3 / 28
3 隣国からの招待状
しおりを挟む
お姉様に色々と教えてもらい、私は自分磨きを始めた。
「あなたは基本的な事は出来ているけど、自分の見せ方を分かっていないわ」
「見せ方……」
その言葉、さっきも言われた気がするわ。
みんなに好かれるお姉様がいう事だもん、まずは言う通りにする事が先決ね!
残念ながらその日の夜も、旦那様は帰ってこなかった。
2人分の食事は、無駄になってしまった。
私はいつになったら3人分の食事を作れるようになるんだろう。
翌日からもひたすらお姉様に教えてもらい、自分磨きをしていった。
きっとお姉様の様にキレイになれば、旦那様も私に振り向いてくれて、一緒に居てくれるはず。
そうなる事を夢見て、私はひたすらにお姉様の教えを実践していく。
そんなある日、お姉様に言われてパーティーに参加する事になった。
「あなたは元がいいのだから、きっと沢山の男性が言い寄って来るわよ」
「そうかしら……でもそうだとしたら、お姉様の教え方が良かったって事ね」
旦那様には今晩は仕事で遅くなると伝えた。
きちんと食事とお金は置いておいたから、私の事で不安に思う事は無いと思う。
それにしても、お姉様はキレイだ。
薄いピンクのドレスも似合っているし、髪もキレイ、背もスラリとしていてスタイルもいい。
それにたたずまいがすごい。
そこに居るだけで存在感があるし、それでいて誰も拒否しない、誰でも声をかけやすい雰囲気だ。
はぁ~……、それに比べて私は……。
「イングリッド、こちらリチャードさんよ。隣の国からお仕事でこっちに来られているの」
「初めましてイングリッドと申します。いつも姉がお世話になっております」
そう言ってドレスのスカートをつまみ、軽く腰を落として会釈する。
ううっ! この人もイケメンだ! この会場に居る人はみんな美男美女ばっかり!
旦那様以上の美男子はいないけど。
きっとこの人は、珍獣を見るような感じで私に挨拶をしに来たんだわ。
だってほら、この方リチャードさんは、私を見たまま一言も声を出さない。
きっと汚らしいモノには声をかけるのも嫌なんだわ。
「リチャードさん、ご挨拶を」
「は! ししし、失礼しました! 私はリチャードと申します。クリスティーヌさんにはよくお世話になっております!」
そう言って腰を90度に曲げて頭を下げた。
随分と緊張をしていらっしゃるようだけど……ああ、きっとお姉様の側に居るからね。
お姉様の様なキレイな人の隣にいると、やっぱり男性は緊張してしまうのかしら。
その後も数人の男性と挨拶をしたけど、やっぱりみんな緊張しっぱなしだった。
そんな男性と平気な顔で会話が出来るなんて、やっぱりお姉様はすごいわ!
パーティーが終わり、お姉様と馬車で帰っている。
針の筵の様な気分だったわ。
でもお姉様は凄いな。あんな中に居てもひときわ存在感があった。
「イングリッド、どうだったかしら」
「お姉様は流石ね! あんな美男美女の中に居ても、一番輝いていたわ!」
「そう? ありがとう。でもあなたもとても輝いていたわよ?」
「私なんてダメよ。みんな物珍しいから挨拶に来ただけ。お姉様の金魚の糞よ」
「……今度はそこを直さなきゃね」
「ソコ? 物珍しさを無くすの?」
「そうじゃないわ。明日からの楽しみが出来たわね」
数日が過ぎて、お姉様の教えを忠実にクリアしていったけど……正直、今は何をしているのか分かってない。
たまに色んな人が来て私をほめちぎって行ったりするけど、何の意味があるんだろう。
そんなある日の事、旦那様が珍しくはやくに家に帰ってきた。
「お帰りなさいアナタ。今日の夕食で食べたい物はありますか?」
そんな事を聞いてみたけど、今日もまた外出するかもしれない。
「……そうだな、今日は久しぶりに鶏肉が食いたいな」
「!! 分かりました。腕によりをかけて作りますね!」
旦那様、今日は家に居てくれるみたい!
うれしい……久しぶりに2人で食事ができるのね。
お姉様、お姉様の言う通りに自分磨きをした成果がでました!
「お前、何かいい事でもあったのか」
「いい事ですか? いい事でしたら今、アナタと一緒に食事を出来る事がとても嬉しいわ」
「そうか。ならたまには家で食事をしよう」
「!? ええ、ええ! 食べたい物があれば、何でもおっしゃって下さいね!」
涙が出そうなほどに嬉しい。
でも泣いたらダメ。嬉しいんだから、笑わなきゃ。
旦那様に泣き顔なんて見せられないもの。
嬉しすぎて、次の日にはお姉様に報告をしに行ってしまった。
お姉様も喜んでくれた。
お姉様には頭が上がらないわね。
昔から上がらないけど。
最近は2~3日に1回は家で食事をしてくれるようになり、家事も仕事も断然やる気が出てきた。
きっともう少ししたら、新婚時代みたいに毎日一緒に居てくれる様になるわ。
そして今日は旦那様と一緒に食事をしている。
旦那様はチラチラと私を見てくれてる。自分磨きが成功しているのかしら。
もしそうだとしたら、もっともっと磨いたら、ずっと家に居てくれるようになるかも。
少しぎこちないけど会話も出来てるし、時々私を気遣う事も言ってくれる。
こんなに幸せなのは新婚以来だわ。
ドアがノックされた。
誰かしら、こんな夜に。
「私が出るわ。はい、どなたでしょうか?」
ドアを開けると、そこには白髪で白いひげを生やした細身の男性が立っていた。
「夜分遅くに申し訳ございません。こちらはアントン様のお屋敷で間違いないでしょうか」
お屋敷? 部屋が2つしかない小さな家だからお屋敷じゃないけど、アントンは旦那様の事だ。
だからお屋敷というのは社交辞令の様なものかしら。
「はい、アントンは私の夫です。アナタ、お客様がお見えになっています」
「ああ、いえいえ、私が用事があるのはその奥様です。イングリッド様で間違いございませんか?」
「え? はい、イングリッドは私ですが……?」
旦那様も何事かと玄関に出てきた。
この男性が私に何の用か知らないけど、旦那様が近くに居ると思うと安心する。
「初めまして、私は隣の国イースターで、ウィリアムズ王家の執事しております。イングリッド様に城への招待状をお渡しにお伺いしました」
丁寧の頭を下げて両手を差し出した。
手には手紙が持たれている。
手紙にはイングリッド様へ、と書かれているから、私で間違いないと思う。
「我が国のリチャード王太子より、イングリッド様を妃として迎えたいと、そう申しつかっております」
「「……え?」」
「あなたは基本的な事は出来ているけど、自分の見せ方を分かっていないわ」
「見せ方……」
その言葉、さっきも言われた気がするわ。
みんなに好かれるお姉様がいう事だもん、まずは言う通りにする事が先決ね!
残念ながらその日の夜も、旦那様は帰ってこなかった。
2人分の食事は、無駄になってしまった。
私はいつになったら3人分の食事を作れるようになるんだろう。
翌日からもひたすらお姉様に教えてもらい、自分磨きをしていった。
きっとお姉様の様にキレイになれば、旦那様も私に振り向いてくれて、一緒に居てくれるはず。
そうなる事を夢見て、私はひたすらにお姉様の教えを実践していく。
そんなある日、お姉様に言われてパーティーに参加する事になった。
「あなたは元がいいのだから、きっと沢山の男性が言い寄って来るわよ」
「そうかしら……でもそうだとしたら、お姉様の教え方が良かったって事ね」
旦那様には今晩は仕事で遅くなると伝えた。
きちんと食事とお金は置いておいたから、私の事で不安に思う事は無いと思う。
それにしても、お姉様はキレイだ。
薄いピンクのドレスも似合っているし、髪もキレイ、背もスラリとしていてスタイルもいい。
それにたたずまいがすごい。
そこに居るだけで存在感があるし、それでいて誰も拒否しない、誰でも声をかけやすい雰囲気だ。
はぁ~……、それに比べて私は……。
「イングリッド、こちらリチャードさんよ。隣の国からお仕事でこっちに来られているの」
「初めましてイングリッドと申します。いつも姉がお世話になっております」
そう言ってドレスのスカートをつまみ、軽く腰を落として会釈する。
ううっ! この人もイケメンだ! この会場に居る人はみんな美男美女ばっかり!
旦那様以上の美男子はいないけど。
きっとこの人は、珍獣を見るような感じで私に挨拶をしに来たんだわ。
だってほら、この方リチャードさんは、私を見たまま一言も声を出さない。
きっと汚らしいモノには声をかけるのも嫌なんだわ。
「リチャードさん、ご挨拶を」
「は! ししし、失礼しました! 私はリチャードと申します。クリスティーヌさんにはよくお世話になっております!」
そう言って腰を90度に曲げて頭を下げた。
随分と緊張をしていらっしゃるようだけど……ああ、きっとお姉様の側に居るからね。
お姉様の様なキレイな人の隣にいると、やっぱり男性は緊張してしまうのかしら。
その後も数人の男性と挨拶をしたけど、やっぱりみんな緊張しっぱなしだった。
そんな男性と平気な顔で会話が出来るなんて、やっぱりお姉様はすごいわ!
パーティーが終わり、お姉様と馬車で帰っている。
針の筵の様な気分だったわ。
でもお姉様は凄いな。あんな中に居てもひときわ存在感があった。
「イングリッド、どうだったかしら」
「お姉様は流石ね! あんな美男美女の中に居ても、一番輝いていたわ!」
「そう? ありがとう。でもあなたもとても輝いていたわよ?」
「私なんてダメよ。みんな物珍しいから挨拶に来ただけ。お姉様の金魚の糞よ」
「……今度はそこを直さなきゃね」
「ソコ? 物珍しさを無くすの?」
「そうじゃないわ。明日からの楽しみが出来たわね」
数日が過ぎて、お姉様の教えを忠実にクリアしていったけど……正直、今は何をしているのか分かってない。
たまに色んな人が来て私をほめちぎって行ったりするけど、何の意味があるんだろう。
そんなある日の事、旦那様が珍しくはやくに家に帰ってきた。
「お帰りなさいアナタ。今日の夕食で食べたい物はありますか?」
そんな事を聞いてみたけど、今日もまた外出するかもしれない。
「……そうだな、今日は久しぶりに鶏肉が食いたいな」
「!! 分かりました。腕によりをかけて作りますね!」
旦那様、今日は家に居てくれるみたい!
うれしい……久しぶりに2人で食事ができるのね。
お姉様、お姉様の言う通りに自分磨きをした成果がでました!
「お前、何かいい事でもあったのか」
「いい事ですか? いい事でしたら今、アナタと一緒に食事を出来る事がとても嬉しいわ」
「そうか。ならたまには家で食事をしよう」
「!? ええ、ええ! 食べたい物があれば、何でもおっしゃって下さいね!」
涙が出そうなほどに嬉しい。
でも泣いたらダメ。嬉しいんだから、笑わなきゃ。
旦那様に泣き顔なんて見せられないもの。
嬉しすぎて、次の日にはお姉様に報告をしに行ってしまった。
お姉様も喜んでくれた。
お姉様には頭が上がらないわね。
昔から上がらないけど。
最近は2~3日に1回は家で食事をしてくれるようになり、家事も仕事も断然やる気が出てきた。
きっともう少ししたら、新婚時代みたいに毎日一緒に居てくれる様になるわ。
そして今日は旦那様と一緒に食事をしている。
旦那様はチラチラと私を見てくれてる。自分磨きが成功しているのかしら。
もしそうだとしたら、もっともっと磨いたら、ずっと家に居てくれるようになるかも。
少しぎこちないけど会話も出来てるし、時々私を気遣う事も言ってくれる。
こんなに幸せなのは新婚以来だわ。
ドアがノックされた。
誰かしら、こんな夜に。
「私が出るわ。はい、どなたでしょうか?」
ドアを開けると、そこには白髪で白いひげを生やした細身の男性が立っていた。
「夜分遅くに申し訳ございません。こちらはアントン様のお屋敷で間違いないでしょうか」
お屋敷? 部屋が2つしかない小さな家だからお屋敷じゃないけど、アントンは旦那様の事だ。
だからお屋敷というのは社交辞令の様なものかしら。
「はい、アントンは私の夫です。アナタ、お客様がお見えになっています」
「ああ、いえいえ、私が用事があるのはその奥様です。イングリッド様で間違いございませんか?」
「え? はい、イングリッドは私ですが……?」
旦那様も何事かと玄関に出てきた。
この男性が私に何の用か知らないけど、旦那様が近くに居ると思うと安心する。
「初めまして、私は隣の国イースターで、ウィリアムズ王家の執事しております。イングリッド様に城への招待状をお渡しにお伺いしました」
丁寧の頭を下げて両手を差し出した。
手には手紙が持たれている。
手紙にはイングリッド様へ、と書かれているから、私で間違いないと思う。
「我が国のリチャード王太子より、イングリッド様を妃として迎えたいと、そう申しつかっております」
「「……え?」」
15
お気に入りに追加
1,689
あなたにおすすめの小説
お父様お母様、お久しぶりです。あの時わたしを捨ててくださりありがとうございます
柚木ゆず
恋愛
ヤニックお父様、ジネットお母様。お久しぶりです。
わたしはアヴァザール伯爵家の長女エマとして生まれ、6歳のころ貴方がたによって隣国に捨てられてしまいましたよね?
当時のわたしにとってお二人は大事な家族で、だからとても辛かった。寂しくて悲しくて、捨てられたわたしは絶望のどん底に落ちていました。
でも。
今は、捨てられてよかったと思っています。
だって、その出来事によってわたしは――。大切な人達と出会い、大好きな人と出逢うことができたのですから。
子供の言い分 大人の領分
ひおむし
恋愛
第二王子は、苛立っていた。身分を超えて絆を結んだ、元平民の子爵令嬢を苛む悪辣な婚約者に。気持ちを同じくする宰相子息、騎士団長子息は、ともに正義の鉄槌をくださんと立ち上がろうーーーとしたら、何故か即効で生徒指導室に放り込まれた。
「はーい、全員揃ってるかなー」
王道婚約破棄VSダウナー系教師。
いつも学園モノの婚約破棄見るたびに『いや教師何やってんの、学校なのに』と思っていた作者の鬱憤をつめた作品です。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
一体だれが悪いのか?それはわたしと言いました
LIN
恋愛
ある日、国民を苦しめて来たという悪女が処刑された。身分を笠に着て、好き勝手にしてきた第一王子の婚約者だった。理不尽に虐げられることもなくなり、ようやく平和が戻ったのだと、人々は喜んだ。
その後、第一王子は自分を支えてくれる優しい聖女と呼ばれる女性と結ばれ、国王になった。二人の優秀な側近に支えられて、三人の子供達にも恵まれ、幸せしか無いはずだった。
しかし、息子である第一王子が嘗ての悪女のように不正に金を使って豪遊していると報告を受けた国王は、王族からの追放を決めた。命を取らない事が温情だった。
追放されて何もかもを失った元第一王子は、王都から離れた。そして、その時の出会いが、彼の人生を大きく変えていくことになる…
※いきなり処刑から始まりますのでご注意ください。
【完結】旦那に愛人がいると知ってから
よどら文鳥
恋愛
私(ジュリアーナ)は旦那のことをヒーローだと思っている。だからこそどんなに性格が変わってしまっても、いつの日か優しかった旦那に戻ることを願って今もなお愛している。
だが、私の気持ちなどお構いなく、旦那からの容赦ない暴言は絶えない。当然だが、私のことを愛してはくれていないのだろう。
それでも好きでいられる思い出があったから耐えてきた。
だが、偶然にも旦那が他の女と腕を組んでいる姿を目撃してしまった。
「……あの女、誰……!?」
この事件がきっかけで、私の大事にしていた思い出までもが崩れていく。
だが、今までの苦しい日々から解放される試練でもあった。
※前半が暗すぎるので、明るくなってくるところまで一気に更新しました。
妻が通う邸の中に
月山 歩
恋愛
最近妻の様子がおかしい。昼間一人で出掛けているようだ。二人に子供はできなかったけれども、妻と愛し合っていると思っている。僕は妻を誰にも奪われたくない。だから僕は、妻の向かう先を調べることににした。
悪妃の愛娘
りーさん
恋愛
私の名前はリリー。五歳のかわいい盛りの王女である。私は、前世の記憶を持っていて、父子家庭で育ったからか、母親には特別な思いがあった。
その心残りからか、転生を果たした私は、母親の王妃にそれはもう可愛がられている。
そんなある日、そんな母が父である国王に怒鳴られていて、泣いているのを見たときに、私は誓った。私がお母さまを幸せにして見せると!
いろいろ調べてみると、母親が悪妃と呼ばれていたり、腹違いの弟妹がひどい扱いを受けていたりと、お城は問題だらけ!
こうなったら、私が全部解決してみせるといろいろやっていたら、なんでか父親に構われだした。
あんたなんてどうでもいいからほっといてくれ!
(完)大好きなお姉様、なぜ?ー夫も子供も奪われた私
青空一夏
恋愛
妹が大嫌いな姉が仕組んだ身勝手な計画にまんまと引っかかった妹の不幸な結婚生活からの恋物語。ハッピーエンド保証。
中世ヨーロッパ風異世界。ゆるふわ設定ご都合主義。魔法のある世界。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる