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最終章 ゴーレムはゴーレム

第八十七話 ゴーレムと報酬の獲得

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「いーやーだー!!」

 オレ達の目の前には駄々をこねるエルフがいた。ムルマーのケイって男だ。
 実はこいつ、転生者らしい。例のムルマーの学長だった。エルフとかマジ羨ましい。こちとら血も涙も(物理的に)無いゴーレムだぞちくしょうめ。
 ちなみに転生者と言っても色々あって過去に行ってそのまま過去にいっぱなしになったっていう謎の経歴の持ち主らしい。道理で時間軸が合わないわけだ。

「この者たちに最大限の協力をと、そう言ったのは貴方でしょう? それに今回の蟻討伐と救出劇の立役者、礼には礼をするのが当たり前の事です」
「うそだー! その緩んだ微笑みは絶対別の事考えてやがる顔だー」
「ソンナコトナイデスヨオホホホホ」

 そんな転生者の相手をするのはムルマー副学長のサフィーラさん。この人は見た目人間だが魔族らしい。ゴートと同じでかなりの長生きだそうな。

「こう仰ってますが、本当に同行して頂いて宜しいのですか?」
「!」

 清蓮が丁寧に尋ねると。ケイは嬉しそうに顔を上げた。

「行きます。書類仕事溜まってるんだから全部お前がやれこの野郎とか思っていますので行きます」
「やっぱり!」
「ついでにレベッカ様に私の知識が必要だと言われているのです。行くに決まっているでしょう? 2,30年は戻らないと思って下さいね」
「馬鹿言うな! そんなにお前がこの都市から離れたら……」

 一瞬だけ絶望的な表情を見せたケイだが、そのあとに少しだけ表情を緩ませた。

「自衛隊の皆さんにお願いしておきますから、やりたい放題は出来ませんからね」
「ちくしょうめ!」
「という訳ですので、しっかり同行させて頂きます。一国を亡ぼせるほどの性能を持ったゴーレムの製造技術の解析……そしてそのゴーレムの力を捨ててまで人間になろうとするシオ様の心意気、すばらしく思います」

 オレが元々は人間で、人間の体を得たい旨は既に話している。
 グランフォールの件も追及されて説明が上手く出来なかったが、そこはアイとゴートがフォローしてくれた。
 ついでに清蓮に人間だった頃の話をせがまれた。異世界の話なので上手く伝わらなかった、無職な部分は恥ずかしくてぼかしたが『自由業=冒険者』と認識されたのが少し面白い。
 自衛隊のメンバーから事情聴取を色々受けたが、ぶっちゃけ体がゴーレムなのが問題だった。当然ゴーレムなんぞ元の世界に連れて帰れる訳もなく、仮に人間の体を得ても元の姿と同じ姿で復活出来る保証もない。元の姿と寸分変わらない形で人間になれれば元の世界への帰還も可能なようだが、魔法が自在に使えるようになった人間を無条件で帰せるほど自衛隊は優しい組織では無いそうだ。
 最も元の世界に帰れても無職だが。
 両親の無事が確認出来ただけでも良しとしよう。捜索願は出ているそうだが、自衛隊の方で上手く処理してくれるとも言っていた。時間こそかかるが、両親に自分の無事を伝えることも可能といえば可能らしいが……もう体が無いんだからやめた方が良いかもしれない。
 ちなみに帰る意思を見せずにこちらに定住した人も中にはいるらしい。向こうの世界では事故死扱いで処理されるそうだ。ただし、この処理を行う場合元の世界には基本的には戻れなくなるそうだ。
 基本的にというのは、自衛隊達の日本側での基地内までなら行けるらしい。
 こちらの世界に関係する人間とその家族のみで構成された自衛官と関係者専用の隔離された街が北海道にあるらしい。
 そこら辺は即答せず、保留にしておいた。何にしても人間に戻らなければ心配することではないし、人間に戻れるかどうかも分からない状況だから答えは出せない。
 オレの話を聞いてくれた自衛官もその答えに頷いていたので問題はないだろう。

「なーシオー、オレっちと一緒に楽しい楽しい異世界発展ライフを満喫しよーぜー」

 この手だから書類仕事出来ないぞ。

「そこは念動魔法で!」

 こちらの世界の知識が無いから文字の読み書きが出来ないぞ。

「ぐはっ! お前いままでどんな生活してたんだ!」

 そりゃあ、寝ないし食わないし着替えもいらないから買い物とかしたことないし?

「なんという永久機関!」

 はっはっはっはっ、まあ人間に戻れたら考えてやってもいいぞ。人間に戻れた後の事は考えてないし。

「シオ様は水魔族の長として海都に行ってもらわないと行けませんよ?」

 その設定まだ生きてたの!?

「当たり前です! 海都は海人族と人魚、それに水魔族も入り混じっての都市に様変わりするのですから! 代表たるシオ様にも早めに戻って頂かなければなりません」
「水魔族の長? つまりクラーケンか! っっ! ぐはは! ゴーレムでクラーケンとかお前何やってんのさ」

 うるさいやい、成り行きで先代のクラーケンやっつけちゃったら勝手についてきたんだよ!

「成り行きでクラーケンになるとか、あ! お前さん『海槍クラーケン』持ってんじゃね?」

 あるよ?

「まじか! じゃあ海の生き物を呼び出せるよな」

 出来るけど、何出せばいいの? あんま変なの呼びたくないんだけど。

「新鮮な海産物! ああ! 涎が止まらん! この辺は海が遠いから海産物は加工済みのしか手に入らなくて!」

 食わせる為に呼ぶとか断固断る! しかもオレ食えねえし! お前瞬間移動出来るんだからそれで行って来いよ。

「どの港町もその街以外に魚介類を売り出すほど漁業が盛んじゃないんだよ! 川と違って海に船を出すのは相当に腕の立つ海人族や水魔族の護衛を雇ったうえで万全を期して海を渡るんだから。陸上ですら形容しがたいどでかい生物が闊歩してる世界なんだぜ? 海なんか怪獣天国だ。普通に海に出ようって考えはないんだよ」

 オレ達は船で渡って来たけど……。

「海上移動はとんでもないリスクがかかる分見返りが大きいからな。生業としている連中は多くはないがそこそこいる。けどリスクがでかいから魚を捕るんじゃなくて交易で利益を作っているんだよ。文字通り命がけでな」

 なるほどね。

「そういう訳で海水魚が食いたい! 海都から連絡が途絶えてからもう何年も満足に魚食えてないんだよ!」

 あ、海都ならいま再興中のはずだよ。しばらくすれば交易が再開されると思う。

「マジか!」

 マジだ。海都は雷鯨セルジアとその愉快な仲間達によって魔王軍から解放されたからな。
 ……その流れでオレはクラーケンて呼ばれるようになったんだし。

「魔王の弟が海都を占拠したって情報はあったが、解放されてたのか」
「私は報告してましたからね?」
「「「「…………」」」」

 サフィーラさんの言葉にケイが明後日の方向を向く。

「さて、では早速出発しましょうか。ケイ様、ゲートをお願いしますね」
「せめて引き継ぎをして!?」

 とりあえず話がまとまった? ようだ。とりあえず同行してくれるらしい。
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