1 / 10
プロローグ
1
しおりを挟む
「翼……お前、女だったのか?」
「え?」
「そんなわけねぇよな。お前は一体誰なんだ?」
ワケあって、兄の格好をしていた私は初日で同居人に女だとバレました。
「俺、女は嫌いなんだ。いつもギャーギャーうるせぇし、何かあればすぐ泣くし。香水クセーのが一番やだね」
「私、香水なんかつけてな……っ」
「とにかく俺に近付くんじゃねぇ。とっとと翼と会わせろ」
「……」
最初は散々の言われようで。私は女だからって理由で嫌われていた。
なのに…
『俺を好きになれよ』
『え!?』
『お前は特別なんだ』
『お前からは甘いケーキみたいな匂いがする』
『俺から離れるな』
『っ……!』
何故かある日をキッカケに溺愛されるようになりました。
『お前の血は全部、俺だけのものだから』
私は捕まってしまった。
強くて、本当は誰よりも優しくて、壊れそうな、美しいヴァンパイアに。それは1週間前に遡る。
☆ ☆ ☆
「お兄ちゃんが倒れた!?」
学校帰り。私はママからの電話で、兄が病院に運ばれたことを知った。
翼お兄ちゃんは氷山高校に通う二年生。
いつも笑顔を絶やさない人で、私は怒られたことがない。
喧嘩だってしたことがないくらい、近所では仲良し兄妹として有名だ。だけど、翼お兄ちゃんはあまり身体が強いほうじゃない。出席日数も実はギリギリで次に倒れたら進級も危ないかも…なんて担任の先生から言われていた。
「翼お兄ちゃん!!」
「紫音」
「翼お兄ちゃん。大丈夫!?」
「倒れた場所が学園の寮だったからね。親友が助けてくれたんだ。やっぱり持つべきものは優しい友達だね」
「そっか……。無事で良かった」
私は安心したのか肩の力が抜け、その場に座り込んだ。
「だけど主治医の先生曰く、また入院しないといけなくなっちゃって進級は難しいかも。まあ、進級より命の方が大事だしね。親友と離れるのは寂しいけど」
「翼お兄ちゃん……」
翼お兄ちゃんは遠くを見つめていた。
私が翼お兄ちゃんと同じ立場だったなら…。仲良しだった友達は上の学年に上がって、自分だけがもう一度同じ学年をやる。考えただけでも続けられるか不安になる。
なにか私にできることはないだろうか。そう考えていると、ひとつの答えにたどりついた。
「私、翼お兄ちゃんの代わりになれないかな」
「え?」
「私、中学生だから出席日数とか気にしなくていいし! 中学生だけど、翼お兄ちゃんと身長そんなにかわんないし。それに、胸に関してはぺったんこだし!!」
自分で言ってて悲しくなってきた。
「紫音の気持ちはすごくありがたいけど。でも、僕の高校は…」
「とにかく、翼お兄ちゃんは自分の身体の心配だけすればいいの! 私なら大丈夫。演技は幼稚園の頃に木の役とかしたし!!」
「木の役って……。ちょ、紫音!?」
私は翼お兄ちゃんの話を最後まで聞くことなく家に戻った。
「ネクタイはこんな感じかな?意外と結ぶの難しいなぁ」
翼お兄ちゃんの制服を着た私は男の格好をするために準備中。
腰よりも長い黒髪を頭の上で1つにまとめて、っと。
翼お兄ちゃんと同じ長さのウィッグを被った。
「なかなかいい感じじゃない!?」
元々、胸がないからブラとかしてないし。一応スポブラくらいはしてるけど。でも、怪しまれないようにサラシだけは巻いとくか。
翼お兄ちゃんは寮暮らし。同居人は優しい親友だって、いつも話してくれた。
私も会うのが楽しみ!
もしも、女だってバレても秘密にしてくれそうだし。
準備もできたし、翼お兄ちゃんの学校に向かいますか!
そして、今に至る。なんで女だとバレたかって?
季節は梅雨に突入したばかり。
そりゃあ、急に雨も降ってきたり。
傘を忘れた私は、寮の自室で着替えていた。
が、そこにタイミング悪く同居人が…。
うかつすぎ! 私のバカ……。
「翼じゃねぇなら、お前は誰なんだ? 返答次第では始末することになるが」
「は? へ?」
始末!? 今、とても物騒な単語が聞こえたような……?
正体って、私が女であることはすでにバレてるのでは? それ以外なにがあるっていうの?
頭の中でぐるぐる考えて、ついには思考停止。
「答えなきゃ今すぐ殺すぞ」
「わ、私は月城紫音です。兄の翼お兄ちゃんがいつもお世話になってます!
答えたので殺さないでください」
「月、城? 翼がよく話してた妹か」
「え…私の話を?」
「お前、中学生だろ。ガキはさっさと家に帰れ。それより翼に会わせろ」
私が中学生だってことまで知ってるの?
翼お兄ちゃん、親友さんに私の事どこまで話したんだろう?
「え?」
「そんなわけねぇよな。お前は一体誰なんだ?」
ワケあって、兄の格好をしていた私は初日で同居人に女だとバレました。
「俺、女は嫌いなんだ。いつもギャーギャーうるせぇし、何かあればすぐ泣くし。香水クセーのが一番やだね」
「私、香水なんかつけてな……っ」
「とにかく俺に近付くんじゃねぇ。とっとと翼と会わせろ」
「……」
最初は散々の言われようで。私は女だからって理由で嫌われていた。
なのに…
『俺を好きになれよ』
『え!?』
『お前は特別なんだ』
『お前からは甘いケーキみたいな匂いがする』
『俺から離れるな』
『っ……!』
何故かある日をキッカケに溺愛されるようになりました。
『お前の血は全部、俺だけのものだから』
私は捕まってしまった。
強くて、本当は誰よりも優しくて、壊れそうな、美しいヴァンパイアに。それは1週間前に遡る。
☆ ☆ ☆
「お兄ちゃんが倒れた!?」
学校帰り。私はママからの電話で、兄が病院に運ばれたことを知った。
翼お兄ちゃんは氷山高校に通う二年生。
いつも笑顔を絶やさない人で、私は怒られたことがない。
喧嘩だってしたことがないくらい、近所では仲良し兄妹として有名だ。だけど、翼お兄ちゃんはあまり身体が強いほうじゃない。出席日数も実はギリギリで次に倒れたら進級も危ないかも…なんて担任の先生から言われていた。
「翼お兄ちゃん!!」
「紫音」
「翼お兄ちゃん。大丈夫!?」
「倒れた場所が学園の寮だったからね。親友が助けてくれたんだ。やっぱり持つべきものは優しい友達だね」
「そっか……。無事で良かった」
私は安心したのか肩の力が抜け、その場に座り込んだ。
「だけど主治医の先生曰く、また入院しないといけなくなっちゃって進級は難しいかも。まあ、進級より命の方が大事だしね。親友と離れるのは寂しいけど」
「翼お兄ちゃん……」
翼お兄ちゃんは遠くを見つめていた。
私が翼お兄ちゃんと同じ立場だったなら…。仲良しだった友達は上の学年に上がって、自分だけがもう一度同じ学年をやる。考えただけでも続けられるか不安になる。
なにか私にできることはないだろうか。そう考えていると、ひとつの答えにたどりついた。
「私、翼お兄ちゃんの代わりになれないかな」
「え?」
「私、中学生だから出席日数とか気にしなくていいし! 中学生だけど、翼お兄ちゃんと身長そんなにかわんないし。それに、胸に関してはぺったんこだし!!」
自分で言ってて悲しくなってきた。
「紫音の気持ちはすごくありがたいけど。でも、僕の高校は…」
「とにかく、翼お兄ちゃんは自分の身体の心配だけすればいいの! 私なら大丈夫。演技は幼稚園の頃に木の役とかしたし!!」
「木の役って……。ちょ、紫音!?」
私は翼お兄ちゃんの話を最後まで聞くことなく家に戻った。
「ネクタイはこんな感じかな?意外と結ぶの難しいなぁ」
翼お兄ちゃんの制服を着た私は男の格好をするために準備中。
腰よりも長い黒髪を頭の上で1つにまとめて、っと。
翼お兄ちゃんと同じ長さのウィッグを被った。
「なかなかいい感じじゃない!?」
元々、胸がないからブラとかしてないし。一応スポブラくらいはしてるけど。でも、怪しまれないようにサラシだけは巻いとくか。
翼お兄ちゃんは寮暮らし。同居人は優しい親友だって、いつも話してくれた。
私も会うのが楽しみ!
もしも、女だってバレても秘密にしてくれそうだし。
準備もできたし、翼お兄ちゃんの学校に向かいますか!
そして、今に至る。なんで女だとバレたかって?
季節は梅雨に突入したばかり。
そりゃあ、急に雨も降ってきたり。
傘を忘れた私は、寮の自室で着替えていた。
が、そこにタイミング悪く同居人が…。
うかつすぎ! 私のバカ……。
「翼じゃねぇなら、お前は誰なんだ? 返答次第では始末することになるが」
「は? へ?」
始末!? 今、とても物騒な単語が聞こえたような……?
正体って、私が女であることはすでにバレてるのでは? それ以外なにがあるっていうの?
頭の中でぐるぐる考えて、ついには思考停止。
「答えなきゃ今すぐ殺すぞ」
「わ、私は月城紫音です。兄の翼お兄ちゃんがいつもお世話になってます!
答えたので殺さないでください」
「月、城? 翼がよく話してた妹か」
「え…私の話を?」
「お前、中学生だろ。ガキはさっさと家に帰れ。それより翼に会わせろ」
私が中学生だってことまで知ってるの?
翼お兄ちゃん、親友さんに私の事どこまで話したんだろう?
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。
石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。
すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。
なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
お兄ちゃんの日記を読んでしまった・・・
夜炎伯空
恋愛
私はいつも優しくしてくれるお兄ちゃんのことが大好きだ。
でも、実はその優しさには理由があって――
ある日、お兄ちゃんの日記を読んでしまった私は、その事実を知ってしまった……
極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。
あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。
そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。
翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。
しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。
**********
●早瀬 果歩(はやせ かほ)
25歳、OL
元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。
●逢見 翔(おうみ しょう)
28歳、パイロット
世界を飛び回るエリートパイロット。
ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。
翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……?
●航(わたる)
1歳半
果歩と翔の息子。飛行機が好き。
※表記年齢は初登場です
**********
webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です!
完結しました!
お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?
さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。
私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。
見た目は、まあ正直、好みなんだけど……
「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」
そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。
「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」
はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。
こんなんじゃ絶対にフラれる!
仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの!
実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる