お前と番になってたまるか！

番

日常

「おはよう」

「おとしゃん！おはよう」


朝、目を覚ますと真っ先に飛び付いて満面な笑みで旭飛は挨拶をする

「おかしゃん、まだ帰ってこないの？」


決まってこの言葉を毎朝欠かさず言うようになった。

「お母さんは、まだ風邪だからもう少し病院にお泊まりしてるんだよ」

「え～会いたいよ、おかしゃんに」

「お父さんも会いたいけど、もう少し我慢しょうな？」

「あーい」 


「じゃあ幼稚園に行く準備して」

「あーい！」


フローリングをペタペタと走り自分の部屋へと旭飛は戻っていくと、俺の視界は歪んでいった。

「晴、俺泣き虫になっちゃたみたい、お前がいないと涙が溢れてしょうがないんだ」


気がつくと俺の手の甲は自分の涙でぐちゃぐちゃに濡れていた。旭飛に見せまいと涙を服で拭うと、またペタペタと走る旭飛を掴まえ朝御飯を食べさせると幼稚園に向かった。






「おとしゃん！行ってきます！！」

「おう！行ってらっしゃい」


大きく手を振る旭飛に手を振り返すと旭飛はそのまま幼稚園に走っていった。
すると隣からこそこそと話す声が聞こえた



「結城さん、奥さんに逃げられたらしいわ」

「あらまぁ！やっぱり、男同士ってダメなのかしらね」

「じゃあ今はシングルなの？」

「離婚はしてないみたいよ」

「でも、奥さんだって男だし浮気してるんじゃないの？」

「そうよね、オメガは淫乱だって言うし、他の男でも滴してるんじゃないの？」

「嫌らしい！！」

俺は腹のそこからイライラして仕方がなかった。確かに晴は出ていったしかし、赤の他人にどうこう言われる筋合いはない


(俺達の何が分かる？知った口を聞くな！)


今にも叫んでやりたかった、しかし旭飛の立場を考えると俺は怒りを抑え、幼稚園を出た。


「早く帰ってこいよ、晴！」