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一章
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「雪璃。今日も、いい?」
普段よりも低い声。私は、その声を聞くだけで胸の奥がきゅんとなる。
「雷雨様の部屋の清掃が終わってな……きゃっ!?」
「待てない。そんなのあとでいーよ」
「っ……」
そういって、ベッドに押し倒された。私の乱れたメイド服を見た雷雨様は、リボンをすかざす外す。私のボタンが一つ、またひとつと、はずされた。
「お前は俺にとって唯一の血だから」
「んっ……」
「普段はクールぶっているくせに、ベッドの上では甘い声を出す雪璃は相変わらず可愛いな」
とろけるような甘い声。私は今日も堕とされる。妖艶で、何をやらせても完璧で、私を悦ばせるのが得意で。人間とは比べものにならないくらい、美しきヴァンパイアに。
☆ ☆ ☆
「……雨様。雷雨様、起きてください」
「う~ん」
私は部屋のカーテンを勢いよく開けた。
「ぎゃあああ!! 浄化されるぅぅ!!」
「雷雨様。今は夜なので安心してください」
「冗談だってわかってたし」
「そのわりにビビってたじゃないですか」
「雪璃は主人である俺をもっと敬うべき~」
ベッドでゴロゴロしているグータラなこの人は、私が仕えているご主人様。西園寺雷雨様。銀髪に黒い瞳。日本人にしては珍しい髪色をしているが、それにはワケがある。
西園寺家はいくつものホテルを経営していて、高級レストランのお店も数多く出している。
ちなみに私、佐倉雪璃は彼の専属メイドだ。腰まである黒髪を2つ結びにしている。瞳は青色。これでもれっきとした日本人です。
年齢的にはお互いに高校2年生なのだが、私のご主人様は人間じゃない。そのため、活動は日が沈んだくらいから。
雷雨様の正体。それは……。
「雪璃、メシ~。腹減った」
「ご用意は出来ております。本日の食事は、トマトジュースとピーマンの肉詰めですよ」
「俺がピーマン嫌いなの知ってるくせに毎回、手の込んだ嫌がらせするの、なんなの? 俺のこと嫌い?」
「昨晩もお楽しみだったようなので、ちょっとした意地悪です」
「ヤキモチ?」
「銀の銃で撃ちましょうか」
「冗談だって!」
雷雨様の正体は人の生き血を吸うヴァンパイア。昨晩も公園にいる女の子に声をかけて血を吸っていた。心配そうに声をかけるくせに、それもこれも自分のためなのが悪質。
お金持ちのお坊ちゃま、高身長、イケメン、成績優秀、スポーツ万能。それだけ揃っていれば自然とモテるのも当然といえば当然で。
今の時代、ヴァンパイアはそれほど珍しくない。昔は都市伝説の類だったが、今ではそれなりに数はいる。とはいえ、出会えば血を吸われるため、怖がられているのは昔も今も同じ。
「さっさと支度してください。
学校に遅刻しますよ」
「雪璃が着替えさせて。つーか、メシが先ー!」
雷雨様は、人外のために設立された夜間の学校に通っている。ほんの一部だが、私のような人間もいる。その多くがヴァンパイアハンターやら、私のようにそれなりに強い人が通っていたり。
私はヴァンパイアハンターではないが、護身用のために旦那様から銀の銃を貸してもらっている。
「だからご飯はそれです」
私はトマトジュースとピーマンの肉詰めを指さした。
「むーり!」
「好き嫌いしたら大きくなりませんよ」
「俺、雪璃より高いけど?」
「……っ」
そういって迫ってくる雷雨様。ちょっとドキッとしたけど、こんなことで動揺してはメイドとして失格だ。いつの間にベッドから出たのよ。さっきまで眠そうにしてたくせに。
「雪璃、今日もいい?」
「ベッドメイキングが終わってません。それに昨晩は満足いくまで吸ったのでしょう?」
「あれは別。雪璃の血は他の子とは比べものにならないくらい美味いから」
ーーードサッ。ベッドが軋む。気がつけば、私は押し倒されていた。
「ちょ……ベッド、メイキングが」
「そんなの後でいいよ。ほら、脱げよ」
「誰が素直に脱ぐもんですか」
私は太ももにくくり付けている銃を雷雨様に向けた。
「俺に勝てると思ってる?」
「っ……」
あっさりと取り上げられてしまった。銀に触ればヴァンパイアの手は火傷よりもひどく、ただれてしまうと聞くが、現代では耐性がついているのか、軽く触れるくらいは平気みたい。もちろん、銀の銃で心臓を撃てば致命傷になるのは本当だ。
「本気じゃないくせに」
「当然だろ。俺の可愛いメイドに傷が残ったら大変だし。まあ軽い傷くらいなら、俺が舐めて治してやる」
どうやら吸血鬼が舐めれば、人間の傷はある程度回復するようで。さすがに治せるのは軽症程度だけど。
「ツバでもつければ治るから舐めなくていい」
「雪璃は男前だなぁ。俺に舐められるのは嫌か?」
……嫌じゃない。
「普段はクールだけど、俺が口説くとすぐに女らしい顔をするもんな。そういうところも含めて、俺はお前のこと愛してるぞ」
―――チュ。私の頬にキスが落とされた。
「あ、愛してるとか簡単に言わないで」
なんでそういうこと、恥ずかしがらずに言えるわけ? チャラ男のくせに。他の子の血を吸ってるくせに。本当は私じゃなくていいんじゃないの?
「本当のことだぞ。それに勘違いしてないか?」
「勘違い?」
「雪璃は人間だ。俺が飲みたいときに毎回吸血してたら、血が足りなくなって貧血で倒れる。雪璃の体力を回復させるためにも違う女の血は必要だろ?」
「私のために?」
「それもあるけど、俺が他の子を吸血すればヤキモチ妬くかなって」
「……バカ」
「ひどくね!?」
でも、スキ。そんな雷雨様が私は好き。
「雪璃は俺の唯一なんだから。契約だってしたのに、俺がお前を裏切るわけないだろ?」
「そんなの、わかってるわ」
唯一の血。それはヴァンパイアにとって運命の人を意味する。唯一の血の味は甘く、とろけるような味らしい。本能のままに相手を求めてしまう。
「メイド服ってエロいよな」
「飽きないの?」
「飽きるわけないだろ。雪璃のメイド服を見て、毎日脱がせたいと思ってる」
「変態」
「主人に向かって、その態度はなんだ? いうことを聞かないメイドには、お仕置きが必要だな」
「ちょ……」
「主人命令だ。逃げるなよ、雪璃」
「っ」
逃げられない……。心はもうとっくに雷雨様のモノだから。それに物理的にも逃げられないようにされてる。両手を上にあげられて拘束された。雷雨様の片手でいとも簡単に。雷雨様は空いているもう一つの手で私のメイド服のボタンを器用に外していく。
「まだ心の準備が……」
「待てない」
「んっ……」
私の言うことは聞いてくれない。
ーーーガブッ。私の首筋に雷雨様の牙が刺さった。
毎日の日課とはいえ、慣れない。最初は痛いけれど、でも途中から気持ち良くなって、頭の中がクラクラして。なにも考えられなくなって。
「雪璃、俺だけを見てろ」
「……はい」
優しいけれど、普段よりも低い声で私の名前を呼ぶ。雷雨様から目をそらせない。吸血をしているとき、雷雨様の瞳は赤くなる。まるで血の色みたいで、とても綺麗だ。
月が紅くなる日があるけれど、その月に負けないくらい雷雨様の目も素敵で。それを本人に伝えるのは恥ずかしい。でも、契約をしている私たちは繋がっている。
「俺の瞳を褒めてくれるのは嬉しいが、俺は雪璃の目の方が好きだ。サファイアと同じ青い瞳は、毎日見ていても飽きないくらい綺麗だぞ」
「うっ……」
心までも持っていかれそうになる。
唯一の血になる契約をしたとき、お互いの血を舐めた。そのせいもあって、ヴァンパイアである雷雨様は私の考えていることが血を通してわかるのだ。
人間の私は契約を交わしても尚、人であることは変わらないので、そんな能力はない。私だけが見透かされていて、不公平だ。
「言ってみろ。お前の主人は誰だ?」
「ら、雷雨、様……です」
「今日のお仕置きはここまでだ。けど、俺が満足するまで楽しませてもらうぞ」
「そんなの聞いてな……っ」
さらに深く吸血される。私は余裕がなくて弄ばれているというのに、雷雨様は余裕って顔を見せる。
堕とされる、どこまでも。
普段よりも低い声。私は、その声を聞くだけで胸の奥がきゅんとなる。
「雷雨様の部屋の清掃が終わってな……きゃっ!?」
「待てない。そんなのあとでいーよ」
「っ……」
そういって、ベッドに押し倒された。私の乱れたメイド服を見た雷雨様は、リボンをすかざす外す。私のボタンが一つ、またひとつと、はずされた。
「お前は俺にとって唯一の血だから」
「んっ……」
「普段はクールぶっているくせに、ベッドの上では甘い声を出す雪璃は相変わらず可愛いな」
とろけるような甘い声。私は今日も堕とされる。妖艶で、何をやらせても完璧で、私を悦ばせるのが得意で。人間とは比べものにならないくらい、美しきヴァンパイアに。
☆ ☆ ☆
「……雨様。雷雨様、起きてください」
「う~ん」
私は部屋のカーテンを勢いよく開けた。
「ぎゃあああ!! 浄化されるぅぅ!!」
「雷雨様。今は夜なので安心してください」
「冗談だってわかってたし」
「そのわりにビビってたじゃないですか」
「雪璃は主人である俺をもっと敬うべき~」
ベッドでゴロゴロしているグータラなこの人は、私が仕えているご主人様。西園寺雷雨様。銀髪に黒い瞳。日本人にしては珍しい髪色をしているが、それにはワケがある。
西園寺家はいくつものホテルを経営していて、高級レストランのお店も数多く出している。
ちなみに私、佐倉雪璃は彼の専属メイドだ。腰まである黒髪を2つ結びにしている。瞳は青色。これでもれっきとした日本人です。
年齢的にはお互いに高校2年生なのだが、私のご主人様は人間じゃない。そのため、活動は日が沈んだくらいから。
雷雨様の正体。それは……。
「雪璃、メシ~。腹減った」
「ご用意は出来ております。本日の食事は、トマトジュースとピーマンの肉詰めですよ」
「俺がピーマン嫌いなの知ってるくせに毎回、手の込んだ嫌がらせするの、なんなの? 俺のこと嫌い?」
「昨晩もお楽しみだったようなので、ちょっとした意地悪です」
「ヤキモチ?」
「銀の銃で撃ちましょうか」
「冗談だって!」
雷雨様の正体は人の生き血を吸うヴァンパイア。昨晩も公園にいる女の子に声をかけて血を吸っていた。心配そうに声をかけるくせに、それもこれも自分のためなのが悪質。
お金持ちのお坊ちゃま、高身長、イケメン、成績優秀、スポーツ万能。それだけ揃っていれば自然とモテるのも当然といえば当然で。
今の時代、ヴァンパイアはそれほど珍しくない。昔は都市伝説の類だったが、今ではそれなりに数はいる。とはいえ、出会えば血を吸われるため、怖がられているのは昔も今も同じ。
「さっさと支度してください。
学校に遅刻しますよ」
「雪璃が着替えさせて。つーか、メシが先ー!」
雷雨様は、人外のために設立された夜間の学校に通っている。ほんの一部だが、私のような人間もいる。その多くがヴァンパイアハンターやら、私のようにそれなりに強い人が通っていたり。
私はヴァンパイアハンターではないが、護身用のために旦那様から銀の銃を貸してもらっている。
「だからご飯はそれです」
私はトマトジュースとピーマンの肉詰めを指さした。
「むーり!」
「好き嫌いしたら大きくなりませんよ」
「俺、雪璃より高いけど?」
「……っ」
そういって迫ってくる雷雨様。ちょっとドキッとしたけど、こんなことで動揺してはメイドとして失格だ。いつの間にベッドから出たのよ。さっきまで眠そうにしてたくせに。
「雪璃、今日もいい?」
「ベッドメイキングが終わってません。それに昨晩は満足いくまで吸ったのでしょう?」
「あれは別。雪璃の血は他の子とは比べものにならないくらい美味いから」
ーーードサッ。ベッドが軋む。気がつけば、私は押し倒されていた。
「ちょ……ベッド、メイキングが」
「そんなの後でいいよ。ほら、脱げよ」
「誰が素直に脱ぐもんですか」
私は太ももにくくり付けている銃を雷雨様に向けた。
「俺に勝てると思ってる?」
「っ……」
あっさりと取り上げられてしまった。銀に触ればヴァンパイアの手は火傷よりもひどく、ただれてしまうと聞くが、現代では耐性がついているのか、軽く触れるくらいは平気みたい。もちろん、銀の銃で心臓を撃てば致命傷になるのは本当だ。
「本気じゃないくせに」
「当然だろ。俺の可愛いメイドに傷が残ったら大変だし。まあ軽い傷くらいなら、俺が舐めて治してやる」
どうやら吸血鬼が舐めれば、人間の傷はある程度回復するようで。さすがに治せるのは軽症程度だけど。
「ツバでもつければ治るから舐めなくていい」
「雪璃は男前だなぁ。俺に舐められるのは嫌か?」
……嫌じゃない。
「普段はクールだけど、俺が口説くとすぐに女らしい顔をするもんな。そういうところも含めて、俺はお前のこと愛してるぞ」
―――チュ。私の頬にキスが落とされた。
「あ、愛してるとか簡単に言わないで」
なんでそういうこと、恥ずかしがらずに言えるわけ? チャラ男のくせに。他の子の血を吸ってるくせに。本当は私じゃなくていいんじゃないの?
「本当のことだぞ。それに勘違いしてないか?」
「勘違い?」
「雪璃は人間だ。俺が飲みたいときに毎回吸血してたら、血が足りなくなって貧血で倒れる。雪璃の体力を回復させるためにも違う女の血は必要だろ?」
「私のために?」
「それもあるけど、俺が他の子を吸血すればヤキモチ妬くかなって」
「……バカ」
「ひどくね!?」
でも、スキ。そんな雷雨様が私は好き。
「雪璃は俺の唯一なんだから。契約だってしたのに、俺がお前を裏切るわけないだろ?」
「そんなの、わかってるわ」
唯一の血。それはヴァンパイアにとって運命の人を意味する。唯一の血の味は甘く、とろけるような味らしい。本能のままに相手を求めてしまう。
「メイド服ってエロいよな」
「飽きないの?」
「飽きるわけないだろ。雪璃のメイド服を見て、毎日脱がせたいと思ってる」
「変態」
「主人に向かって、その態度はなんだ? いうことを聞かないメイドには、お仕置きが必要だな」
「ちょ……」
「主人命令だ。逃げるなよ、雪璃」
「っ」
逃げられない……。心はもうとっくに雷雨様のモノだから。それに物理的にも逃げられないようにされてる。両手を上にあげられて拘束された。雷雨様の片手でいとも簡単に。雷雨様は空いているもう一つの手で私のメイド服のボタンを器用に外していく。
「まだ心の準備が……」
「待てない」
「んっ……」
私の言うことは聞いてくれない。
ーーーガブッ。私の首筋に雷雨様の牙が刺さった。
毎日の日課とはいえ、慣れない。最初は痛いけれど、でも途中から気持ち良くなって、頭の中がクラクラして。なにも考えられなくなって。
「雪璃、俺だけを見てろ」
「……はい」
優しいけれど、普段よりも低い声で私の名前を呼ぶ。雷雨様から目をそらせない。吸血をしているとき、雷雨様の瞳は赤くなる。まるで血の色みたいで、とても綺麗だ。
月が紅くなる日があるけれど、その月に負けないくらい雷雨様の目も素敵で。それを本人に伝えるのは恥ずかしい。でも、契約をしている私たちは繋がっている。
「俺の瞳を褒めてくれるのは嬉しいが、俺は雪璃の目の方が好きだ。サファイアと同じ青い瞳は、毎日見ていても飽きないくらい綺麗だぞ」
「うっ……」
心までも持っていかれそうになる。
唯一の血になる契約をしたとき、お互いの血を舐めた。そのせいもあって、ヴァンパイアである雷雨様は私の考えていることが血を通してわかるのだ。
人間の私は契約を交わしても尚、人であることは変わらないので、そんな能力はない。私だけが見透かされていて、不公平だ。
「言ってみろ。お前の主人は誰だ?」
「ら、雷雨、様……です」
「今日のお仕置きはここまでだ。けど、俺が満足するまで楽しませてもらうぞ」
「そんなの聞いてな……っ」
さらに深く吸血される。私は余裕がなくて弄ばれているというのに、雷雨様は余裕って顔を見せる。
堕とされる、どこまでも。
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