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37 説得 下山

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「なら勝手にしろ。ただし! 次に俺達の邪魔をしたらどうなるか、しっかり考えて行動しろ」

 レッド達がテントに戻りました。
 若いパーティーは相変わらずテントを張らず、寝袋を用意するだけです。
 ここには薄いながらも雪が積もっています。寝袋だけでは凍死するのは間違いありません。

「どうして無謀な事するんだろ~?」

 全くです。理解できません。
 しかしどうしたものでしょうか、このまま死なれても後味が悪いですし、こう見えても聖女なので助けられる範囲では助けたいのですが……。

 テントから出てパーティーに近づきます。
 どうやら疲れ果てているようで、食事をする事もなく寝るようです。
 何も食べずに寝るなど、ここではやってはいけない事です。

「何も口にせず寝てはいけません。すぐに湯を沸かしますから、軽くでも何か口に入れてください」

 携帯コンロで湯を沸かし、中に栄養剤を入れます。
 携帯食料は持っているようなので、お湯を水で冷まして渡していきます。
 ケイもテントから出て来て手伝ってくれました。

「ありがとうございます! ありがとうございます!」

 みんな口々に礼を言ってきます。
 しかしリーダーらしき人物は違いました。

「余計なことしなくても、俺達は大丈夫なのに」

 そう言いながらも白湯さゆを飲んでいます。
 どうしてこんなに突っかかってくるのでしょうか。
 何か理由があるのなら知りたいですね。

 本人に聞いても無理でしょうから、他の人に聞きました。

「それがですね、若くして成果を出したアナタ達をライバル視して、今すぐにでも追い越そうと思っているからです」

 下らない、と言っては失礼かもしれませんが、そんな事で命を落としたらどうするのでしょうか。
 ライバル視するのは構いませんが、しっかりと計画を立ててどうやって追い越すのかプランを立てなくてはいけません。
 ただ闇雲に走るだけでは追いつけません。

「追いつきたいのなら、しっかりと計画を立てる事です。今のままでは命を落としてしまいますよ?」

「はい……今日は本当にヤバイと思いました」

 どうやらリーダーが突っ走ってしまうタイプの様ですね。
 何か急がなくてはいけない理由でもあるのでしょうか。

「今日はゆっくり休んで、明日は山を降りてください。その装備ではこの先へ進むことはできません」

「命令しないでくれ! 俺達は俺達のやり方があるんだ!」

 どうして言う事を聞いてくれないのでしょうか。
 そのやり方が間違っている、そう言っているのに。

「しかしこのまま進めば重大な事故が起きてしまいます。そうなってからでは遅いのですよ?」

「お前達みたいな恵まれた奴には分からないんだ! 一々口を出さないでくれ!」

 恵まれた、ですか。確かに仲間には恵まれましたが、思ったよりも波乱万丈な人生だと思います。

「なぁリーダー、戻ろうよ。これ以上はムリだよ」

「そうそう、この人の言う通り、これ以上は寝袋だけじゃ無理だって」

 皆が戻るように説得を始めました。
 仲間の意見を聞いてくれればいいのですが……。
 何とか折れてくれました。明日の朝には降りるそうです。

 安心しました。
 帰りに遺体を回収する事にならなくて済みそうです。

 翌朝、わたくし達が起きた時にはまだ眠っていました。
 疲れていたのでしょう、目を覚ます気配がありませんね。

 朝食の準備をしている最中に目覚めたようで、一緒に食事を取る事になりました。
 リーダーはずっと不機嫌そうな顔をしていましたが、他のメンバーは嬉しそうでしたので、本当に苦しかったのでしょう。

 食事が終わると若いパーティーは山を降り、わたくし達は上へと昇り始めました。
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