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31 情報流出 日記

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「それでは明日の作戦だが……お前ら、随分と近いな」

 焚き火を囲んでの夕食中、レッドがわたくしとロビーを指差しました。
 確かにわたくし達はピッタリくっついていますが、どうかしたのでしょうか。

「いま気にする事でしょうか。明日の作戦を話し合いましょう」

「ん? ま、そうだな」

 ……少々強引すぎましたか?
 顔、赤くなっていませんよね。



 翌朝になり、連絡が入ったため少し予定を変更し、昼近くになってからグラストリム帝国に入りました。
 ええ、正面から堂々と入りました。
 受付で書いた名前を見て、門番たちはどよめいていました。
 まさか素直に正面から来るとは思っていなかったのでしょう。

 そして、その連絡は直ぐさま城へと伝わります。
 さあ、予定通り宿へ入るとしましょう。

 宿で準備を進めていると、宿の外が騒がしくなりました。
 どうやら来たようですね。

 部屋の扉が乱暴に開かれました。

「聖女フランチェスカ! ここに居るのは分かっている! 逃げても隠れても……ん?」

わたくしに何の御用でしょうか?」

 扉を乱暴に開けた兵士はわたくし達を見て動きが止まっています。
 それはそうでしょうね、まさか優雅にお茶をしているなんて、想像だにしていなかったでしょう。

「す、素直に城についてこい。そうしたら乱暴をせずに済むからな」

「理由をお聞かせ願えますか?」

「え? ああ、コホン、聖女フランチェスカ! お前には国の情報を他国に売り渡した疑いで、逮捕状が出ている! 大人しく城へ投降しろ!」

「はて、わたくしの知る限り、国の機密を他国に売った者は投獄され、拷問の後に処刑のはず。いつの間に変わったのですか?」

「……あれ? そう言えばどうして……は! そんな事はいい! 城に来るのか来ないのか、どっちなのだ!」

「あなたの態度がおかしいですね。まだ罪が確定していない上、聖女たる者に命令をするのですか?」

「ぐ……どうか、城へ……お越しください」

「分かりました。手紙も来たことですし、伺うとしましょう」

 ティーカップを置いて、腰をあげます。

 宿を出ると沢山のやじ馬が居ました。
 本来ならばわたくし達が犯罪者に見えるでしょうが、胸を張り、まるで兵士達に護衛をさせているように振る舞います。
 ふふふ、後で来る情報が流れれば、王がわたくし達に謝罪をするために兵を向かわせた、そう思うでしょうね。

 城への道中も、注目を集めるためにワザと音を立てながら歩きます。
 さやを具足に当てたり、杖で地面を力強く突いたり。
 そう、まるで不機嫌に、怒っているように。

 城に着き、何故か謁見の間へと連れて行かれます。
 犯罪者を尋問するのではないのですか? なぜ謁見の間なのでしょうか。
 さらに言うと、貴族がたくさん並んでいます。
 ……もちろんわたくしの両親も。

 逃げも隠れもしないのが分かっているのか、縄も何もつけられていません。
 折角縄抜けを練習したのに。

 そんな事を考えているうちに、国王が入ってきました。
 それに続いてデイヴィット王太子と女性が1人。
 あの女性はサザンクロス聖国に付いて来ていた女性ですね。

 貴族たちが国王に頭を下げ、玉座に付くと頭をあげました。
 デイヴィット王太子は玉座の左手に、更に左に女性が居ます。
 さあ、第一声は何でしょうか。

「聖女フランチェスカ! 良くもおめおめと帰ってこれたな!」

 !? いえ、あなたが来いと言ったのですが。
 マットなどは噴き出して口を押さえ、笑いをこらえています。
 デイヴィット王太子の中では、一体どういうシナリオになっているのでしょうか。

「デイヴィット王太子が戻って来いと言ったのでしょう? これ以上付きまとわれるのも嫌なので、仕方なく出向いてまいりました」

「な! 私がいつお前に戻って来いといったか!」

「ひと月ほど前に手紙が届きました」

「そ、そのような物は知らん!」

 捨てるように手を横に振り、続いてわたくしを指差します。

「フランチェスカ! お前は国から逃げたばかりか国家機密を他国に売ったな! これはどういう事だ!」

「デイヴィット王太子、そもそもわたくしは国家機密を知る立場にはありません。もしそうだというのなら、王太子がわたくしに漏らしていたのではありませんか?」

 わたくしはただの公爵令嬢でした。
 確かに王太子と婚約していましたが、政治には全くかかわっていません。

「私が漏らすだと!? 自分の罪を私になすりつけようというのか!」

「え~っと、今日はフランチェスカとお茶をしていたら、思わず国境沿いの警備の配置を話てしまった。それがお母様にバレてとても叱られた。僕の妻になるんだから、それくらい良いじゃないか」

 マットが何かを読み上げました。
 ほとんどの人が何を言っているのか理解していませんが、顔を真っ赤にしている人物が1人。

「次は……時々フランチェスカの先見さきみの力が恐ろしい。僕がやろうとしている事を良く言い当てる。それにフランチェスカの方が頭が良いから、全然王太子としての威厳が保てない」

 ざわめきが起こります。
 ここまで読めば、誰が書いたか分かってしまいますから。

「先見の力が聖女の……なぁこれなんて読むんだ?」

「え~っと、せんけんのめい、だよ~」

「聖女の先見の明と同じではないかと言われた。なんだよそれ、追い出してから言うなよ。聖女だったら絶対に僕の妻にしなきゃダメだ!」

「えーい、黙れ! 一体……一体何を読んでいるんだ!」

 デイヴィット王太子が顔を真っ赤にして、ついてに少し涙を流しています。
 日記を読んだだけですが、一体どうしたのでしょう。
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