13 / 34
一章
12話 ルリエと一つのベッドで
しおりを挟む
朝8時30分。俺は二度寝しようとベッドの中にいた。
「こうやって、お兄ちゃんと寝るのは初めてだね」
「そ、そうだな」
そう、ルリエと一緒に。シングルベッドだから狭いと思っていたが、ルリエが小さいから案外二人でも大丈夫そうだ。
って、そうじゃない。俺は互いの息が当たるくらいの近い距離にドキドキしていた。だって、ルリエからは甘い匂いがするし。おかしい、俺と同じシャンプーを使っているはずなのに。
近くで見ると、ルリエってまつ毛も長いんだな。二重でクリクリしてるし、肌も白くて全くといっていいほど荒れてない。それは化粧なんか必要ないってほど。
俺がルリエのことをじっくりと見ていると、バチッと目が合う。そんな視線から、ルビー色の綺麗な瞳から俺は目を逸らすことが出来ずにいた。
いつもなら視線を合わせても何も感じないはずなのに。いや、少しは思ったりする。けど、いちいち可愛いなどをルリエに言っていたらキリがないとわかっているから言わない。
毎回のように同じ言葉を使えば、それは価値のないものへと変わってしまう。だから、仮に心から思っていたとしても気軽に言わないほうがいい。
それに俺はイケメンでも白馬の王子でもないんだし、こっ恥ずかしいセリフなんか吐けるものか。
キザだと思われるのは嫌だし、なにより、そういうのはイケメンだからこそ許されるしトキめくってもんだろ。
俺に言われても、ルリエだって嬉しいわけがないんだ。
「ルリエのことはいないものだと思って、お兄ちゃんはゆっくり休んでいいよ」
「……」
それは無理があるぞルリエ。隣にいたら嫌でも視界に入る。別にルリエと寝ることが不快というわけじゃない。
むしろ、こんな一大イベントは俺の人生で一生に一度体験できるのも奇跡くらいの確率で。俺自身こんなことはないと、とうに諦めていたくらいだからな。そんな俺に、夢にまで見た展開が今到来とあらば眠れるものも眠れない。
普段なら子供に欲情なんか……と思っているところだが、今のルリエは妙に大人っぽく見えるのは気の所為だろうか。きっと、俺によるフィルターがかかってるに違いないと自身を言い聞かせていた。そう思わないと、俺は間違いなくロリコンになってしまうから。
もしかしたら、もう既に手遅れの状態まできているかもしれないが。
「私は、龍幻がイヤじゃないなら毎日だってこうして寝たい」
「それは駄目だ!」
「どうして?やっぱりイヤ?」
「そういうわけじゃない」
やはりルリエはわかってない。毎日ルリエと一緒に寝るなんて、どうにかならないほうがおかしい。男女が同じ屋根の下暮らしてて何も起こらない今だって不思議だというのに、ベッドで……ルリエが仮になんとも思っていなくとも、こっちは平常心でいられるほど、俺は人間できていない。
「ルリエ。先に教えておくとだな……男女がこんなことをするのは変なんだぞ。
付き合ってる同士がしたらおかしくはないかもしれない。けど、それは何かしら起こっていて、互いに同意の上でっていうか、その……」
異性と手を繋ぐ以上やったことがない俺がルリエの上に立とうとするのは、上から目線にしても駄目だ。本当に何様のつもりなんだ俺は。それもこれもルリエが男女のあれこれに疎いせいだ。
「さっき龍幻は私と寝ることを同意してくれたよ」
「それはそうだが、そうじゃなくてだな……」
「知ってる。そのくらい知ってる」
「え、ルリエ、今なんて?」
「流幻は私を子供だと思い込みすぎ。私だって、いつまでも子供じゃないよ」
まさかルリエにそれを言われる日がやってくるなんてな。正直、驚きすぎて言葉がでない。子供だと思っていたのは事実だ。けれど、それを思っていたのは俺だけ。
ルリエは一日でも早く、一秒でも早く大人になろうと努力をしていたんだ。
それなのに俺は……ルリエにいっちょ前に怒ったりして、本当に馬鹿だ。
「私は見習いでもサキュバスなんだよ。それに私の主は龍幻だもん。ここは主じゃなくて獲物って言ったほうがいいかな?私は私なりに頑張ってるんだよ。それとも、お兄ちゃんは私が子供のままのほうがいい?」
