
絶対に婚約を解消しようと拳を上げる。
『恋愛短編集①』離縁を乗り越え、私は幸せになります──。
Nao*
恋愛
11/11最新『病気の妻は要らないと私を捨てた夫は、美人メイドと再婚を決めたようです…。』
規約改定に伴い、今まで掲載して居た恋愛小説(夫の裏切り・離縁がテーマ)のSSをまとめます。
今後こちらに順次追加しつつ、新しい話も書いて行く予定です。
(完結)お姉様を選んだことを今更後悔しても遅いです!
青空一夏
恋愛
私はブロッサム・ビアス。ビアス候爵家の次女で、私の婚約者はフロイド・ターナー伯爵令息だった。結婚式を一ヶ月後に控え、私は仕上がってきたドレスをお父様達に見せていた。
すると、お母様達は思いがけない言葉を口にする。
「まぁ、素敵! そのドレスはお腹周りをカバーできて良いわね。コーデリアにぴったりよ」
「まだ、コーデリアのお腹は目立たないが、それなら大丈夫だろう」
なぜ、お姉様の名前がでてくるの?
なんと、お姉様は私の婚約者の子供を妊娠していると言い出して、フロイドは私に婚約破棄をつきつけたのだった。
※タグの追加や変更あるかもしれません。
※因果応報的ざまぁのはず。
※作者独自の世界のゆるふわ設定。
※過去作のリメイク版です。過去作品は非公開にしました。
※表紙は作者作成AIイラスト。ブロッサムのイメージイラストです。
婚約者から妾になれと言われた私は、婚約を破棄することにしました
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私エミリーは、婚約者のアシェル王子に「妾になれ」と言われてしまう。
アシェルは子爵令嬢のキアラを好きになったようで、妾になる原因を私のせいにしたいようだ。
もうアシェルと関わりたくない私は、妾にならず婚約破棄しようと決意していた。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます
との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。
(さて、さっさと逃げ出すわよ)
公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。
リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。
どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。
結婚を申し込まれても・・
「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」
「「はあ? そこ?」」
ーーーーーー
設定かなりゆるゆる?
第一章完結
転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?
N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、
生まれる世界が間違っていたって⁇
自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈
嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!!
そう意気込んで転生したものの、気がついたら………
大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い!
そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!!
ーーーーーーーーーーーーーー
※誤字・脱字多いかもしれません💦
(教えて頂けたらめっちゃ助かります…)
※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる