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20 カマかけ

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「これは確認しないといけないわね」

 かといって馬鹿正直に聞いても、誰も話してはくれ無いだろう。
 なので知ってて当然というフリをして、フィリップ王太子に話を聞きに行こう。

「こんにちはフィリップ王太子。三国同盟は順調そうですね」

 廊下で待ち伏せして、偶然出会った感じで声をかけた。

「イングリッドさん。ええ、お陰様で順調です」

「お力になれてよかったです。急がないといけませんからね」

「ええ、時間をかけて手遅れになっては元も子もありません。良い事は直ぐに取り掛かりませんと」

「最低限防衛が間に合うタイミングじゃないとダメですもんね」

「本当にそうです。今なら相互にやり取りをして、防衛は問題ないでしょう」

「良かった。でも攻めるにしては戦力不足でしょうか」

「う~ん、相手が相手ですからね、各国だけでは無理ですし、せめて合同訓練はしないと無理でしょう」

「リシア連邦ですもんね」

「いえ、同盟国も賛同をして……ん? ひょっとしてイングリッドさん、カマを掛けましたか?」

「バレましたか」

「これはしてやられましたが、え? 婚姻話の時にお聞きでは無かったのですか?」

「有無を言わせず送られましたので。それに以前の私は世俗に興味がなく、閉じこもっていましたから」

「そうでしたね。目が覚めてくれたのは嬉しい限りですが、ちなみにどの段階で?」

「気が付いたのは昨晩です。今になって父が、軍備に優れる国に私を嫁がせようとした理由を考えて、あ、と」

「そうでしたか。まぁ今になって隠しても仕方がありません。リシア連邦とシチーナ共和国ですよ。あの国は常に敵を探していますし、強気な姿勢を崩す事もありません」

 シチーナ共和国もだったんだ。あの国はなぜか妙に強気に出るわね。
 確かに人口は多いし、経済も急発展を遂げている。でもあちこちにちょっかいを出しまくり、どの国とも問題を抱えている。
 それがリシア連邦と手を組んで、遂に動き出したのね。

「あの2国が手を組んだのなら、確かに3国同盟はうってつけですね。南下を開始しても、一枚岩となって対応できますから」

「それを知らずに成し遂げてしまうとは、イングリッドさんは恐ろしい人だ」

「それは……単なる偶然ですね」

 本当に偶然。
 私が嫁がなくても良いように、祖国に武器を輸出できる方法を考えた結果だから。
 でもよかった、結果論だけど、国を守る事に繋がったみたい。

「ちなみにイングリッドさん、同盟が増えそうになる場合はどうしますか?」

「そのまま増やして良いと思います。機を見て情報は流すつもりでしたし、あの国ならもう知っててもおかしくありませんし」

「情報が強みの国ですからね」

 イースター国とシュタット国の間にある国、きっと向こうからアクションがあると思うから、その時に対応しても大丈夫だと思う。

「あの、詳しい情報を教えて頂く事は……」

「残念ながらできません。自国の能力を全て晒す事になりますから」

「そうですよね、すみません変な事を言って」

「いえ、でも方法はありますよ?」

「それはなんですか!?」

「私と夫婦になれば、国の機密にも触れられます」

「あ~……今は御免なさい」

「それは残念」

 ヘンな事を言っちゃった。このままだと藪蛇になりそうだから、ここは退散しよう。
 それにしてもイケナイわね、私は自分の意思で相手を選ぶために3国同盟を考えたのに、別の方向に話が進んじゃってる。
 悪くは無いけど、戦争になりそうとなると、もっと別の事も考えないといけない。

 そう、私は自分のやりたい事をやるの。戦争なんかに妨害されるなんて御免だわ。
 戦争回避の方法を考えよう。

 それにはまず情報収集だけど、私がこの国に居る限り、大した情報は入ってこないだろう。
 ん~、どうにかして私の手足となる人物を見つけないと。

 一番いいのは一度国に戻る事だけど、多分戻させてはくれない。
 何とかこの国で情報を集める当てを見つけないと。

 自分の国だったら情報屋とかが使えるのにな、やっぱり他国は制限が多すぎる。
 アレを……やるしかないかしら。
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