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八章 文化祭と抑えきれない気持ち

56話

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「今なんて言ったんですか」

「だから会長さんとはお付き合いできません。ごめんなさい……」

夏休みが終わり、二学期が始まった。私は生徒会室で会長さんに告白を断っている最中だ。

「そうですか。わかり、ました」

あきらかに動揺してるよね。いつもより声が上ずってるような気がする。そりゃあ、そうだよね。私が会長さんの立場だったら、大泣きするよ。

「だけど、これからも私の先輩として仲良くはしてほしいです」

「貴方はわりと残酷なことをさらりと言いますね」

「うっ、すみません。でも、会長さんには感謝してるんです。今までウジウジ悩んでた私が馬鹿らしくなるくらい……会長さんには勇気をもらいました」

そういって私は微笑む。会長さんには凄く申し訳ないことをしてるけど、それと同時に本当に感謝しているんだ。

「どうして僕じゃ駄目なんですか……なんて質問はしません。やっと、覚悟を決めたんですね。その告白が成功することを陰ながら応援しています。僕をフッたんですから、貴方は幸せになってください」

思いの外あっさりと引き下がってくれた? と安堵しながら「ありがとうございます」とお礼を言って教室に戻ろうとしたその瞬間、グイッと腕を強引に引っ張られた。

「僕は案外諦めが悪い性格をしているようです。だから、これからも隙あらば貴方にアタックしますから早急にでも柊黒炎と交際することを勧めます」

ボソッと耳元で囁かれた言葉は、まさかの宣戦布告で……恋の応援をしてくれるのは有難いんだけど、これは一刻も早く黒炎くんに告白しろって事だよね!?

* * *

「というわけで、私達のクラスはメイド&執事喫茶に決まりました~!!!」

「女子のメイド姿楽しみだなー!」

「文化祭、早く来ないかなぁ」

「私は黒炎君の執事服興味あるかもー!!」

「!」

ボーッとしていた私が我に返ると、文化祭の出し物がすでに決まっていた。会長さんからの恋の宣戦布告と黒炎くんにどう告白しようか悩んでいたから、いつ教室に戻ったのかすら覚えていない。

定番と言えば定番なんだけど……メイド服着るの初めてだからなんだか恥ずかしいな。でも、黒炎くんの執事服は興味あるかも。ただ、私だけじゃなく他の女子が黙ってないだろうなぁ。

「裁縫得意な人とかいるー?」

「はーい!」

「じゃあ、班を分けて~」

意見が飛び交う中、私も自分にやれることがないかと探す。

会長さんにもああ言った手前、黒炎くんに告白しないわけにはいかない。だけど、断られる想像をすると今度こそ立ち直れなくなりそうだ。それに告白をしたら今までのように、自然に仲のいい幼馴染でいることは不可能だろう。

私はフラれたショックで自分から黒炎くんに話しかけることは難しくなるし、黒炎くんだって私を気遣い気まずくなるだろうし。黒炎くんは優しいから、きっと凄く考えるんだろうなぁ。
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