一人の少女の物語

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王太子殺害事件から一年が過ぎた。

私にとってアリアは救いの手を差し伸べ、俺にたくさんの感情を教え救ってくれたかけがえのない人だ。

だから、彼女が誓った復讐の手助けをした。情報収集をし、それを繋ぎ合わせ真実を見つける。アリアにとって復讐は生きる意味であり、意義だった。

アリアは自分が死んで悲しむ人などいないと笑う。私がいるじゃないか、とは言えなかった。アリアがそれを望んでいなかったから。それを私に言わせないためにアリアは先手を打ち、自分は一人だという。アリアは狡いのだ。自分の生きる生き方を変えない。それで悲しむ人がいようとも、巻き込む人がいようともそれらを近づけさせないことで、自分の生き方を貫くのだ。

アリアは背筋を正し凛とした佇まいで卒業パーティーに足を踏み入れた。あいつの死をもぎ取り、自分の死を差し出すために。

アリアに頼まれた最後のお願い。とても残酷で最低なお願い。私の気持ちを無視し、彼女が生き方を貫いたことを証明するお願い。

アリアがあいつを殺害したのを認識して、先程アリアが投げた短剣を手にとり、彼女を突き刺す。

最後に振り返ったアリアが、ありがとう、と声にならない声で言った気がした。泣くことは許されない。喚くことも許されない。これはアリアが望み、俺が行動を起こした結果だから。

冷たい風が体に突き刺さる。アリアがいないこの世界は酷く寒く、色をもたない。けれど、後を追うことは許されない。アリアが望んでいないから。

本当に残酷だ。どんなに愛し、どんなに想っても、彼女はもうここにはいない。私の前で微笑むことはないのだ。

アリアは自分の生き方を貫いた。たしかに彼女に向けられていた感情をすべて受け取らないことで貫いた。まるで、受け取ることが罪であるかのように。
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