「……そんなことあるわけないだろ。ごめんな、さっきは変なこといったりして」
どうしよう。こんなにも頑張っていたなんて知らなかった。俺がいない間にルリエは勉強してたんだな。それは俺が思ってる以上に大変で、困ることもあっただろう。
今はルリエを叱るんじゃない、褒めるべきなんだ。それが主としての俺の役目。
「ルリエ、俺のためにありがとな」
「どういたしまして。でも、抱き枕の代わりとして私を使っていいって言ったのはホントだよ。今はサキュバスの課題よりも、純粋にお兄ちゃんが心配なんだもん」
「っ……」
俺の親もこんな感じで俺が一人暮らしをするときに送り出したんだろうか。不安でいつも心配でたまらない、そんな気持ちで。今の俺と同じなんだろうな。
けれど、子供は親が思っているよりも早く成長するし両親が知らないところでは、意外と大人なんだということを俺はルリエを通して知った。
「龍幻どうして泣いてるの?どこか痛い?」
「いや……大丈夫だ。ルリエ、俺は今から寝るから側にいてくれないか?」
「うん、いいよ。私、龍幻が寝るまで頭を撫でてあげるね」
頭を優しく撫でられる。すごく安心する。なんだろう、急激に眠気に襲われる。俺、疲れてたのか。
これはサキュバスとしての力なのか、それともルリエにより癒やしの力なのか。そのどちらかが正解なのかは言うまでもないだろう。
「俺、いつの間に寝ていたんだ。って、もう11時……」
ルリエが隣にいるから寝れないとか言ってた奴はどこの誰だ。普段ならお腹空いたとか言ってきて俺を起こしに来るルリエが声をかけなかったから、思ったよりも寝てしまっていた。久しぶりにゆっくり休めた気がする。
……あれ?せっかく女の子と寝たのに何もせず、普通に寝てしまった。俺はチャンスを自分から棒に振ったんじゃないだろうか。
それとも、覚えていないだけで実はルリエに手を出している……なんて、俺に限ってそんなことをするとは思えないが念のため、あとでルリエに聞いてみるか。
そういえば、ルリエがいない。抱き枕にしていいと言っていたからてっきりあのまま寝たとばかり。
ごうんごうん。……これって洗濯機の音か?今日の分はまだ回していないはず。隣にしては音がうるさいし、なんだか近くで聞こえる。
ガタガタガタガタ。
次の瞬間、明らかにヤバい音がした。
ま、まさか……。
俺は、ベッドからバッ!と起き上がり洗面所に向かう。
「ルリエ、大丈夫か!?」
「龍幻、ど、どうしよう。洗剤が……泡が止まらないの」
ルリエは半泣きで、その場にペタりと座り込んでいた。どうすればいいかわからないとパニック状態だった。
「泡?って……今すぐ止めろ!」
俺はストップのスイッチを押す。
ピー。
「ルリエ、これで大丈夫だ」
「これで洗濯機、攻撃してこない?」
「してこない。だから安心しろ、なっ?」
「うん」
と、言ったものの、床は洗剤まみれで散らかっている。これは片付けが大変そうだ。
「なぁ、ルリエ。なんで洗濯機を回したんだ?」
「龍幻の役に少しでも役に立ちたくて……」
「洗濯はどのくらい入れたんだ?」
「……そこにあるやつをいっぱい」
「いっぱいって全部か!?」
「そう。そしたら綺麗になると思って」
さっきは色気があるとか成長したんだなって関心して褒めたばかりだってのに。これはデジャブだ。今のは、以前のダークマターを彷彿とさせた。
最近の俺が疲れてるのを察してか、ルリエは家事を手伝おうとしたに違いない。けれど、やはりルリエには家事スキルはないようだ。いくら人間界について勉強したとはいえ、たった数日で劇的に良くなるはずもない。
これは、もはや才能といっていいレベルなのかもしれない。ちなみに、この場合の才能は決して褒めてるとか、いい意味で使っていない。
洗剤を大量に入れたら綺麗になると考えが浮かぶ時点で根本的に間違ってるんだよな。一体、どこでこんなことを覚えてきたんだ。
もしや、ルリエの家庭は実は金持ちだったりするのか?家にはメイドが何人もいて、家事を一切したことがないとか。それなら、多少納得いくところもあるが、それにしたってこれは酷すぎる。
「ごめんなさい、龍幻。私、逆に龍幻に負担をかけてるよね」
「いや、そんなことは……」
ない。と、はっきり言えなかった。何をやるにしても不器用……ここまでいくと不器用を超えてる。それでも、ルリエは俺のために何かしようと頑張っている。それは凄く伝わるんだけどな。
「私、龍幻のためなら何でもしたいの。本当は料理も掃除とかも……でも頭では理解してても、いざ行動すると思うように出来なくて」
「そんなに落ち込む必要はない。俺だって出来ないことの一つや二つくらいあるぞ」
「本当に?龍幻にもあるの?」
「あぁ、ある。……それに俺だけじゃない。誰しも出来ないことはあるし、それこそ今のルリエと同じ考えを持つ奴はたくさんいる。だからこそ、自分に出来ることをして、互いのことを支え合うんだ。パートナーとはそういうものだぞ、ルリエ」
今の俺は、ちゃんと正論を言えているだろうか。ルリエを正しく教育出来ているか、そんな衝動に駆られる。しかし、恋人がいたことない俺が何故こんなにも熱く語れるのか不思議だ。
ルリエと数日暮らしたことによって、俺も少しは成長したってことか?そう思うことにするか。
「だから、ここは俺に任せてくれ。床に散らばった洗剤で滑ると危険だから、ルリエはリビングで待っててくれないか?」
「うん、そうする!」
どうやら、いつものルリエに戻ったようだ。落ち込んでいるルリエも子猫みたいで可愛いとは思うが、やはりルリエには笑った顔のほうがいい。
ルリエはリビングのほうに行き、俺は片付けを始めた。
「あれ?」
俺は、ふと洗面台の鏡を見た。……なんでヒビが入ってるんだ?朝起きて顔を洗ってたときは割れてなかったんだが。
縁起が悪いとか聞くし、今日にでも大家に連絡してみるか。それから黙々と床を掃除していた。
鏡にヒビが入っていた原因がまさか✕✕にあるなんて、このときの俺は知る由もない。
「こうやって、お兄ちゃんと寝るのは初めてだね」
「そ、そうだな」
そう、ルリエと一緒に。シングルベッドだから狭いと思っていたが、ルリエが小さいから案外二人でも大丈夫そうだ。
って、そうじゃない。俺は互いの息が当たるくらいの近い距離にドキドキしていた。だって、ルリエからは甘い匂いがするし。おかしい、俺と同じシャンプーを使っているはずなのに。
近くで見ると、ルリエってまつ毛も長いんだな。二重でクリクリしてるし、肌も白くて全くといっていいほど荒れてない。それは化粧なんか必要ないってほど。
俺がルリエのことをじっくりと見ていると、バチッと目が合う。そんな視線から、ルビー色の綺麗な瞳から俺は目を逸らすことが出来ずにいた。
いつもなら視線を合わせても何も感じないはずなのに。いや、少しは思ったりする。けど、いちいち可愛いなどをルリエに言っていたらキリがないとわかっているから言わない。
毎回のように同じ言葉を使えば、それは価値のないものへと変わってしまう。だから、仮に心から思っていたとしても気軽に言わないほうがいい。
それに俺はイケメンでも白馬の王子でもないんだし、こっ恥ずかしいセリフなんか吐けるものか。
キザだと思われるのは嫌だし、なにより、そういうのはイケメンだからこそ許されるしトキめくってもんだろ。
俺に言われても、ルリエだって嬉しいわけがないんだ。
「ルリエのことはいないものだと思って、お兄ちゃんはゆっくり休んでいいよ」
「……」
それは無理があるぞルリエ。隣にいたら嫌でも視界に入る。別にルリエと寝ることが不快というわけじゃない。
むしろ、こんな一大イベントは俺の人生で一生に一度体験できるのも奇跡くらいの確率で。俺自身こんなことはないと、とうに諦めていたくらいだからな。そんな俺に、夢にまで見た展開が今到来とあらば眠れるものも眠れない。
普段なら子供に欲情なんか……と思っているところだが、今のルリエは妙に大人っぽく見えるのは気の所為だろうか。きっと、俺によるフィルターがかかってるに違いないと自身を言い聞かせていた。そう思わないと、俺は間違いなくロリコンになってしまうから。
もしかしたら、もう既に手遅れの状態まできているかもしれないが。
「私は、龍幻がイヤじゃないなら毎日だってこうして寝たい」
「それは駄目だ!」
「どうして?やっぱりイヤ?」
「そういうわけじゃない」
やはりルリエはわかってない。毎日ルリエと一緒に寝るなんて、どうにかならないほうがおかしい。男女が同じ屋根の下暮らしてて何も起こらない今だって不思議だというのに、ベッドで……ルリエが仮になんとも思っていなくとも、こっちは平常心でいられるほど、俺は人間できていない。
「ルリエ。先に教えておくとだな……男女がこんなことをするのは変なんだぞ。
付き合ってる同士がしたらおかしくはないかもしれない。けど、それは何かしら起こっていて、互いに同意の上でっていうか、その……」
異性と手を繋ぐ以上やったことがない俺がルリエの上に立とうとするのは、上から目線にしても駄目だ。本当に何様のつもりなんだ俺は。それもこれもルリエが男女のあれこれに疎いせいだ。
「さっき龍幻は私と寝ることを同意してくれたよ」
「それはそうだが、そうじゃなくてだな……」
「知ってる。そのくらい知ってる」
「え、ルリエ、今なんて?」
「流幻は私を子供だと思い込みすぎ。私だって、いつまでも子供じゃないよ」
まさかルリエにそれを言われる日がやってくるなんてな。正直、驚きすぎて言葉がでない。子供だと思っていたのは事実だ。けれど、それを思っていたのは俺だけ。
ルリエは一日でも早く、一秒でも早く大人になろうと努力をしていたんだ。
それなのに俺は……ルリエにいっちょ前に怒ったりして、本当に馬鹿だ。
「私は見習いでもサキュバスなんだよ。それに私の主は龍幻だもん。ここは主じゃなくて獲物って言ったほうがいいかな?私は私なりに頑張ってるんだよ。それとも、お兄ちゃんは私が子供のままのほうがいい?」
「……そんなことあるわけないだろ。ごめんな、さっきは変なこといったりして」
どうしよう。こんなにも頑張っていたなんて知らなかった。俺がいない間にルリエは勉強してたんだな。それは俺が思ってる以上に大変で、困ることもあっただろう。
今はルリエを叱るんじゃない、褒めるべきなんだ。それが主としての俺の役目。
「ルリエ、俺のためにありがとな」
「どういたしまして。でも、抱き枕の代わりとして私を使っていいって言ったのはホントだよ。今はサキュバスの課題よりも、純粋にお兄ちゃんが心配なんだもん」
「っ……」
俺の親もこんな感じで俺が一人暮らしをするときに送り出したんだろうか。不安でいつも心配でたまらない、そんな気持ちで。今の俺と同じなんだろうな。
けれど、子供は親が思っているよりも早く成長するし両親が知らないところでは、意外と大人なんだということを俺はルリエを通して知った。
「龍幻どうして泣いてるの?どこか痛い?」
「いや……大丈夫だ。ルリエ、俺は今から寝るから側にいてくれないか?」
「うん、いいよ。私、龍幻が寝るまで頭を撫でてあげるね」
頭を優しく撫でられる。すごく安心する。なんだろう、急激に眠気に襲われる。俺、疲れてたのか。
これはサキュバスとしての力なのか、それともルリエにより癒やしの力なのか。そのどちらかが正解なのかは言うまでもないだろう。
「俺、いつの間に寝ていたんだ。って、もう11時……」
ルリエが隣にいるから寝れないとか言ってた奴はどこの誰だ。普段ならお腹空いたとか言ってきて俺を起こしに来るルリエが声をかけなかったから、思ったよりも寝てしまっていた。久しぶりにゆっくり休めた気がする。
……あれ?せっかく女の子と寝たのに何もせず、普通に寝てしまった。俺はチャンスを自分から棒に振ったんじゃないだろうか。
それとも、覚えていないだけで実はルリエに手を出している……なんて、俺に限ってそんなことをするとは思えないが念のため、あとでルリエに聞いてみるか。
そういえば、ルリエがいない。抱き枕にしていいと言っていたからてっきりあのまま寝たとばかり。
ごうんごうん。……これって洗濯機の音か?今日の分はまだ回していないはず。隣にしては音がうるさいし、なんだか近くで聞こえる。
ガタガタガタガタ。
次の瞬間、明らかにヤバい音がした。
ま、まさか……。
俺は、ベッドからバッ!と起き上がり洗面所に向かう。
「ルリエ、大丈夫か!?」
「龍幻、ど、どうしよう。洗剤が……泡が止まらないの」
ルリエは半泣きで、その場にペタりと座り込んでいた。どうすればいいかわからないとパニック状態だった。
「泡?って……今すぐ止めろ!」
俺はストップのスイッチを押す。
ピー。
「ルリエ、これで大丈夫だ」
「これで洗濯機、攻撃してこない?」
「してこない。だから安心しろ、なっ?」
「うん」
と、言ったものの、床は洗剤まみれで散らかっている。これは片付けが大変そうだ。
「なぁ、ルリエ。なんで洗濯機を回したんだ?」
「龍幻の役に少しでも役に立ちたくて……」
「洗濯はどのくらい入れたんだ?」
「……そこにあるやつをいっぱい」
「いっぱいって全部か!?」
「そう。そしたら綺麗になると思って」
さっきは色気があるとか成長したんだなって関心して褒めたばかりだってのに。これはデジャブだ。今のは、以前のダークマターを彷彿とさせた。
最近の俺が疲れてるのを察してか、ルリエは家事を手伝おうとしたに違いない。けれど、やはりルリエには家事スキルはないようだ。いくら人間界について勉強したとはいえ、たった数日で劇的に良くなるはずもない。
これは、もはや才能といっていいレベルなのかもしれない。ちなみに、この場合の才能は決して褒めてるとか、いい意味で使っていない。
洗剤を大量に入れたら綺麗になると考えが浮かぶ時点で根本的に間違ってるんだよな。一体、どこでこんなことを覚えてきたんだ。
もしや、ルリエの家庭は実は金持ちだったりするのか?家にはメイドが何人もいて、家事を一切したことがないとか。それなら、多少納得いくところもあるが、それにしたってこれは酷すぎる。
「ごめんなさい、龍幻。私、逆に龍幻に負担をかけてるよね」
「いや、そんなことは……」
ない。と、はっきり言えなかった。何をやるにしても不器用……ここまでいくと不器用を超えてる。それでも、ルリエは俺のために何かしようと頑張っている。それは凄く伝わるんだけどな。
「私、龍幻のためなら何でもしたいの。本当は料理も掃除とかも……でも頭では理解してても、いざ行動すると思うように出来なくて」
「そんなに落ち込む必要はない。俺だって出来ないことの一つや二つくらいあるぞ」
「本当に?龍幻にもあるの?」
「あぁ、ある。……それに俺だけじゃない。誰しも出来ないことはあるし、それこそ今のルリエと同じ考えを持つ奴はたくさんいる。だからこそ、自分に出来ることをして、互いのことを支え合うんだ。パートナーとはそういうものだぞ、ルリエ」
今の俺は、ちゃんと正論を言えているだろうか。ルリエを正しく教育出来ているか、そんな衝動に駆られる。しかし、恋人がいたことない俺が何故こんなにも熱く語れるのか不思議だ。
ルリエと数日暮らしたことによって、俺も少しは成長したってことか?そう思うことにするか。
「だから、ここは俺に任せてくれ。床に散らばった洗剤で滑ると危険だから、ルリエはリビングで待っててくれないか?」
「うん、そうする!」
どうやら、いつものルリエに戻ったようだ。落ち込んでいるルリエも子猫みたいで可愛いとは思うが、やはりルリエには笑った顔のほうがいい。
ルリエはリビングのほうに行き、俺は片付けを始めた。
「あれ?」
俺は、ふと洗面台の鏡を見た。……なんでヒビが入ってるんだ?朝起きて顔を洗ってたときは割れてなかったんだが。
縁起が悪いとか聞くし、今日にでも大家に連絡してみるか。それから黙々と床を掃除していた。
鏡にヒビが入っていた原因がまさか✕✕にあるなんて、このときの俺は知る由もない。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
現代ダンジョンで成り上がり!
カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる!
現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。
舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。
四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる