3 / 4
3
しおりを挟む
王太子殺害事件から一年がたった。
俺がアリア・ユーンダルトと初めて会ったのは幼少期の頃で、彼女は愛らしく笑っていた。
アリアが大切な母親に先立たれたことで意気消沈になり屋敷に閉じこもるようになってからは会うことはなくなった。
学園に通うようになって再会したが、一日に一言二言話しはするものの、昔のように遊び回ったり、食事を共にすることは無かった。
俺は、王太子の婚約者に触れることは許されないからと自分に言い聞かせていたが、結局のところ、恐かっただけなのだ。昔のように接して、彼女がそれに応えてくれなかったら、と。
そんな俺を見透かしているかのようにアリアは俺と親しくはせず挨拶はするクラスの一人のように接してきていた。
そんな中、ただ一度だけアリアと会話をしたことがある。それは、アリアの母親の命日の日にお墓参りに行った際だった。毎年行ってはいるものの、誰に会うでもなく、花を置き、安らかに眠って欲しいと願うだけだった。けれどその日は今まで会うことがなかったアリアに会った。
アリアは、感謝の気持ちを言い、母親との思い出話をしてくれた。俺は相槌をうちつつ、久しぶりに彼女が幼少期の頃のように接してきてくれたことを喜んでいた。
だからだろう。俺は彼女が俺と別れる際に零した言葉に反応することが出来なかった。
今思えばあれは、きっとこの事件への一歩だったのだと分かる。
俺が自分の喜びを優先するのではなく、アリアの言葉にもっと過敏に反応し、アリアに寄り添えていたらアリアは死なずに済んだはずなのに。俺はそう思わずにはいられない。
アリアと接した時間は酷く短いものだった。けれど、アリアと過ごした時間は俺にとってとても心に深く残る時間だったのだ。
俺がアリア・ユーンダルトと初めて会ったのは幼少期の頃で、彼女は愛らしく笑っていた。
アリアが大切な母親に先立たれたことで意気消沈になり屋敷に閉じこもるようになってからは会うことはなくなった。
学園に通うようになって再会したが、一日に一言二言話しはするものの、昔のように遊び回ったり、食事を共にすることは無かった。
俺は、王太子の婚約者に触れることは許されないからと自分に言い聞かせていたが、結局のところ、恐かっただけなのだ。昔のように接して、彼女がそれに応えてくれなかったら、と。
そんな俺を見透かしているかのようにアリアは俺と親しくはせず挨拶はするクラスの一人のように接してきていた。
そんな中、ただ一度だけアリアと会話をしたことがある。それは、アリアの母親の命日の日にお墓参りに行った際だった。毎年行ってはいるものの、誰に会うでもなく、花を置き、安らかに眠って欲しいと願うだけだった。けれどその日は今まで会うことがなかったアリアに会った。
アリアは、感謝の気持ちを言い、母親との思い出話をしてくれた。俺は相槌をうちつつ、久しぶりに彼女が幼少期の頃のように接してきてくれたことを喜んでいた。
だからだろう。俺は彼女が俺と別れる際に零した言葉に反応することが出来なかった。
今思えばあれは、きっとこの事件への一歩だったのだと分かる。
俺が自分の喜びを優先するのではなく、アリアの言葉にもっと過敏に反応し、アリアに寄り添えていたらアリアは死なずに済んだはずなのに。俺はそう思わずにはいられない。
アリアと接した時間は酷く短いものだった。けれど、アリアと過ごした時間は俺にとってとても心に深く残る時間だったのだ。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたおっとり令嬢は「実験成功」とほくそ笑む
柴野
恋愛
おっとりしている――つまり気の利かない頭の鈍い奴と有名な令嬢イダイア。
周囲からどれだけ罵られようとも笑顔でいる様を皆が怖がり、誰も寄り付かなくなっていたところ、彼女は婚約者であった王太子に「真実の愛を見つけたから気味の悪いお前のような女はもういらん!」と言われて婚約破棄されてしまう。
しかしそれを受けた彼女は悲しむでも困惑するでもなく、一人ほくそ笑んだ。
「実験成功、ですわねぇ」
イダイアは静かに呟き、そして哀れなる王太子に真実を教え始めるのだった。
※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。
婚約破棄が国を亡ぼす~愚かな王太子たちはそれに気づかなかったようで~
みやび
恋愛
冤罪で婚約破棄などする国の先などたかが知れている。
全くの無実で婚約を破棄された公爵令嬢。
それをあざ笑う人々。
そんな国が亡びるまでほとんど時間は要らなかった。
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
(完結)モブ令嬢の婚約破棄
あかる
恋愛
ヒロイン様によると、私はモブらしいです。…モブって何でしょう?
攻略対象は全てヒロイン様のものらしいです?そんな酷い設定、どんなロマンス小説にもありませんわ。
お兄様のように思っていた婚約者様はもう要りません。私は別の方と幸せを掴みます!
緩い設定なので、貴族の常識とか拘らず、さらっと読んで頂きたいです。
完結してます。適当に投稿していきます。
最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる