7 / 33
7話 命令を出した人物
しおりを挟む
お父様がおっしゃった不自然さを確認すべく、また書類の確認をしています。
指示書類を探していると……ありました、ハンスへの命令書です。
命令は間違いなくハンス当てに出されており、期限は三ヶ月。
一体誰がこんな命令を出したのでしょう、命令の発出者は……王都の土地開発をしている公爵ですね。
命令の出し方としては問題はありませんが、一番問題なのは、発出者の名前が黒塗りで消され、その上段に公爵の名前が書かれている事です。
本来ならばこの書類は不許可となるはずですが、恐らくそんな事は関係なしに命令を出せる人物の名前が書かれていたのでしょう。
書類を太陽にかざしてみますが、黒塗りの場所には何も見えませんでした。
そんな事が出来る人物なんて、そうそう居るはずがありません。
幸いこの公爵とは面識があるので、書類整理時に見つけた書類の確認と称して聞いてみましょう。
「お忙しい所、時間を割いていただき感謝いたします公爵」
「い、いや構わんよ。それで、わざわざ何の用かね?」
午後からは自室にいるという事で、早速連絡を入れて公爵邸へとお邪魔しました。
いつもは自信いっぱいの公爵ですが、今日はその丸い顔からは不安がにじみ出ています。
「本日書類整理をしていましたら、このような書類が見つかりました。本来なら発出者の名前を訂正する場合は本人の訂正サインが必要となりますので、再提出をされるか、訂正のサインをお願いしたいのです」
発出者の名前が黒塗りにされている書類を机の上に置き、名前の欄を指差します。
すると公爵は
「そんな物は必要ない。君は黙って処理しておけばいいんだよ」
と言って書類を突っぱねました。
「今は旅行中ですが、配達して訂正サインをしてもらい、送り返してもらう、という手も使えますよ?」
「はん、フランツ王太子が適当に書いた書類に付いて、何かをする事など無いさ。せいぜいちり紙として使っておしまいさ」
「へぇ、この書類はフランツ王太子が書かれたのですか?」
「ああそう……あ!!」
上手く引っ掛かってくれましたね。
そうですか、やはりフランツ王太子が書いていたのですね。
書類を適当に書いても通さざるを得ない人物なんて、最低限でも公爵からでしょう。
その公爵が名前を隠そうとする人物なんて王族、しかも最近まで王都にいた王族と言えばフランツ王太子しかいません。
はぁ、あの王太子は何を考えているんでしょうか。
まさか国王陛下がフランツ王太子に留守を任せた理由、理解できていませんか?
「それではもう一つだけ教えてください。なぜハンスにばかり、こんな仕事を任せるのでしょうか」
「し、しらん! 俺は何も知らない!」
「そうですか、残念です。それではもう一枚の書類なのですが、こちらの金額と実際の品物の数が大幅に合わないのですが、そちらは会計長に 付箋を付けて提出しておきますね」
「そ、その書類は! ま、まて、待ってくれ! フランツ王太子の指示だ! 王太子が君とハンスを合わせないように、面倒な仕事を全てハンスに回したんだ!」
ああ、やはりそうでしたか。
薄々感じてはいましたが、信じたくはありませんでした。
仮にも元婚約者が、私の幸せを踏みにじる事をするなんて、一国の王太子が、意味のない命令を出すなんて。
「でも、なぜハンスの事がバレたのでしょうか」
「え? だって君、あちこちで言っていたそうじゃないか。幼なじみのハンスに片思いをしていて、婚約破棄されたからハンスに告白するって」
……あ。
そういえば私、秘密ですよ? とか言いながら、結構な人数に話ていました。
まさかそれがこんな事になるなんて思いもしませんでした。
「私がハンスに告白したところで、フラれるのは目に見えているんですが……。なぜそこまで妨害をするのでしょう」
「妨害はするだろう、ハンスを諦めさせるために。それに君が居なくなってから王宮での仕事は滞っているし、旅行に行ったら君が仕事を終わらせてくれるとか言っていた。ハンスの元にやるわけにはいかないからな」
「なぜ私が仕事を終わらせるのですか?」
「いや、そうおっしゃっていたが?」
「……」
「……」
どういう事でしょうか、全く意味が分かりません。
公爵の反応も同じで、私が聞いていない事だと知って困惑しています。
「頼まれたのでは……ないのかね?」
「初耳です」
公爵がよろけてイスに座りました。
ああ、この方も王太子達の犠牲者でしたか。
「す、済まないが、命令が出ている以上私にはどうする事も出来ない……」
「いえ、心中お察しします。一つ確認ですが、私を王都から出すなと、命令は出ていますか?」
「いや、それは出ていないはずだ。ああ、行くのかね?」
「はい。これ以上は付き合いきれませんので」
「そうか。すまなかったな、これからは少なくとも私からは何もしない、命令されてもはぐらかそう」
「ありがとうございます。では書類は見なかった事にします……が、ほどほどに願います」
「う、うむ」
公爵邸をでて、私は急いで旅支度を始めます。
ハンス、いま会いに行きます!
指示書類を探していると……ありました、ハンスへの命令書です。
命令は間違いなくハンス当てに出されており、期限は三ヶ月。
一体誰がこんな命令を出したのでしょう、命令の発出者は……王都の土地開発をしている公爵ですね。
命令の出し方としては問題はありませんが、一番問題なのは、発出者の名前が黒塗りで消され、その上段に公爵の名前が書かれている事です。
本来ならばこの書類は不許可となるはずですが、恐らくそんな事は関係なしに命令を出せる人物の名前が書かれていたのでしょう。
書類を太陽にかざしてみますが、黒塗りの場所には何も見えませんでした。
そんな事が出来る人物なんて、そうそう居るはずがありません。
幸いこの公爵とは面識があるので、書類整理時に見つけた書類の確認と称して聞いてみましょう。
「お忙しい所、時間を割いていただき感謝いたします公爵」
「い、いや構わんよ。それで、わざわざ何の用かね?」
午後からは自室にいるという事で、早速連絡を入れて公爵邸へとお邪魔しました。
いつもは自信いっぱいの公爵ですが、今日はその丸い顔からは不安がにじみ出ています。
「本日書類整理をしていましたら、このような書類が見つかりました。本来なら発出者の名前を訂正する場合は本人の訂正サインが必要となりますので、再提出をされるか、訂正のサインをお願いしたいのです」
発出者の名前が黒塗りにされている書類を机の上に置き、名前の欄を指差します。
すると公爵は
「そんな物は必要ない。君は黙って処理しておけばいいんだよ」
と言って書類を突っぱねました。
「今は旅行中ですが、配達して訂正サインをしてもらい、送り返してもらう、という手も使えますよ?」
「はん、フランツ王太子が適当に書いた書類に付いて、何かをする事など無いさ。せいぜいちり紙として使っておしまいさ」
「へぇ、この書類はフランツ王太子が書かれたのですか?」
「ああそう……あ!!」
上手く引っ掛かってくれましたね。
そうですか、やはりフランツ王太子が書いていたのですね。
書類を適当に書いても通さざるを得ない人物なんて、最低限でも公爵からでしょう。
その公爵が名前を隠そうとする人物なんて王族、しかも最近まで王都にいた王族と言えばフランツ王太子しかいません。
はぁ、あの王太子は何を考えているんでしょうか。
まさか国王陛下がフランツ王太子に留守を任せた理由、理解できていませんか?
「それではもう一つだけ教えてください。なぜハンスにばかり、こんな仕事を任せるのでしょうか」
「し、しらん! 俺は何も知らない!」
「そうですか、残念です。それではもう一枚の書類なのですが、こちらの金額と実際の品物の数が大幅に合わないのですが、そちらは会計長に 付箋を付けて提出しておきますね」
「そ、その書類は! ま、まて、待ってくれ! フランツ王太子の指示だ! 王太子が君とハンスを合わせないように、面倒な仕事を全てハンスに回したんだ!」
ああ、やはりそうでしたか。
薄々感じてはいましたが、信じたくはありませんでした。
仮にも元婚約者が、私の幸せを踏みにじる事をするなんて、一国の王太子が、意味のない命令を出すなんて。
「でも、なぜハンスの事がバレたのでしょうか」
「え? だって君、あちこちで言っていたそうじゃないか。幼なじみのハンスに片思いをしていて、婚約破棄されたからハンスに告白するって」
……あ。
そういえば私、秘密ですよ? とか言いながら、結構な人数に話ていました。
まさかそれがこんな事になるなんて思いもしませんでした。
「私がハンスに告白したところで、フラれるのは目に見えているんですが……。なぜそこまで妨害をするのでしょう」
「妨害はするだろう、ハンスを諦めさせるために。それに君が居なくなってから王宮での仕事は滞っているし、旅行に行ったら君が仕事を終わらせてくれるとか言っていた。ハンスの元にやるわけにはいかないからな」
「なぜ私が仕事を終わらせるのですか?」
「いや、そうおっしゃっていたが?」
「……」
「……」
どういう事でしょうか、全く意味が分かりません。
公爵の反応も同じで、私が聞いていない事だと知って困惑しています。
「頼まれたのでは……ないのかね?」
「初耳です」
公爵がよろけてイスに座りました。
ああ、この方も王太子達の犠牲者でしたか。
「す、済まないが、命令が出ている以上私にはどうする事も出来ない……」
「いえ、心中お察しします。一つ確認ですが、私を王都から出すなと、命令は出ていますか?」
「いや、それは出ていないはずだ。ああ、行くのかね?」
「はい。これ以上は付き合いきれませんので」
「そうか。すまなかったな、これからは少なくとも私からは何もしない、命令されてもはぐらかそう」
「ありがとうございます。では書類は見なかった事にします……が、ほどほどに願います」
「う、うむ」
公爵邸をでて、私は急いで旅支度を始めます。
ハンス、いま会いに行きます!
31
お気に入りに追加
7,800
あなたにおすすめの小説
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。
婚約破棄?それならこの国を返して頂きます
Ruhuna
ファンタジー
大陸の西側に位置するアルティマ王国
500年の時を経てその国は元の国へと返り咲くために時が動き出すーーー
根暗公爵の娘と、笑われていたマーガレット・ウィンザーは婚約者であるナラード・アルティマから婚約破棄されたことで反撃を開始した
婚約破棄?とっくにしてますけど笑
蘧饗礪
ファンタジー
ウクリナ王国の公爵令嬢アリア・ラミーリアの婚約者は、見た目完璧、中身最悪の第2王子エディヤ・ウクリナである。彼の10人目の愛人は最近男爵になったマリハス家の令嬢ディアナだ。
さて、そろそろ婚約破棄をしましょうか。
【完結】聖女が性格良いと誰が決めたの?
仲村 嘉高
ファンタジー
子供の頃から、出来の良い姉と可愛い妹ばかりを優遇していた両親。
そしてそれを当たり前だと、主人公を蔑んでいた姉と妹。
「出来の悪い妹で恥ずかしい」
「姉だと知られたくないから、外では声を掛けないで」
そう言ってましたよね?
ある日、聖王国に神のお告げがあった。
この世界のどこかに聖女が誕生していたと。
「うちの娘のどちらかに違いない」
喜ぶ両親と姉妹。
しかし教会へ行くと、両親や姉妹の予想と違い、聖女だと選ばれたのは「出来損ない」の次女で……。
因果応報なお話(笑)
今回は、一人称です。
もう、終わった話ですし
志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。
その知らせを聞いても、私には関係の無い事。
だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥
‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの
少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?
家族と婚約者に冷遇された令嬢は……でした
桜月雪兎
ファンタジー
アバント伯爵家の次女エリアンティーヌは伯爵の亡き第一夫人マリリンの一人娘。
彼女は第二夫人や義姉から嫌われており、父親からも疎まれており、実母についていた侍女や従者に義弟のフォルクス以外には冷たくされ、冷遇されている。
そんな中で婚約者である第一王子のバラモースに婚約破棄をされ、後釜に義姉が入ることになり、冤罪をかけられそうになる。
そこでエリアンティーヌの素性や両国の盟約の事が表に出たがエリアンティーヌは自身を蔑ろにしてきたフォルクス以外のアバント伯爵家に何の感情もなく、実母の実家に向かうことを決意する。
すると、予想外な事態に発展していった。
*作者都合のご都合主義な所がありますが、暖かく見ていただければと思います。
無能とされた双子の姉は、妹から逃げようと思う~追放はこれまでで一番素敵な贈り物
ゆうぎり
ファンタジー
私リディアーヌの不幸は双子の姉として生まれてしまった事だろう。
妹のマリアーヌは王太子の婚約者。
我が公爵家は妹を中心に回る。
何をするにも妹優先。
勿論淑女教育も勉強も魔術もだ。
そして、面倒事は全て私に回ってくる。
勉強も魔術も課題の提出は全て代わりに私が片付けた。
両親に訴えても、将来公爵家を継ぎ妹を支える立場だと聞き入れて貰えない。
気がつけば私は勉強に関してだけは、王太子妃教育も次期公爵家教育も修了していた。
そう勉強だけは……
魔術の実技に関しては無能扱い。
この魔術に頼っている国では私は何をしても無能扱いだった。
だから突然罪を着せられ国を追放された時には喜んで従った。
さあ、どこに行こうか。
※ゆるゆる設定です。
※2021.9.9 HOTランキング入りしました。ありがとうございます。
お姉さまとの真実の愛をどうぞ満喫してください
カミツドリ
ファンタジー
「私は真実の愛に目覚めたのだ! お前の姉、イリヤと結婚するぞ!」
真実の愛を押し通し、子爵令嬢エルミナとの婚約を破棄した侯爵令息のオデッセイ。
エルミナはその理不尽さを父と母に報告したが、彼らは姉やオデッセイの味方をするばかりだった。
家族からも見放されたエルミナの味方は、幼馴染のローレック・ハミルトン公爵令息だけであった。
彼女は家族愛とはこういうものだということを実感する。
オデッセイと姉のイリヤとの婚約はその後、上手くいかなくなり、エルミナには再びオデッセイの元へと戻るようにという連絡が入ることになるが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる